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#20 2つのBA -DX推進の実際⑩-    【ビジネスの現状把握】

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前回は
 DX推進における典型的な障壁について語る番外編をお送りしました。いかがでしたでしょうか。DXを進めていく上で最も重要なのは、全社的な変革に対するマインドセットの確立です。これができれば、半分成功したも同然だと筆者は考えています。つまりそれだけ難しい問題でもあるのです。

今回は
 「ビジネスの現状把握」のためのテクニックについて述べていきます。前々回は、ビジネスアーキテクチャを実践する上で最も重要な「ケイパビリティ(能力)マップ」について解説しました。

今回は
 ビジネスアーキテクチャでもう一つの中心的なモデルとなる、「バリューストリーム(価値創造の流れ)マップ」について説明していきます。

 近年のビジネスモデルの考え方では、「Value(価値)」が中心に据えられていることはご存知かと思います。ここで言う価値とは、顧客が獲得する価値です。「価値」の範囲は、モノを手にすることで得られる便利さやステータスの獲得だけでなく、体験を通して感動や楽しみを得ることまで拡大されています。

 典型的な例として、携帯電話がスマートフォンに進化し、電話機から携帯コンピュータに変化することで、ユーザーのライフスタイルを大きく変えたことが挙げられます。自動車も、機能や乗り心地、豪華さだけでなく、ユーザーのライフスタイルをどのように変えていくかを訴求しています。

 これが「価値中心」のビジネスモデルの考え方です。重要なのは、ユーザーのニーズに応えるだけでなく、ユーザーがまだ気づいていない「価値」を提供することです。これは「変革」そのものであり、DX推進の本質にも触れるものです。

バリューストリームは
 語る人の立場によって少しずつことなる意味を持つことがあります。つまりまだ一般的な共通理解となっていないということです。ここでは、ビジネスアーキテクチャの普及団体である、Business Architectyur Guild® が提唱している知識ガイドBizbok®に記されている、バリューストリームを基準にしています。

 バリューストリームは価値創造の流れを表すモデルです。誰かのために(一般的には顧客となります)、どのような価値(アウトカム)をどのように(中間的に生成される価値のつながり)を可視化するものです。

図1 Value Stream

 図1はバリューストリームの簡易的なモデルです。左から右に向かって価値を創る流れとなります。左には流れのトリガーとなるステークホルダーが存在します。右端に流れの結果として提供される価値が存在します。基本的に価値の受け手はトリガーとなる人物となります。流れには中間的な成果物としてアウトプットされる中間価値が存在します。つまり、価値創造の流れはステージ毎に中間成果物を作りながら、最終価値にたどり着くことになります。
 ここで注意が必要なのは、この一連の流れは中間的価値と最終価値の関係を示しますが、価値を創り出すプロセスではないと言うことです。各ステージで生成される中間的価値は、それぞれが連続する、あるいは断続するプロセスで作られます。またそれらのプロセスは、異なる部門で実施されるかもしれません。さらに異なるバリューストリームの中間的価値や最終価値を利用するかもしれません。では実行プロセスはどのように表すのでしょうか。次の図を見てください。

図2 Value Stream & Capabilities Crossmapping

 グレーの箱はケイパビリティ(機能・能力)を表します。各バリューストリーム・ステージがどのようなプロセスで中間的価値を創造するかを表しています。これらの中間的な価値が次のステージのインプットになったり、中間的価値の集合が最終的な価値創造を導くことになります。

 このようにケイパビリティ・マップとバリューストリーム・マップを突き合わせることで、今実行中もしくは新しく立ち上げようとするビジネスの全容を効率よく理解することができます。
 ここで注意が必要なのは、ビジネスを俯瞰して全体像をとらえるためには、抽象度を高く(ハイレベル)してバリューストリームを考える言うことです。詳細化しすぎると全体像が見えにくくなりますからね。

 さらに、ケイパビリティの箱にその能力度合にしたがって色を付ける(例、緑:充分な能力がある、黄緑:能力はある、黄色:能力が充分にない、桃色:能力が不足している、赤:能力がない)ヒートマップ化するとビジネスモデルの弱点や危険性、冗長性などを可視化することで投資の優先順位を検討する材料になります。

次回は
 以下に上げた、「DX推進戦略策定」の手順の2番目に取り組むことにします。

  1. ビジネスを遂行する組織の現状を知る⇐今回

  2. 目的とする変革によってもたらされる顧客や社会の価値を想定する⇐次回

  3. 遂行しようとするDX推進活動のリスクを見積る

  4. 全体を取りまとめて戦略を策定する


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