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失敗しない買い物体験を提供する「Yahoo!トラベル」の買い物カゴ+カート内のキャンセル期日表記、そのスゴさを解説します!

「失敗しない買い物体験」「安心して買い物できる」を提供しようとしているLINEヤフーの「Yahoo!トラベル」の取り組みを解説。キャンセルの受付体制を整備することが、中長期的に見るとCVアップ、LTV向上、そして買い物体験、UX向上に寄与することをお伝えします。

ECでの買い物をする消費者から「Amazonだったらキャンセルできるから購入する」という声はよく聞きませんか? 「出荷準備開始前」のステータスであればキャンセルできるAmazonですが、その手続きはとても簡単。「注文履歴」から「注文をキャンセル」または「商品をキャンセル」という項目をクリックまたはタップするだけ。この「失敗しない買い物体験」「安心して買い物できる」というUX(ユーザーエクスペリエンス)は、多くのユーザーがAmazonで買い物をし続ける理由の1つになっているのは間違いのないところでしょう。ここでは、キャンセルを切り口に、「失敗しない買い物体験」「安心して買い物できる」を提供しようとしているLINEヤフーの取り組みを紹介します。僕はこの取り組みは、多くの自社ECサイトで「失敗しない買い物体験」「安心して買い物できる」といった買い物体験を提供できるヒントになると考えています。

積極的なキャンセルポリシーの開示を試みる「Yahoo!トラベル」

皆さん、最近の「Yahoo!トラベル」でカートボタンの周辺で大きな変化があったのはご存じですか?

日付を選択して予約をする場合は「予約へ進む」ボタンの下に、日付を選択していない場合は「日付を選択して予約」ボタンの下に、こんな表記があるんです。

◾️「予約へ進む」の場合 → 〇〇月〇〇日までキャンセル料無料


「予約へ進む」の場合

◾️「日付を選択して予約」の場合 →  チェックイン日の〇日前までキャンセル料無料


「日付を選択して予約」の場合

消費者心理として、「キャンセルポリシーの明示」「今注文を確定しても、〇日までは費用を負担することなくキャンセルできる」という安心感を提供しています。

この安心感の提供は徹底しています。カート内の予約確認ページにおいて、各種規約を読んだ後の予約完了ボタンである「上記に同意して予約を完了する」ボタン内にも、「〇〇月〇〇日までキャンセル料無料」と念を押す徹底ぶり。これは、キャンセルを無料できる期間を事前に提示することで安心感、失敗しない旅行予約体験を提供するとても素晴らしい取り組み。ぜひ改善効果をお伺いしたいですね。


「上記に同意して予約を完了する」ボタン内にも


日本でECがスタートしたとされる1995年あたりから約30年。進化を遂げ続けていますが、変わっていないのがキャンセルポリシーやキャンセルの受け付け。コンバージョンを落としたくない、キャンセル受付が手間――などの理由で、キャンセル受付を通じた良い顧客体験の提供を試みる事業者はごくわずか。つまり負のレガシーを抱えているECサイトが圧倒的に多いんです。

僕がECサイトを運用している事業者に強く言いたいのは、「せキャンセルを受け付けているなら、堂々とお客さまに宣言しませんか?」ということ。

もちろんマーケティングなど資本を投下して集客、1件でも多くの注文を取りたいのはわかります。ただ、注文後に●日●時まで(出荷手前まで)キャンセルを受け付ける運用体制を構築しているのであれば、堂々とキャンセルポリシーを伝えるのは、最終的にはCV数、CVRの向上に大きく貢献するんです。

キャンセルを前向きに受け付けると良いことがたくさんあるんです。僕が社長を務める会社が運営しているTシャツのECサイト「Tshirt.st」(https://www.tshirt.st/)では、キャンセルを積極的に受け付けるようにしています。

大手のECサイトではマイページの注文履歴から、注文した商品をキャンセル手続きできるようにしているサイトは多く見られますが、そのようなフローではありません。マイページではなく、キャンセルを自動で受け付ける専用のページを設置(サイトのフッター、お注文状況ページからアクセスできます)。注文番号を入れるだけで、キャンセルを自動処理するようにしています(もちろん配送前の商品になります)。


リターンズ オートキャンセルを導入した自動キャンセル受付フォーム


この運用をスタートし、キャンセルをしたお客さまの6割が再び再注文。客単価、LTVの向上にもつながっているんです。


“レガシー”なECサイトのキャンセル受付体制

さて、ここで冒頭のAmazonのお話に戻ります。Aamzonのキャンセルプロセスは、購買履歴と完全統合されているため、ユーザー自身で簡単にキャンセル依頼をすることができます。このことは、「製品のスペックがわからない」「使い心地を知りたいけどレビューを読んでもしっくりこない」「けど、試してみたい」といったときに、Amazonのようにユーザー自身で簡単に注文をキャンセルできるECサイトは、商品購入の後押しになりますよね?

Amazonの競合にあたる「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」の場合、キャンセルポリシーは出店企業の判断にゆだねられているため、“売り場”として統一的なキャンセル体験を提供できていません。そのため、僕自身は、商品購入の最後の後押しとなるキャンセル体験ができるAmazonで購入するケースが多いですね。

消費者庁が実施した「キャンセル料に関する消費者の意識調査」の報告書に、興味深い調査結果がありました。この調査は、消費者はどのような場合にキャンセル料を支払うことに「納得できるのか」「納得できないのか」を調査する目的で実施されたもので、キャンセルについて興味深いことを示唆しています。

“オンラインでの購入・契約の場合、申込画面でのキャンセルポリシー等の表示の有無は、情報提供に対する印象とほとんど関連していない、あるいは消費者が表示の有無を正確に記憶できていない可能性を示唆。”

多くのECサイトについては、後者の「あるいは消費者が表示の有無を正確に記憶できていない可能性を示唆」と言えるでしょう。

まだまだ多くのECサイトでは、利用規約内で「出荷前までならキャンセルが可能です」といったテキストのみでのキャンセル案内をしている事業者が大半。そもそも出荷前というのは売り手側の発想であり、エンドユーザの消費者はいつ出荷されるのか? と漠然な気持ちになります。当たり前ですよね。消費者はバックエンドの運用体制まで把握していないのですから。

「Tshirt.st」では、

このようにキャンセルに関する案内を行っています。「キャンセルを積極的に受け付けるCVが減る」「キャンセル受付は手間」「カスタマーセンターの業務が煩雑化してしまう」というレガシーな考えを変えてみませんか?

キャンセルの受け付けをきちんと消費者に提示することは、中長期的に見るとCVアップ、LTV向上、そして買い物体験、UX向上に寄与するんです。

では、また。

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