#7 2つのBA ーDX推進の計画②ー
先週2/21(水)にIIBA®日本支部が開催する「2023フォーラム&BAアワード」に主催者側として参加してきました。
久しぶりのリアル会場での開催ということで、実に楽しい時間を過ごすことができ、招待したお客様にも喜んでいただけたようです。この場ではBAに関する様々な活動を参加者に知っていただき、BAへの知見を深めていただくこと、参加者が懇親会の場で相互に情報交換を行い、他者のBAへの取り組みを知ることで、今後のBA活動の参考にしていただくことが目的でした。もしこれをご覧の方で、IIBA日本支部の活動にご興味があればヘッダー写真に記載のアドレスにご連絡ください。
さて、前回はDXを進めて行く最初の段階である「計画」の中で最も重要な、DXを推進する目的と目標について検討しました。
今回はその続きです。
前回DX推進は2つのパターンに分かれますと述べました。一つはこれまでになかった新しいビジネスやビジネスモデルを構築しようとする場合。もう一つは、既存のビジネスを改善、改良して新しいユーザー価値を創生する場合です。
前者は「0」から「1」を創り出すという、かなり難度の高い行為となります。これに対して後者は「0.1」を「1」にする行為です。これももちろん難しいのですが、前者に比べると取っ掛かりがある分まだましかもしれませんね。
まず前者のシナリオについて考えてみましょう。
このようなイノベーション創生にトライしようとする場合、まず既存事業がある程度順調であることが条件の一つとなります。逆に言うと、本業の成績が芳しくない場合は新規ビジネスに手を出さずに、既存ビジネスのてこ入れを考えるべきです。
既存事業が順風満帆であるときこそ、近い将来を見据えてDX推進に手を付けることが重要になります。DX推進の最大の動機は「危機感」だと以前に述べました。でも一般的な思考回路では、順風満帆の現状は永遠に続くように思えるため、そこに危機感を醸成することは非常に難しいものです。ということは「新規ビジネスのDXを推進すると言うこと」は、必然的に心理的な大きな障害があることになります。
そこでその障害を乗り越えるために、自社のビジネスに関する、近い将来の姿をイメージできるモデルを作ることが有効です。そのために「ビジネスアーキテクチャ」のテクニックを使い、例えば5年先のビジネスのストーリーを可視化するなど、上層部を説得する活動が必要になります。
では肝心の新規ビジネスのアイデアですが、どのようにひねりだすのでしょうか。これは各企業の「DX推進方針」に依存することになります。「方針」は計画書等の中で明確にするのですが、例えば「真のDX」とも言える世の中に今までなかった全く新しい価値を提供するというものが一つ。ライバル企業や他社事例にならって、自社にとっては新しいが、すでに社会に存在する価値を提供する、というシナリオが考えられます。後者はライバル企業に対抗する上で効果的ですが、マーケットに対してのインパクトは低くなります。言い方を変えると、コンペチターのマーケット進出に対して、ある程度の防御はできるが、いずれ敗退する可能性があると言うことです。根本的には、相手を上回るイノベーションの実現が必要になります。
「真のDX」を推進しようとする場合、イノベーションのアイデアの源泉をどこに求めるかがキーとなります。これに関しては様々な考えが書籍等で提供されていますので、それらを読まれることをお勧めいたします。
筆者が思うのは、多様な専門知識の集合により、複数の異なる視点で物事をとらえ、それを融合することで新しいアイデアを創り出すということです。何を言っているかと言うと、イノベーションを引き起こすためには、多様な人材が集まり自由に発想を広げることができる体制が重要だということです。これが結構大変なのは自明です。特に中堅、中小企業のように決して人材が豊富とは言えない環境では特に難しいことになります。そこで現在、社会では「共創」というキーワードで様々な特性を持つ企業が協力し合うオープンイノベーションの動きが活発になっているのは、ご承知の通りです。
ここまでの内容をまとめてみます。
「DX推進活動」の計画について考察しています。DX推進には2つのカテゴリーがあり、まったく新しい価値を社会に提供しようとするもの、既存のビジネスを元に新しい価値を創造しようとするものとなります。
前者の場合、どのような価値を提供するかを検討することは「0」から「1」を創り出すことなので高いハードルがあり、それを乗り越えるためにはまずイノベーションを創り出す体制が必要だと述べました。
言い添えると、出て来たイノベーションのアイデアがちゃんと現実化できるかどうかを検証することは必要です。そのためには「ビジネスアナリシス」「ビジネスアーキテクチャ」による将来状況の定義と、それを現実化するための条件を明確にする「デザイン思考」を利用した、「ビジネスモデルキャンバス」で確認することが出来ます。
次回はもう一つのカテゴリーである「0.1」から「1」を創り出すためのヒントについて考えて行きます。