見出し画像

#5 2つのBA(ビジネスアーキテクチャとビジネスアナリシス


前回まで3回に渡って、「DX推進の動機形成」にはどんなパターンがあるのかについて考えを進めました。簡単におさらいしておきます。
一つ目は、社長に強い動機が存在しそれを全社に拡大する必要がある場合、次に取締役、事業部長など事業の遂行に責任を持っている人が動機を持ち、それを経営者を始めとする社内に拡大する必要がある場合、最後に事業を推進する部長、課長、一般職員が危機感を持ってDX推進の遂行を考えている場合でした。
それぞれ ➀「社長 vs 上級幹部+中間管理職+一般職員」 ②「上級幹部 vs 社長+中間管理職+一般職員」 ③「中間管理職 vs 社長+上級幹部+一般職員」という対立構造で表現できます。まぁこの公式の左辺に複数の立場の人が存在する場合もあるかもしれませんが、大体このような感じでしょうか。
DX推進のスタートを全社一丸となってやりきるためには、上記のどのシナリオでもそうですが、登場人物(アクター)を右辺から左辺にシフトすることが必要となります。これにはご賛同いただけると思いますが、これがなかなか難しいのです。ではどうやってそれを行うのか考えてみましょう。

IPAの「デジタル推進スキル標準」の「ビジネスアーキテクト」の役割として、プロダクトマネジメントやプロジェクトマネジメント、変革マネジメント、ビジネスアナリシスなどが上げられています。これらには様々な必要スキルとともに、重要スキルとして「ステークホルダーエンゲージメント」があります。まさしく、上に挙げた式の右辺から左辺に移動させる活動が、このスキルに当たると考えていいでしょう。「ステークホルダーエンゲージメント」とは、DX推進に関わる全ての人(ステークホルダー)との協力関係(エンゲージメント)を構築すると言うことです。
ステークホルダーエンゲージメントの具体的な活動は、ステークホルダーの一覧表を作成し、各個人の属性を定義します。属性には役職、影響力、ビジネス上の性格、DX推進への立ち位置などを記します。ただしこれだけでは、個人の真の影響力は判別できないので、完璧を目指すのは難しいですが個人間の関係性を可視化する人的ネットワーク図を作成します。これらの基礎資料を持ってエンゲージメント獲得の作戦を練ることになります。
■シナリオ1「社長 vs 上級幹部+中間管理職+一般職員」
経営TOPが社内を説得しようとすると、まず片腕となる1~3名程度の幹部を味方につける必要があります。最初は秘密裏に、DXを推進する必要性を明確にするための学習活動を行い理論武装します。その結果を持って、取締役会や経営会議などで経営層にDX推進の必要性を訴えます。もちろん、その前に細やかな根回しが必要になるかもしれません。
この段階を過ぎると、いよいよ社内にDX推進プロジェクトチームを立ち上げることになります。このチームはDX推進のコアとなる人材となることが期待されます。そのため、チームメンバーは社内の各部署から選抜された人となります。この時点ではまだ外部からの人材を調達することはしません。外部人材の登用があるとすれば、「ビジネスアーキテクト」であるDX推進コンサルの立場でアドバイスする人材でしょうか。
コアメンバーはDX推進の基本的な方針や活動内容を検討します。すなわちDX推進の目的やアプローチ方法、ステークホルダーエンゲージメントの構築方針など実施計画を立案します。
このタイミングでは同時並行的に、中間管理職および一般職員に社内研修を通して、「DX推進」における一般的な意義や、自社のビジネスにおける意味を理解するための活動を行います。特に、ターゲットするビジネス問題に関わる部署に対しては丁寧に、かつ具体的に講習し内部的な議論を促します。もちろん、この中の主なメンバーについてはステークホルダーリストに載せ、対応を検討します。

実際のDX推進活動を行う場合は、コアメンバーを支える実務を行っている職員が、兼任でプロジェクトに入り実働部隊としてチームを構成します。
その上で、「ビジネスアーキテクト」や「プロダクトマネージャ」は計画に基づいてチーム全体を動かしていきます。
いかがでしたか、なかなか大変ですね。どこに視点をおいて計画し、実行していくか行き当たりばったりではなく、ちゃんとした論理的な帰結としてこうあるべきという知識ガイドBABOK®があるので、それを参照いただくのがもっとも手っ取り早い方法だと思います。以下のリンクをご覧ください。
https://japan.iiba.org/J_Contents


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?