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可愛くて強い”Game Changer”を志すCurumi 世界で「女性チームといえばFENNEL」と言われる存在になりたい

「メンバーの考えていることが分かるようになりたい」

そう話すのは『VALORANT』の女性大会「Game Changers(以下GC)」で東アジア代表となったFENNEL HOTELAVA(以下、FL)のリーダーCurumiだ。5vs5で戦うシューティングゲームの知識がチームのなかで一番足りていないという自覚から、メンバーとの意思統一ができるレベルまで引き上げる努力を続けている。

そんなCurumiを、メンバーのKOHALはこう語る。

「努力を欠かさない人です。スクリム前にマップごとの強いポジションを覚えたりしています。でもあまり努力と思ってないみたいで、すごく楽しそうにやっています。人柄は優しくてあまり怒らないですね。リーダーらしく平等に人を見ることができる人だと思います」

Curumiはゲーム内の役割上、暗記しなければならない要素がどうしても多くなる。しかし「純粋に『VALORANT』が好きだから覚えるのは苦ではないですね」と笑う。そしてメンバーと平等に接するために、全員の意見を聞くように心掛けているという。

責任感ある彼女は、常にチーム全体を見つめている。

Curumiにとってのチームメンバーとコーチ陣

Curumiから見て、メンバーのなかで似ていると思う二人がKOHALとsuzuだ。

「KOHALは普段のほほんとした感じで面白いけど、インゲームではすごくストイック。ラウンド中に何が足りないのかを瞬時に判断できるから、頭の回転が速くてIGL向きだなって思いますね。suzuちゃんもゲーム中はストイックだけど、ゲーム外ではすごいマイペース。椅子から立ち上がるときも『どっこいしょ』みたいな。やっぱり関西出身の人ってノリが良くて話しやすいです」

チームメンバーの特徴を楽しそうに分析したCurumi。先の二人が盛り上げ役だとするなら、残りの二人は癒し系だと表現する。

「Lenちゃんは声が可愛らしいんですよね。だけど一番年上だから余裕もあって、試合中は雰囲気を悪くしないように柔らかい喋り方に変えてくれる“気遣いのできる良い女”って感じです。韓国出身のFestivalは天真爛漫。日本の生活で分からないことはなんでも聞いてくる姿が妹みたいで可愛くて。でもゲームになったらすごく真面目です。片言の日本語だけど『ショートいきたい』とか『ラッシュがいい』とかすぐアイデアが出てくる。次のラウンドに行くまでに組み立てができているんですよね」

△東アジア大会の決勝戦後、インタビューに応じるFENNEL HOTELAVAの面々

Curumiの視線はメンバーだけに留まらず、チームを支えてくれるコーチ陣やスタッフの存在にも注がれている。

「Eulerコーチは優しくて、何でも言えるし何でも聞けるんです。コーチがいなかったら勝ててないんじゃないかっていうぐらい戦術面もエイムのトレーニング面も指導してくれています。アナリストのkir1nさんは、このチームはこういう戦略を持っていてこういう動きをしてくるからと的確に話をしてくれて、分析力に長けている方ですね。マネージャーさんも私たちのために本当に頑張ってくれているので、みんな優しくてFLっていいチームだなって思いますね」

自身では立場への意識は強くないと語るが、チームをまとめるために常にメンバーに気を配り、その個性を把握している姿はまさにリーダーそのものだ。

日本、そして東アジアで戦ったチームの想いを背負って

CurumiがFLに入ったのはGCの国内大会開催が決まってからだった。アマチュアチーム在籍時に競技シーンを意識するようになり、公式大会「VALORANT Champions Tour」に出てみたいと思い始めたCurumi。そして昨年、海外で実施されたGCの大会配信を見て女性大会があることを知った。

「日本でも開催してくれないかなって思っていたら開催が決まって。『絶対勝ったるで、これ!』と思って、そこからプロチームのFLに入りました」

晴れてプロゲーマーとなったCurumi。強い決意の通り国内大会でFLは順調に勝ち進み、決勝戦では初めてBo5(3本先取)も経験した。

「対戦相手のREIGNITE Lily(以下、RIG)とは何回かスクリムをしたことがあったので強いのは知っていました。あの試合は5マップ目までの長丁場になったことで疲れがすごくて、集中力も切れるしエイムも雑になるし、特に負けたラウンドの後は気持ちの切り替えも大変でしたね。最終的に私たちが勝ちましたけど、どっちが勝ってもおかしくなかったと思います」

