馬楽の時間 96

馬術部物語
 小学生の時は長期欠席。中学生でかろうじて野球部。高校生では体育見学の日も。要するに身体は弱かった。大学では是非部活をやりたかった。それも運動部。入学式の前、土手に座ってラグビーの練習を見ていた。いかにも大学生らしい。でも私には無理。激しすぎる。
 あの時の大地からの匂いは忘れられない。受験地獄からの解放感。
 馬術部は農家と同じ。農作業が主。ボロだし、草刈、馬場整備、大工作業等々。そしてたまに馬に乗る。これが私にはぴったりだった。
 じわじわと身体は強くなった。練習は痛くて辛かったけど。
 放課後、早く行った者が自分の好きな馬を曳馬していいことになっていた。引き出して、草を食わせながらブラブラ散歩するんです。馬は嬉しそうに草を食べる。これが最高だった。
 何も考えず、ただ馬が引手を踏まないように集中。引手を踏んだらたいへん。大パニック。
 しばらくしたら「乗ってもいい」と言われた。裸馬に頭絡で乗って散歩。小さな溝や倒木を飛ばしたり、時には川に入ったりした。乗ったまま深みに入り泳がせたりした。こんな経験はちょっと出来ない。
 好きだった馬が増々好きになっていく。幸せだったかも知れない。
 


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