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世界大会に挑むKOHALが描く“Game Change” 「弱く見られがちな女性プレイヤーへの偏見を変えていきたい」

BACKSTAGE

『VALORANT』の公式大会「VALORANT Champions Tour」初の世界的な女性大会「Game Changers(以下GC)」。この大会で東アジア代表となったFENNEL HOTELAVA(以下FL)を取り巻く環境は、短期間で劇的な変化を遂げた。

メンバーのひとりであるKOHALはこの変化を「まさか自分がjulianoと同じ大会に出るなんて、半年前でさえ思ってなかったですからね」という言葉で表現した。

julianoとは、11月15日から開幕する世界大会「2022 VALORANT Game Changers Championship - Berlin」へヨーロッパ代表として出場するG2 Gozen所属のスウェーデン人プレイヤーで、KOHALの憧れの選手である。

「頭の回転が速いうえにフィジカルがめちゃめちゃ強くて、試合展開を自分の力で変えていくようなプレイヤーなので尊敬しています。彼女が『Counter-Strike: Global Offensive(以下CS:GO)』の選手として活躍していた5年ほど前から憧れていますので、実際に会えたら嬉しいですね」

とはいえ「対戦することになったら、嬉しい気持ちを抑えて敵として戦っていかなきゃなって思いますね」と、決意も口にしたKOHAL。確かなプロ意識と先頭に立つ自覚を持っているからこその発言だ。

『VALORANT』競技シーンとの出会い

KOHALが『CS:GO』に初めて触れたのは18歳のときだった。

「当時はMacbookを使っていたんですけど、対応しているリアル寄りなFPSが『CS:GO』しかなかったんです。それで最初はポチポチ遊び感覚でやっていたんですけど、どうしてもノートパソコンだと撃ち勝てなくて」

20歳ごろ、念願のゲーミングPCを手に入れたKOHALは色々なFPSをプレイし、Twitchで配信活動も開始した。『VALORANT』に出会うと高ランクの「イモータル」までのぼりつめたが、すぐに遊び慣れていた別のFPSに戻ってしまったという。しばらく経ってから、再びKOHALが『VALORANT』を始めるきっかけとなったのは、女性コミュニティチームへの加入だった。

「女性チームがメンバーを1人募集しているのを見つけたんです。そこは、配信活動も頑張りつつ『VALORANT』もするというチームでした」

配信者として精力的に活動していたKOHALにとっては、ピッタリのチームだった。しかし、女性限定のとあるコミュニティ大会に参加したことをきっかけに競技シーンの楽しさを見い出したKOHALは、プロゲーミングチームFENNELのトライアウトを受けることを決意した。

「FLのメンバーはひとりひとりに色があるのも良いし、撃ち合いも強いから入ろうかなって」と淡々と述べるほど、トライアウト合格には絶対の自信を持っていた。

「落ちるなんて一切思ってなかったです。落ちたら見る目ないなって、一生入んねーぞって」

当時の心境を冗談めかして笑いながら振り返ったKOHAL。こうしてKOHALは、プロゲーマーとしての道を歩み始めた。

初の公式女性大会「Game Changers」開催

2022年7月、待望のGCの国内大会が始まった。初開催で対戦相手の情報がほとんどない中、FLは攻撃の選択肢を数多く用意し、細部は自信を持っている個人技でカバーしようという戦略を組んだ。

順調に勝ち進み、迎えた決勝戦の対戦相手はREIGNITE Lily。Bo5(3本先取)のフルセットを戦い、合計で100ラウンドを超える死闘の末にFLが国内初代女王の座に輝いた。

「気持ち的には3-0が良かったんですけど、流れが変わってしまったのが第4マップのアイスボックスだったかな。途中のタイムアウトで、チームの方針を変えてしまったんです。相手がエコ(武器が弱いラウンド)なのにもかかわらず、派手な動きをしようということになって」

選手にとってもコーチにとっても初めての大会だ。しかも当時は試合中に指示を出すIGLの役割が決まっておらず、自分たちの強い意思で流れを変える術を持っていなかった。

「何かをすべきタイミングを自分たちで見つけなきゃいけないっていう考えがなくて、言われたからやるという感じでした。それでやってみたら流れが変わってしまって『どうしよう』となって。タイムアウトがほしかったけど、自分から言っていいのかさえ分からず、結局言えずじまいでした」

