映画日記その7

皆さんこんばんは、久しぶりの映画日記です。
今回は最近公開された「四月になれば彼女は」という映画についてです。まだ公開されて日が浅いのでネタバレが嫌な方はUターンでお願いします。


ここから本題の感想に入ります。
「四月になれば彼女は」は川村元気の小説が原作の映画になります。
物語は主人公のフジが失踪した恋人のやよいの痕跡を探すところから始まります。しかしやよいが行った場所も、失踪した原因もなにもわからないまま物語は進んでいきますが、その途中大学時代の元恋人からの手紙を思い出し大学時代の回想へ入ります。
元恋人とは写真を通じて知り合い、恋仲へと発展していきます。しかし彼女とは海外旅行の計画をきっかけに破綻してしまいます。そしてその彼女から現在手紙が届くのです。昔行けなかった海外旅行の道筋を辿り、そこから当時の思い出を掘り返していきました。そこにあったはずの愛を確かめながら彼女は行くはずだった各地を写真と共にめぐります。
そして話は現在へと戻ります。恋人のやよいは「愛を無くさないためにはどうすればいいでしょう」と何度か尋ね、フジはそれに答えられずにいました。恋人のやよいがこの質問の解としていたのは「愛を手に入れないこと」でした。愛を失うのが怖かったから自分からわざと手に入れない道を歩んでいこうとしてたのでした。しかし元恋人は手紙にあなた(主人公に対して)愛して愛されてください、という旨の言葉を残します。恋人のやよいはその手紙をきっかけに元恋人に会いに行くのでした。

私はこの映画を観て一番に思ったのはテーマであろう愛というものに直面して、途中から観るのが辛いということでした。映画の中とはいえ、映画の登場人物たちにはそれぞれの愛があって、愛し愛される関係が構築されていることが目に見えて分かりました。私もきっと親や友達、恋人から愛されているのだとは思いますが、今でも私にはそれがあまり感じられていないのが正直なところです。そしてその愛が目に見えて自分に向けられるのが怖くてたまりません。だからこそこの映画は私にとってはとても辛いけど幸せな、記憶に残る映画になりました。
特に印象に残ったのが元恋人と主人公の大学時代の回想シーンと別れた後の手紙に書かれていたことでした。
回想シーンでは元恋人と順調に進んでいると思いきや、海外旅行の計画を立て彼女の父親に許可を取りに行くと父親に彼女の写真で埋め尽くされた部屋を見せられます。そして「娘がいないと眠れないんだ」と懇願するような瞳で父親は言うのです。そこには父親の寂しさだけでなく愛に似た執着が現れているように感じられました。しかし彼女はそのことを知ってか知らずか、旅行当日空港で海外旅行へは行けないことを告げます。そして帰りの電車の別れ際、「わたしにはどっちも選べなかった」と伝えます。そして話は現代へと戻り、元恋人から当時行けなかった海外旅行の計画通りの写真が送られてきます。そして今の恋人のやよいはその手紙と写真を読み元恋人に会いに行きます。
元恋人は全ての計画の場所をめぐり、やっと終わるんだ、とこぼします。それは当時の選択できなかった自分がとりこぼした愛を拾い集めて消化しているのだと感じました。そして手紙には「あなたも誰かを愛し愛されてほしい」という趣旨のことが書かれていました。彼女が取りたい写真は人の気持ちや雨の匂いなど目に見えないものでした。そして当時行きたかった場所を巡った彼女は当時の気持ち、季節の移り変わり、を写真に全て納めていたように思います。彼女は手に入れた愛を手放すために旅に出たのです。
やよいはその逆で自分に向けられている愛を確かめるために、失踪しました。やよいは何度も「愛を無くさないためには?」と尋ね「愛を手に入れないこと」と答えています。愛を手放さないために、かつて愛を手に入れた元恋人の元へ会いに行きます。そこで過去と未来が交差し言外に元恋人からやよいに対してあなたは幸せになって、愛し愛されていいんだよ、伝えているように感じられました。
元恋人、今の恋人、彼氏、友達どこの関係においても必ず愛は存在していて、私はこの映画からあなたも愛を求めていいんだよ、と言われているように感じられて恋愛映画とは思えない密度でした。

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