それでいいんだよ。
高橋まりんさんのカレンダーを買ってきた。
安定のかわいさ。このほんわかした絵のタッチが大好き。
10年ほど前に名刺を作る機会があって、高橋さんにイラストを描いてもらったことがある。今はZOOMのアイコンにしている。
名刺は自分にできることを相手に売り込むためのものだと思うんだけど、お商売も役職もないのになぜ作ろうと思ったのかよくわからない。
わざわざ名刺をつくるために、「何を伝えたいか」を明らかにするワークショップに参加するあたり、
10年来通っている美容師さんから「考えなくてもいいことを考えて、考えなきゃいけないことを考えてないよね」と言われるだけある。
ホントその通りだよ。
「こいつ、狂ってんな・・・」と思う。
案の定、ワークショップで何をしたいのかさっぱり明らかにならなかったのに、なぜか絶対の確信を持って、
泣いてる女の子を同じ顔をした女性が慰めている謎構図と「それでいいんだよ」という謎メッセージの入ったイラストを高橋さんに発注した。
そして、渡された側を大変困惑させる謎名刺が爆誕した。
でも、泣いている女の子を慰めるような絵と「それでいいんだよ」というメッセージを入れてもらったのは理由がある。話を聞いてもらえなかった、そして泣けなかった、全ての子供たちに寄り添いたいと思ったからだ。
私の両親は共働きで、父は自分が一番かわいいあまり子供に関心がないタイプで、話しかけると「うるさい!」と言われるか「それより、俺の話を聞け!」と言われるから、できるだけ関わらないように気配を消して付き合っていたし、
夫とは名ばかりの長男と娘を育てるフルタイムワンオペキャリアウーマンの母は、ワンオペのあまり天下を統一しかねない覇気が毛穴から立ち上っていて、「今日ね〜、・・ちゃんとさ〜」などのたわいもないことで話しかけるなど畏れ多かった。
その分友達と話ができればよかったんだけど、ジャニーズが好きな彼らと、愛がすべてのHOUND DOGが好きな私とでは、共感できる事が少なすぎて話が続かない。
そのせいか、聞いて欲しいことはあっても気軽に「聞いて」と言えないことが多かった。
空気と一緒に言葉も飲み込んでいるうちに、話したいことは帰り道で誰もいないのを見計らって一人芝居のように吐き出していた。たまに人がいることに気づかずに話していて、「こいつ、病気か?」という視線を喰らった。違うの。ただの厨二病。
最初の職場を辞めてふらふらしていた頃、ナイスミドルなおじさまたちがおもしろがってお酒を呑ませてくれた。父の「俺の話」とは違って、おじさまたちのは「知ってるか俺の武勇伝」で、自己啓発本のパクリみたいな内容だったり、どこぞのお姉さんと大人の関係を結んだ話だったり、隠キャを極めた厨二病患者にとって非常に刺激的な武勇伝だった。
その中に親身になって話を聞いてくれる、ゲスでナイスミドルなおじさまがいた。
一人芝居を愛する厨二病患者はその親身さの理由を後から知るんだけど、ゲスでナイスミドルなおじさまは、グチが9割を占める小娘の話を「そうかそうか」と聞いてくれるわけ。
その時初めて、進んで話を聞いてもらえる喜びを味わったのよ。もう嬉しくって嬉しくって、グチグチ言うの。でも、「それでいいんだよ。」って聞いてくれる。ピュアピュアに感動しちゃって、おじさまの下心に気づかないの。厨二病恐るべし。
さすがに飽きたのか、おじさまとはいつの間にか疎遠になった。
話したいことを自由に話せない辛さを知って
保健師コースで話を聴けない自分に気づいて
話を聞いてもらえる嬉しさを味わって
それからのちに、知的障害者施設で言葉でコミュニケーションを取るのが難しい人たちに出合って。
私はその人の中の子どもが、一番話したいことを聴く人になろうと思ったんだ。
その人自身も気づいていないような、誰かに気づかれたくて待っている小さなその人の、一番話したいことにスポットライトを当てて「それでいいんだよ。」とうなづきながら、話を聴く人。
そんな祈りの気持ちを形にしたかったのかもしれない。
ZOOMのアイコンを見るたびにイラストを描いてもらった心境を思い出すんだけど、「泣いている女の子を慰めるような感じで」「それでいいんだよ。と文字を入れて欲しい」みたいなフワッとしたことしか言わない依頼だったのに、ドンピシャで描いてもらえて本当に感謝している。実物を百阿僧祇くらい、はちゃめっちゃにかわいく描いてくれているので、
私の葬儀はイラストを遺影にして欲しい。
この記事がお役に立ちましたら、サポートして下さると嬉しいです。天職部の書き起こしがはかどります。また、現地参加や他の研修参加費に使わせていただきます。