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『VALORANT』世界大会 見どころは? CRは? 実況の岸大河・yueが解説

『VALORANT』の公式大会「VALORANT Champions Tour(VCT)」において、2021年シーズンの締めくくりとなる世界大会「VCT Champions」が12月1日から開催される。日本から出場のCrazy Raccoon(以下、CR)は2日午前2時に初戦に挑む。大会の見どころについて、 実況解説を務める岸大河氏とyue氏が語る。

ゲーマーでなくてもわかる「スーパープレイ」が魅力

【yue】
VALORANTは5対5のFPSで、素早くエイムを合わせて弾を当てるなどのスーパープレイが醍醐味です。5人が特殊部隊のように動いて攻めたり守ったりする息の合ったチームプレイも見ていて楽しいポイントです。

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【岸】
VALORANTはプレイヤーもそうでない方も、様々な楽しみ方ができます。

VALORANTをやったことがない、試合も見たことないという方もスーパープレイの雰囲気は楽しめると思います。ルールやアビリティがわからなくても、実況解説や配信コメントからチャンスをつかんだタイミング、逆転の兆しをつかめるはず。音楽のライブに行って知らない曲が流れてても周りの雰囲気にノって楽しめることに似ていますよね。

少しVALORANTをプレイしている方は、地域・チームによって戦い方が違うことに注目すると面白いと思います。それぞれ傾向が異なりますし、対戦相手が変わると戦術を大きく変えることもあります。VALORANTをがっつりプレイしている方はミニマップを見たり、アビリティの使い方などの戦略面にも注目してみるとか。

実況解説でも理解できないような「尋常じゃないプレイ」は、誰が見ても楽しいと思います。1対4の不利な状況でひっくり返したり、スモークで何も見えない状況からキルを取ったり、そういう訳のわからないプレイが出るのがVALORANTですよね。

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「日本チーム」が世界大会に出ることの意義

【yue】
大会の盛り上がりもすごいですよね。5対5のFPSでここまで同時接続数が多いゲームタイトルはないくらい、VCTは多くの方が視聴されています。

【岸】
日本は競技シーンの環境も恵まれていました。VALORANTでは、日本で1位を取るとChampions(世界王者を決める16チームの大会)に直行便で入れるんですよ。しかも、地域ごとのラストチャンス予選(LCQ)に勝てばもう1枠獲得できるチャンスもあった。世界のトップチームと戦う機会に恵まれていることは、競技シーンの成長において大きな意味を持ちます。

他タイトルでいうと、『League of Legends(以下、LoL)』では日本で1位になっても、世界大会のプレイインテージを抜けないとメジャーリージョン(強豪国・地域)の上位チームと戦えません。だから、トップクラスと対戦する機会があまりないと思うんです。

【yue】
同じ意見ですね。昔からFPSの大会はアジア大会や東南アジア大会を抜けないと世界大会に出られないことが多かった。アジアの壁も高くて、日本チームが世界大会に出ること自体少なかった。

過去に『Counter-Strike: Global Offensive(CS:GO)』で活躍していたAbsolute(現ZETA DIVISION。以下、ZETA)も、アジアの壁をなかなか突破できないでいました。世界大会であるChampionsにCRが日本を代表して参加することに感動しています。

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【岸】
CRの結果次第で日本のVALORANTコミュニティの盛り上がりや、国内競技シーンにも影響が出るんじゃないかなぁ。より国内競技シーンを盛り上げるためにも、「日本が世界にも通用する」ってところを見せてほしい。世界の壁は高いだろうけど。

【yue】
プレイヤー・非プレイヤーを問わず一丸となってCRを応援していて、試合に臨む選手たちも応援を肌で感じていると思います。その応援を一身に受けての戦いは、CRにとっても日本のファンにとっても意義のある戦いになると思います。

キャスター陣の注目チーム・注目選手は

【yue】
Championsでの注目は、ロシアの「Gambit Esports」ですね。なんたって選手がみんな若い。個人のレベルの高さはもちろん、チームとしての動きもとても連携が取れていました。個人的にはChronicleのプレイが好きだから注目してほしい、とも思っています。

【岸】
ぶっちゃけどのチームが勝ち上がってくるか本当にわからないんですよ。マップが新しく追加され、どう戦うのか。半年ほど、公式大会に出ていないチームもありますし。