敵チームの戦略は、いわゆる詰め待ち。それに対して詰めるのは得策ではないと考えたFLも、待って受けるという戦略をとった。隙を見てはワンピックをとって下がるという、我慢比べのような長い長い戦いを制したFL。

試合を終え人一倍の涙を流したKOHALは「もちろん嬉しい気持ちもあったけど、もっと差を見せつけられたのになっていう悔しさのほうが強かった」と、当時の心境を明かした。

ブートキャンプを経て東アジア大会へ

日本代表となったFLは、東アジア大会を控えたタイミングでブートキャンプに突入した。メンバーがオフラインで集まっての練習は「グータッチできるのが嬉しい」と素朴な感想を述べたKOHALだが、チームとしても大きな転機になったという。

「団結力が高まったと思いますね。VCだけのときは『言いすぎじゃね?』と思うこともあったんですよ。オンラインだと言い方がキツくても怒っているわけじゃないんだよって説明していたんですけど、オフラインだと表情が見えるので説明いらずで。真剣に取り組んでいるんだなっていうのが伝わってくるんです」

結束を高めて臨んだ大会で実際に中韓のチームと戦ってみてKOHALが感じたのは、撃ち合いの平均レベルの高さだ。エース級の選手が1人飛びぬけているチームが多い日本と違って、強い選手に続く残りの4人もすぐ下にいるようなイメージだ。だが、KOHALはそれでもFLの強さを信じて疑わなかった。

「実はOxyg3niOus(以下、O3O)のほうが脅威だと思っていたんですよ。Spear Gaming Female(以下、SPG)とは何回かスクリムをしたことがあったんですけど、強いと思わなくて。だけどグループステージ初戦は極度の緊張で、SPGに負けてしまいました」

しかしFLは2戦目で立て直しに成功すると、その後の準決勝でO3Oを倒し、決勝戦で再びSPGとの因縁の対決を迎えることなった。

「初戦の敗因は本当に緊張だけだったので、決勝戦は3-0でいこうって言っていました。視聴者の皆さんには難しいリベンジだと思われたかもしれないんですけど、自分たちからしたら絶対に勝てるリベンジだったんです」

宣言通り、3-0で優勝を決めたFLは見事に東アジア代表となった。

KOHALが”Game Change”していきたいこと

「2022 VALORANT Game Changers Championship - Berlin」へと挑戦するFL。世界大会では、乗り越えなければならない壁がいくつもあるだろうとKOHALは予想している。

「初代で世界大会を優勝できるチームって、すごい経験を積んでいるチームなんじゃないかなと思うんです。だからまず経験を積むことを最優先して、全力でぶつかって壁を2、3回乗り越えたいです。たとえ負けてしまったとしても、メンタルを保ったまま次のステップにいけたらなって思います」

とはいえ、決して最初から諦めているわけではない。「まあ、うちらが天性の実力で優勝できるかもしれないんで!」と強気な姿勢も覗かせた。そんなKOHALには、目指すべき大きな理想がある。

「女性って弱く見られがちだし、本人たちですら男性と差があると考えていたりするじゃないですか。そういう偏見を自分たちが変えていけたらなって思っています。普通の子たちは差別されたくないと思うので、逆に自分たちがそれを請け負いたいんです」

それは、自分たちが女性プレイヤーの先頭に立っていることを自覚しているからにほかならない。

「実績があるから言い返せるところもあると思うんですよ、女性でも強いんだって。次の大会でほかのチームが優勝したらその子たちも言えると思うんですけど、現状は自分たちしかいないので」

KOHALは自分の職業について「差別されるのが仕事だと思っていて、それをプラスに捉えている」とまで言い切っている。自分たちに視線が集まることで、今から『VALORANT』を始めようとしている女性たちに差別の目が向かないようにすれば、もっと女性プレイヤーが入りやすくなるのではないか、というのがKOHALの考えだ。

まさに「Game Changer」の名のごとく、KOHALは道なき道を切り開いていく。

(取材・文 スイニャン/写真 石川高央)


FENNEL HOTELAVAが日本代表として出場する公式国際大会「2022 VALORANT Game Changers Championship - Berlin」は、11月15日(日本時間)からTwitchYouTubeにて配信予定。

FENNEL HOTELAVAの初戦は日本時間17日午前2時から開始予定です。

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