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破竹の勢いNORTHEPTION 最年少Derialyが語る強さの秘訣と秘めたる想い「ライバルには絶対に負けたくない」

「今年のNORTHEPTION加入がラストチャンスだと思ってました」

19歳という年齢ながら、Derialyはキャリアの全てをかけていた。

群雄割拠の『VALORANT』国内プロシーンにおいて、今最も勢いのあるチームがNORTHEPTIONだ。2022年のVALORANT Champions Tour(VCT)Stage 1では王者ZETA DIVISION(以下、ZETA)に食らいつくような死闘を繰り広げ、Stage 2においては日本を代表するチームであるCrazy Raccoonをも打ち破り、Playoff Finalsへの進出を見事に決めた。

成長著しいNORTHEPTIONだが、その強さの源は一体どこから来るのだろうか。チーム最年少であり、新メンバーでもあるDerialyの視点から紐解いていく。

日々の練習と徹底した話し合いに裏打ちされた確かな強さ

NORTHEPTIONは極めて異例なチームである。2021年の「VCT Japan」では幾度にもわたり上位入賞を決め、強豪入り乱れるアジア大会「ラストチャンス予選(LCQ)APAC」においては準優勝という輝かしい実績を残した。だが当時のメンバー全員が脱退・移籍してしまったことで、ゼロから部門を再編成しなければならない並々ならぬ苦境にも立たされてしまった。

2022年に新メンバーが集まったことで活動は再開されたが、常識的に考えればチームの完成度を高めて行くには多大な練習時間を必要とする。公式大会で活躍するまでは今しばらくの時間がかかるのではないかと思われた。

だが、そういった常識が通用しないのが新生NORTHEPTIONであった。再編成されたばかりのチームとは思えないほどの緻密な連携と、緩急つけた強引な突破力を武器に、多くの強豪を手玉にとる異様な強さを発揮した。Stage 1において、敗れはしたもののZETAと激戦を繰り広げたことでNORTHEPTIONの実力は疑いようのないものとなった。

「かなり人選が巧いチームだなと感じます」

Stage 2の国内予選でPlayoff Finals進出の立役者となったDerialyは、チーム編成の特徴をそう分析する。NORTHEPTIONはプレイヤーの強さだけではなく、勝利を追求する姿勢を重視している。

強いプレイヤーというのは確かに数多くいる。だが強いプレイヤーが、本気で勝利を目指しているかどうかは別の話だ。トライアウトの時点で「目的意識の似通ったプレイヤーを選び抜く」というNORTHEPTIONのこだわりが、歯車の噛み合ったチームを生み出しているのだという。

「根本的な部分での考え方を統一していることも、僕達みたいなチームでは重要なのかなと感じてます」

NORTHEPTIONは日本人と韓国人の混合チームである。その場合にまず問題になりやすいのがミスコミュニケーションだ。普段は言語をあわせて会話できていても、試合中の咄嗟の一言が母国語に戻ってしまい、それがミスコミュニケーションの引き金になるという事例は往々にしてある。しかも、こうした反射的に出る部分の改善は、一朝一夕ではなかなか上手くいかない。

そこでNORTHEPTIONは、チームとしての原則や考え方などを事前にすり合わせて統一することを最優先とした。意識を統一することで致命的なミスコミュニケーションを防いでいる。だが原則や考え方の統一も、そう簡単にできることではない。『VALORANT』は度重なるアップデートによりマップやエージェントが増え、それに伴い戦術やセットアップも大幅に増えている。そういった環境下でどのようにチームの考え方を統一するのだろうか。

「普段の練習量と、その配分が上手く機能しているからかもしれません」

NORTHEPTIONはほぼ毎日練習試合を行っているが、実は試合に費やす時間はそこまで長くなく、2時間から3時間に収まる程度だという。時間以上に彼らが重視しているのは、事前と練習後の話し合いだ。

まず事前の話し合いでは当日の練習マップにおけるテーマや目標を決める。チームで用意しているセットアップなどもその際に確認し、より良いセットアップも同時に模索していく。この段階でも平均して2時間ほど費やすが、本番は練習試合が終わった後にチーム全体で行うフィードバックの時間だ。

「事前に決めたテーマに合わせて反省点を洗い出すことから始まり、チーム全体の戦術や個人技に至るまでフィードバックします。この話し合いに最低でも4時間近くかかりますし、盛り上がる時は6時間以上かかったりしてます」

見つかった反省点は確実に改善できるまでとことん突き詰めていく。そうやってすり合わせていく姿勢と積み重ねが、チームとしての原則や考え方、そして実力に繋がっていくのだろう。本気で勝利を目指すプレイヤーで構成されているからこそ成せる業だ。

