テレワーク導入後に組織に起こる7つの症状と処方
この3年間、シェアサテライトオフィスTristに入居した企業と社員の双方からテレワークの相談を受け、また自分自身もテレワーカーを雇用し、テレワーカーとして雇用されている当事者として働いてきた。
テレワークというとツールの話になることが多いが、ツールは何のためにあるのかと言えば「チーム間のコミュニケーション」のためだ。
当たり前だが、オンライン上でのコミュニケーションは対面のコミュニケーションと違う。それを理解し、運用ルールを作っていかないと、どのツールやシステムを使っても同じ問題が起きる。
今回はよく受ける相談と、実際に入居企業が今まさに行っている<すぐにできる処方>の一例を整理してみた。
テレワークを広めたいなら良いことばっかり並べてもダメで、ちゃんと問題を見える化していかないといけない。
日々アップデート中なので、処方はどんどん追加されるイメージではあるが、参考にしていただけたら嬉しい。
①チャット疲弊症
時間や場所に囚われずに働くからこそ、絶えずチャットが動いている。 気が付いた頃には「もう手遅れだ」と諦めるほど、会話が進んでいる。「 見なくても大丈夫」と言われても気になるし、みんなが働いているのに自分が働いていないと妙な罪悪感を感じてしまう。
また、どこで話を変えて良いのか分からず「空気読めない」という投稿をしてしまうことに不安を感じる。
処方:メンション以外は見ていない前提でコミュニケーションをとることを共通ルール化。(〇〇さんだけはみなくて大丈夫。ではなく、全員の共通ルールにするのがポイント)見ない時間を設定しておく。会話しやすいよう、チャネルを細分化し、各チャネルの目的を明確にしておく。
②テレビ会議アレルギー
テレビ会議ではコミュニケーションが取れないと思い込んで「集まることができなかった場合の手段」というスタンスをとる。そうなると「テレビ会議でよいですか?」と提案しにくくなる。また、テレビ会議を会議としてしか使わない。会議室を取ったり、全員のスケジュールを合わすことに時間がかかるからテレビ会議なのに、結局調整に時間がかかる。
処方:「ちょっといいですか?」の5分くらいの雑談や相談にテレビ会議を使い、少しずつ慣れていく。
③対面欠乏症
普段はテレワークで便利なのだが、なんだかすごく直接会いたくなる。話をしなくても、同じ空間にいたくなる。空気を共有したくなる。お互いが気持ちよく働けているかどうかを確認したくなる。
処方:シェアオフィスを活用し、曜日固定して、同じ場所で働く日を作る。
④評価不安
「時間」や「見られている」ことで評価されることに慣れている日本人は離れているとどんどん不安になる。働き方は自由になっても、海外のようにミッションが明確に決められてはおらず、総務的な仕事も多いので、何で評価されるのかわからない。他のメンバーと比較することもできないので、自分の評価や報酬が高いかどうか判断できない。
処方:メンバー間で「良い点・改善点」を毎月評価しあい、それを元に上司と面談。オンライン上でのやり取りをベースにお互いが「見ている」という安心感を作る。(監視や管理ではなく、安心がキーワード)
⑤ルール硬化
テレワーク導入前にしっかりルールを作ったが、実際にやってみるとうまく行かないことが多々起こる。柔軟に対応したいが、すでにルールとして決まっているので、結局使えない制度になってしまっている
処方:チーム、業務、人によって最適解は変わるので、3か月に一度ルールや課題を洗い出し、テレワークガイドラインのアップデートをチーム全員で行う。
⑥オフ失念症
いつでもどこでも働けるので、オフを取ることを本人も忘れてしまう。
いつをオフとカウントすれば良いかわからない。気が付いたら「あれ?私いつ休んだっけ?」という状況になる。
処方:休みをタスクとして入れる。休みを取れたら取る、ではなく、取らなければならないものとしてタスク化する。
⑦全体視野欠落症
仕事がタスクベースで振り分けられるため、全体の動きが見えにくい。
自分のタスクの遅れがどこにどう影響するのかが分からず、問題が起きてしまう。また、誰がどのようにかかわっているかわからないため、進行中にタスクが漏れてしまう。
処方:プロジェクトにかかわる各人のタスクをすべて洗い出し、各タスクの関連をスケジュールで見やすくし、常に全体を見れる状態にしておく。(例:タスク管理ツールの運用方法の徹底)
新しい血の流れを作るのだから、拒否反応は当然。
テレワークに万能薬はない。なぜなら、チームによって「なぜテレワークを導入するのか?」が変わってくるから。組織の目指すべきビジョンや中期経営計画を軸にテレワークガイドラインを作っていかないとフィットせず、ツール難民になってしまう。
組織(体)に新しい形のコミニュケーション(血の流れ)を取り入れるのだから、拒否反応がでるのは当然。「だから、テレワークはうまく行かないんだ!」と批判するのではなく、トライアルを繰り返しながら、自社に合う流れ方(ガイドライン)をみんなでアップデートしていくことが遠回りのように見えて一番の近道である。
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私が編集長を務めるバックキャスティングラボでテレワークを特集取材しています。こちらもぜひお読みください。
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