#4 ビジネスアーキテクチャって何だ?

さて前回まで3回に渡ってIPAが提起する「DX推進デジタルスキル」で規定されているビジネスアーキテクトが果たすべき役割、について考えてきました。
ところで、IPAの文書には「ビジネスアーキテクチャ」という文言は出て来ません。このブログを書いていて気が付きましたが、「DX推進デジタルスキル」で言うビジネスアーキテクトが行うビジネスアーキテクチャと、既存のEA(エンタープライズアーキテクチャ)が言うビジネスアーキテクチャの内容に違いがあることが明らかです。そのため誤解を避けるため、敢えてビジネスアーキテクチャという文言を避けていると思います。

さらに、IPAのビジネスアーキテクトに期待する役割が、DX推進における重要かつ広範囲にわたることも分かりました。

「DX推進デジタルスキル」ではビジネスアーキテクトとして、必要なスキルがa~cのランク毎に定められています。ではまず、”a” ランクのスキルから見て行きましょう。
ロール➀ 新規事業開発
(戦略・マネジメント・システム)
 ・ビジネス戦略策定・実行◎
 ・プロダクトマネジメント◎
 ・変革マネジメント◎
 ・システムズエンジニアリング◎
 ・エンタープライズアーキテクチャ◎
(ビジネスモデル・プロセス)
 ・ビジネス調査◎
 ・ビジネスモデル設計◎
 ・ビジネスアナリシス◎
 ・検証(ビジネス視点)◎
ロール② 既存事業の高度化
(戦略・マネジメント・システム)
 ・ビジネス戦略策定・実行◎
 ・プロダクトマネジメント◎
 ・変革マネジメント◎
 ・システムズエンジニアリング◎
 ・エンタープライズアーキテクチャ◎
(ビジネスモデル・プロセス)
 ・ビジネス調査◎
 ・ビジネスモデル設計◎
 ・ビジネスアナリシス◎
 ・検証(ビジネス視点)◎
ロール③ 社内業務の高度化・効率化
(戦略・マネジメント・システム)
 ・変革マネジメント◎
このように各ロールに設定されている ”a(高い実践力と専門性が必要)”ランクの重要スキルは共通したスキルです。他に ”b(一定の実践力と専門性が必要)” ランクと、”c(説明可能なレベルでの理解が必要)”がありますが、ひとまず ”a”ランクに絞って考えて行きます。

■戦略・マネジメント・システム
「戦略・マネジメント・システム」という用語は、聞き覚えがあるようで初めて聞く言葉です。IPAの「デジタルスキル標準」には次のように定義されています。
✓デジタルトランスフォーメーション(変革)を起こすために必要なスキル
✓個別の製品・サービスに関するDX推進だけでなく、その土台となる企業・組織全体としてのDX推進を支えていくうえで重要なスキル
この中に5つの重要スキルが規定されていますが、その具体的な活動については言及されていません。以下に筆者が考える仕事の内容を記述します。
1.ビジネス戦略策定・実行
(新規事業開発)
・新規ビジネスを企画する際、既存の経営戦略との整合性を持つ事業戦略を立案する。
・新規ビジネスのアイデアを出し、ビジネスモデルを構築し、その実現性を
 評価する。
・立案した事業戦略の実行を監視し、ビジネスのライフサイクルの全てにお
 いて、事業戦略と合致していることを保証する。
(既存事業の高度化)
・実行している事業が、経営戦略や事業戦略と整合していることを確認す
 る。
・既存事業が新たな価値を提供する可能性を模索し、アイデアとしてまとめ
 る。
・資料調査、関係者インタビューなどを通して、事業の課題(ビジネス課
 題)を明確にする。
・ビジネス課題を解消し、新規の価値提供を可能にする事業変革モデルを構
 築し、その実現性を評価する。
(社内業務の高度化・効率化)
・資料調査、関係者インタビューなどを通して、事業の課題(ビジネス課
 題)を明確にする。
・ビジネス課題を解消し、新規の価値提供を可能にする事業変革モデルを構
 築し、その実現性を評価する。
他にも考えるべきことはあるかと思いますが、大きな括りで考えると以上のようになるかと思います。いかがでしたでしょうか。「ビジネスアーキテクト」の仕事の具体的なイメージが、少しは湧きましたでしょうか。次回は残り2つのロールにおける具体的な作業について私の考える作業内容を示して行きます。その後、挙げたスキルの作業内容についてさらに詳細化していくことにします。
 


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