ライバルには絶対に負けたくない

中学2年生の頃、Derialyは腰の骨折という大きな怪我を負った。当時は部活動に勤しんでいたが、骨折により活動を続けるのは難しくなった。その代わりに出会ったのがPCゲームだった。最初は暇つぶしとして始めたものの、元々スポーツをやっていたからか、次第に対戦ゲームの奥深さと魅力に気付き始めた。

「その際に本格的に始めた対戦ゲームが『カウンターストライク:グローバルオフェンシブ(CS:GO)』で、『VALORANT』がリリースされるまではずっとプレイしていました」

『VALORANT』がリリースされた際は大きなチャンスだと感じた。自分には『CS:GO』で培ったエイムやゲーム感覚がある。だが何よりも、最大の武器は年齢だ。当時のDerialyは高校生で、17歳。この若さは大きなアドバンテージだと自覚していた。

Derialyの自身に対する分析は極めて正しかった。事実、プロチームが彼を放っておくことは無く、最初期からプロとして活動することになる。しかし『VALORANT』の競技シーンは一筋縄ではいかなかった。熾烈な競争により際限なくレベルが上がっていくなか、結果を出せない日々が続いた。

「実はずっと、Crazy Raccoonのpopogachi選手のことを意識しています。僕より後に参入したのに、僕より先に活躍していて……」

そこが一番悔しいんです、とDerialyは付け加えた。彼らは『CS:GO』の頃からの仲だ。共に同じゲームで遊び、同じチームに所属した時期もある。だからこそ余計に悔しい。

「今年のNORTHEPTION加入がラストチャンスだと思ってました。ここで結果を出さないと、プロでやっていけるはずがないと」

背水の陣の覚悟で加入したNORTHEPTIONは、彼の想像以上の躍動を果たした。強豪チームの数々を打ち倒し、Playoffsでは今まで一度たりとも勝てていなかったCrazy Raccoonにすら勝利を収めた。それは同時に、Derialyにとってはpopogachiに初めて土をつけた瞬間でもあった。

「popogachiは僕にとってはライバルに近い存在。popogachiがどう思っているかは分からないけど、この前の試合は相当悔しいはず。絶対に負けたくないという想いは、お互いに抱いていると思います」

何度も負けてきただけに、まだまだ勝った気はしていないという。青春を共にした仲間が、今では好敵手のような存在になった。その奇妙な関係をDerialyは嬉しく思っている。

CRに勝利を収めた瞬間

適応力と成長力がNORTHEPTIONの武器

「Derialyと言えば、底抜けの明るさ」
「彼がいると雰囲気が良い」

チームメイトのBlackWizとJoxJoが放った言葉だ。太陽のように陽気で明るいDerialyの性格は、結成から間もないNortheptionにとっては欠かせない要素であり、チームを回す潤滑油として大いに機能している。

△Derialyの存在がチームを自然と和やかな雰囲気にしてくれる

「悪口を言わず、他人への思いやりを持つようにしてます。チームの雰囲気とか士気って、凄く重要だと考えているので。特に負けている時こそ声掛けをしようと心掛けてます」

NORTHEPTIONはなぜ飛躍したのか。その問いへの答えの一つにDerialyの存在があるのは間違いないだろう。同時に、NORTHEPTIONがDerialyに与えた影響も大きい。

以前のDerialyはハイリスクハイリターンな選択肢を取ることが多かった。50%の確率で二人を倒せると感じたら迷わず積極的に攻めていくタイプだったが、NORTHEPTIONに入ってから原則や考え方を統一するようになり、根本的なプレイスタイルに変化が起きた。今では50%の確率で二人を倒すよりも、80%の確率で一人を倒す行動を選ぶ。

「ハイリスクなプレイより、再現性の高いプレイを重視するようになりました。ただ、相手のスーパープレイを強引に力でねじ伏せるような、いわゆるパワープレイも僕は好きです」

△彼の自信は「全部注目してほしい」という言葉にも表れている

Playoff Finalsの初戦は国内最強のZETA DIVISION。直接対決は数ヶ月ぶりとなる。相手にとって不足は無い。

「ZETAが凄いのは、ミスの回数が圧倒的に少ない所です。あれだけミスをしないチームというのは他に無いと思います」

本番環境での緊張感すらものともしない、安定したプレイこそZETAの神髄だと語る。だがNORTHEPTIONにも大きな強みがある。

「新しいパッチへの適応力やチームの成長力で、僕達の右に出るチームは居ないと思います」

僅かな期間で結果を出してきたからこその言葉だ。日本の頂点が手の届くところまで来たNORTHEPTION。破竹の勢いのまま、一体どこまで登り詰めるのか。

Playoff Finals、間違いなく記憶に刻まれる舞台になるだろう。

(取材・文 gappo3)


NORTHEPTIONが出場する国内大会『2022 VALORANT Champions Tour Challengers Japan Stage2』 のPlayoff Finalsはさいたまスーパーアリーナにて6月25~26日に開催。試合の模様はYouTubeTwitchでも配信されます。


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