東アジア大会には日本1位のFLと同2位のRIGが出場。FLは初戦でSpear Gaming Female(以下SPG)に敗北したものの、その後は強さを発揮し決勝戦ではRIGを下して勝ち上がってきたSPGと再戦。リベンジを果たし、見事3-0で優勝に輝いた。

優勝インタビューで「仇とってきたよ!」とRIGに向けて言えたことが嬉しかったと、Curumiは振り返る。

「決勝戦は正直RIGに上がってきてほしかったですね。この最高の舞台でもう一度戦いたいなって思っていたので。SPGには私たちも負けているから、余計に勝ってほしい気持ちも強かったです」

激戦を繰り広げた戦友のためにも「ここまで戦ってきた日本のチームや東アジアのチームの想いも背負って、世界で勝ちに行きます」と、Curumiは決意を新たにした。

Curumiの周りで起きた嬉しい“Game Change”

Curumiやチームの頑張りで、周囲の環境もみるみるうちに変わっていった。

母と兄は昔からゲーム好きで、Curumiがゲームを本気でやることに対して最初からずっと応援してくれていた。しかし、父はゲーム反対派だった。

「チームに入った当初、父は『そんなことするんだったらさっさと働きなさい』みたいな感じだったんですよね。だけど日本予選で優勝したときに連絡したら『さすがうちの娘やね』って言ってくれて。それが一番嬉しかったですね。認めてもらえたんだなって」

家族の反応がすごく嬉しかったと言葉を弾ませたCurumi。東アジア代表になり、注目度はさらに上昇。大会の公式ミラー配信のコメントやSNSの反応を見て、注目されていることを実感した。

「『めっちゃつえぇ!』とか『えらすぎ、ここ』みたいなコメントやSNSの反応を見ました。ファンの人からのメッセージもたくさん来ていて、優勝した日はもう通知がすごくて携帯の充電がない状態でした。純粋に嬉しかったですね」

かつて同じチームだった男性プレイヤーからは「遠い存在になってしまったね」というメッセージが届いた。Curumiはこれを「憧れられる存在に一歩近づけたのかな」と前向きに捉えている。

「私たちのプレイスタイルやゲームプレイを見て、男女関係なく『こうなりたい』と思ってもらうことのが私の理想なので」

Curumiがこれから起こしたい“Game Change”

東アジア代表になったタイミングで韓国からFestivalが合流し、日々の練習ではかなりの手ごたえを感じている。Curumiは「ベースに5人集まれたおかげで意見交換がすぐできるので、今が一番良い状態」だと自己分析している。

11月15日に開幕する世界大会「2022 VALORANT Game Changers Championship - Berlin」の対戦相手で注目しているチームは強豪Cloud9 Whiteだが、実は一番警戒しているチームはX10 Sapphireだ。

「戦い方が日本人と全然違っていて、全員強いし自分たちの作戦を押し付けようとする勢いがすごいんです。以前スクリムしたときは私は圧倒されてしまいました。でもそういうチームにも勝たないといけない。だからどんなタイプのチームが来てもいいように、少人数戦や試合の動かし方などの練習を今は頑張っています」

世界大会、そしてその先を見据えて、Curumiは大きな志を持っている。

「日本だけじゃなくて世界でも、女性チームといえばFLだよねって言われる存在になりたいです。『可愛いのに強くない?この人』みたいな。(東アジア大会で対戦した)Oxyg3niOusのWawaLee選手を見て、『可愛くて強いな』って私が思わされたから、そこを目指して自分も頑張らないと」

Curumiの世界への挑戦は、さらなる「Game Change」を実現するための新たな一歩となるだろう。

(取材・文 スイニャン/写真 石川高央)


FENNEL HOTELAVAが日本代表として出場する公式国際大会「2022 VALORANT Game Changers Championship - Berlin」は、11月15日(日本時間)からTwitchYouTubeにて配信予定。

FENNEL HOTELAVAの初戦は日本時間17日午前2時から開始予定です。

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