今回は移籍も多かった。mwzeraがブラジルの「Keyd Stars(Vivo Keyd)」にレンタル移籍したことは驚きました。「ブラジルNo.1」と言われている選手で、世界大会でmwzeraをもう一度見られるのが楽しみです。

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【yue】
アメリカの「Sentinels」に新しいコーチが入りましたよね。『Overwatch』のプロリーグに選手として出ていたRawkus。

【岸】
選手としてプレイしていたところも見ましたけど、すごい頭の回転が早いサポートでしたよね。EUの「Team Liquid」のScreaMとNivera兄弟も外せない。Jamppiはムラがありそうな選手だけど、もし彼が暴れたらTeam Liquidが優勝してもおかしくないよね。あとは……FULL SENSEかな。APAC LCQから上がってきたタイのチーム。

【yue】
日本のNortheptionをLCQの決勝で破ってのChampions出場だっただけに、日本国内からも応援している人が多そうですよね。

【岸】
FULL SENSEのPTCは本当にヤバい。VALORANTやりすぎだろって。FULL SENSEの選手はランクマッチを回してる回数が桁違いだと思う。

CR戦の注目ポイント

【yue】
日本代表のCRは世界大会に6人体制で臨むので、マップごとや対戦相手ごとにメンバーやエージェントを変えて色んな状況に柔軟に対応できそうですよね。nethは「サイファーを極めた」とツイートしていましたし、誰がどのエージェントを使うのか我々にもわからないですね。

【岸】
他のチームからすると、対策しづらいチームなんじゃないかな。CRは、Mastersベルリンで優勝した「Gambit Esports」と過去2回戦った経験も生きそうです。今回、Gambit Esportsと同じグループに入り、リベンジのチャンスも得た。CR、いいところまでいけるんじゃないかな。

日本チームは他の国のチームよりも遅い現地入りになっているので、現地での調整でその差を巻き返せるかにかかっていると思います。

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【yue】
CRの注目選手は……全員なのはもちろんだけど、強いて挙げるならMedusaかなぁ。試合に出るかはわかりませんが。世界大会だと特に「ビハインドを背負った時にも前に出て撃ち合えるメンタル」が大事になります。本来は経験を積んで培っていくものなんですけど、Medusaはすでにそのメンタルを持っている。不利な状況でも前に出て撃ち合えて、しかもキルを取れるポテンシャルを持っていますよね。

【岸】
僕もMedusaには注目しています。前回大会(Mastersベルリン)終了後のインタビューで「もうちょっとコミュニケーションがよければ勝てた」と言っていたんですよね。そのインタビューから2ヶ月ほど経って、どこまで仕上げてきたのか楽しみです。

あとは言葉の部分。Medusaは日本語・韓国語の通訳ができるので、韓国人選手であるMunchkinが出場する場合は彼らが大きな役割を担うことになります。

【yue】
日本人選手から挙げるならnethかな。彼とは十年近くの付き合いになるけど、人一倍の悔しがり屋というか、負けず嫌いなんですよ。Mastersベルリンで試合後に涙を流していたのも印象的ですが、昔から大会に負けるたびに涙を流してました。経験してきた2度の国際大会を持ち前の向上心で這い上がってきたので注目したいですね。

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Championsまでの道のり、国内予選の裏側

【yue】
日本のFPSのトップチームの選手たちは距離が近いというか、仲が良いんですよね。みんな知り合い。負けたらもちろん悔しいでしょうけど、負けたチームも勝ち上がったチームを応援しています。勝ったチームも、負けたチームの分を背負って頑張るような心持ちです。今回のCRも、国内戦で戦ったZETAやNortheptionの想いを背負って世界に行くんだと思います。

【岸】
国内では昨年のローンチからずっとZETAが強くてCRが続く「2強」の状態が続いていたんです。毎回3位にREJECT、4位にFAV gamingが続く構図でした。

「今年はREJECTが2強に食い込むのは厳しいだろうな」と考えていた矢先に出てきたのがNortheption。みるみるうちに成長して、1度はZETAを下したくらいの勢いでした。来シーズンがより楽しみになるような選手がたくさん出てきていますよね。

