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クレデンザ1926×78rpmの邂逅 #88~ヴィクトル・デ・サバタ/ベルリン・フィルハーモニー ワーグナー『トリスタンとイゾルデ』より『イゾルデ "愛の死”』(1939)

デ・サバタ~ワーグナー

このシリーズの前々回でヴィクトル・デ・サバタR.シュトラウス『死と変容』(1939)、前回(というか、今日)、レオ・ブレッヒのワーグナー『ローエングリン』第一幕前奏曲の78rpmについて記事を上げ、【ターンテーブル動画】をご紹介した。

ということで、その流れに乗ってデ・サバタがベルリン・フィルを振ったもう一つの名演、ワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』より『イゾルデ ”愛の死”』を。

#85でデ・サバタがトスカニーニの後を継いでミラノ・スカラ座音楽監督になり、『トリスタンとイゾルデ』を上演、それが評判となり、以降このレパートリーが彼の十八番となり、さらにバイロイト音楽祭に登場し、これを指揮したことは既に述べた。

「死」に対する憧憬を描くことへの衝動

そんな彼は1939年に行われた一連のベルリン・フィルとのレコーディング・セッションで『トリスタンとイゾルデ』の『前奏曲と愛の死』を取り上げている。
R.シュトラウスの『死と変容』といい、「死」をテーマにしたロマン派が行き着くところまで行きついた、世紀末に向かっていく濃厚なヨーロッパ音楽の象徴のようなこの2作品を、デ・サバタが何故取り上げたのか?単に得意だったから、と言ってしまえば簡単だ。
だが、やはりそこにはナチス・ドイツに支配されたドイツで、”帝国オーケストラ”となったベルリン・フィルと共に録音すべき曲だという意識、「死」に対する憧憬を描くことへの衝動が、デ・サバタの心を揺り動かしたのではないだろうか?
それは同じセッションで、ブルックナーと共に19世紀交響曲史の掉尾を飾ったブラームスが、諦観の念をもって作曲した『交響曲第4番』をもレコーディングしている、という事実を知ればそれは確信に変わる・・・・

ベルリン・フィルは遡ること9年、1930年に主のフルトヴェングラーと既に『前奏曲と愛の死』を同じくポリドールに録音している。

フルトヴェングラーとデ・サバタの関係については詳らかではないが、そう簡単に自分が認めない指揮者に、自分のオーケストラの客演やレコーディングの機会を与えたとは考えづらい。
カラヤンがフルトヴェングラー時代にベルリン・フィルに客演したのは、極々僅かだった。

【ターンテーブル動画】

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イタリア人が先天的に持つメロディーの上手な歌わせ方=カンタービレがデ・サバタの『愛の死』をとても魅力的なものにしている。フルトヴェングラーの「陶酔と昇華」とは、また一味違う名演だ。


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