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大会は、トッププロたちが戦うVCTだけではありません。「VALORANT LIGHT TOURNAMENT」という、ゴールドからダイヤモンドランクまでのプレイヤーたちが競い合う大会もあります。そこからVCTを目指している選手もたくさんいて、すごくいい環境ですよね。

【yue】
大会の裏側で言えば、配信スタッフたちも真剣に試合を見ていて、ちょっとおもしろいですよね。

【岸】
試合中に推しの選手のスーパープレイが出ると立ち上がったり、ギリギリで負けると頭を抱えたりするスタッフがいますからね(笑)。

【yue】
その姿がガラス越しに我々にも見えるので、解説しながら笑いそうになりますもん(笑)。

【岸】
キャスター陣の話をすると、国内予選をずっとやってきて、おじさんたちは疲弊しています(笑)。もちろん仕事は楽しいんですけど、時間的に遅かったりオーバータイムがずっと続いたり、たまにはトラブルで配信時間が14時間になったり(笑)。今となっては良い思い出ですけどね。

来シーズンになったらまた雰囲気ががらりと変わるでしょうね。2年目ですし、さらに真剣さが増した大会になるんじゃないかな。

最も楽しいのは「全部見えた時」

【yue】
国内大会だと公平な視点から、お互いのチームを盛り上げるのが実況解説の役割ですが、国際大会だったら「日本勝ってくれ」って気持ちを前面に押し出せる。実況解説をしながら自分の気持ちも乗せて言葉にできるので楽しいですね。

【岸】
日本チームの試合じゃなくても、世界一を決めるので試合のレベルも自然と高くなります。予選から切磋琢磨するので、実況しながら「あのシーンがあったから、今のプレイに繋がっているんだな」とストーリーを追う楽しさもあります。

【yue】
チーム同士の戦いの中でも個人で試合を決めてしまうようなシーンも盛り上がりますよね。そういうスーパープレイを実況解説できたら、自分も視聴者も盛り上がります。

【岸】
選手たちのやりたいことが「全部見えた時」が楽しいですよね。試合を見ていると、「こうやって相手を仕留めていくんだな」と見える時があるんですよ。ラウンド序盤からの動きやミニマップでの動きを見て、「そろそろこういう動きがあるんじゃないか」と予想した通りになり、しかもその動きがハマると「あぁこれ楽しい!」ってなるんですよ。

【yue】
強いチームであればあるほどチーム全体の統率が取れているので、チームのやりたいことが伝わってきますよね。チームが目標としている動きやそこに至るプロセスにアビリティやポジション取りなどがあるので、綺麗に動いているチームを見ると感動もしますし、盛り上がっちゃいます。

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Champions実況解説に向けた意気込み

【yue】
最後になりましたが、VALORANTにおいて今年で一番大きな大会に実況解説として立てることを光栄に思います。いつも以上に気合いが入りますね。
今まで1年間やってきた集大成の大会なので、選手たちは1年で学んできたことを全部出す場だと思いますし、我々実況解説も1年間培ってきたものを出し切ろうと思っています。世界最高の大会に恥じぬ実況解説ができればと思っています。

【岸】
世界大会にふさわしい実況解説ができればと思っています。普段からミニマップに表示されている情報、両サイドに表示されているアビリティの数、アビリティの消費量、クレジット状況や残弾数、体力など色々目を配ってはいますけど、よりシビアに見たいなと。

実況解説って喋りながら滅茶苦茶ミニマップを見ているんですよね。僕の脳が追いついてほしいと願っています。選手もこれまで努力してきているので、僕らも負けないくらい努力をしないとふさわしい実況解説にならないですよね。

VALORANTにおける僕の考えなんですけど、試合はお辞儀をして静かに戦う場ではないと思っています。もちろん心や態度は紳士である必要はありますが、いざ試合になると殴り合いなんですよ。

情熱を押し殺す必要はなく、全部を出し切ってぶつかり合うものなんです。互いに煽りあう瞬間があったりとか、掛け声をかける瞬間や味方に怒鳴り散らす瞬間もあったり。そういう感情の動きもVALORANTの面白さ。その情熱を引き継いで実況したいですね。

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VALORANT CHAMPIONS BERLINは12月1日から大会の火ぶたが切って落とされる。日本を代表して戦うCrazy Raccoonの試合を、2人の熱い実況を聞きながら応援したい。

(取材・文 Melt)

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