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かふぇ あたらくしあ の 徒然

86歳、好奇心の塊

12月9日の午前中、タワレコから注文していたCDが届いた。

CD(中古も含む)を買ったなんて、恐らく2年振りくらい。 

でもこれは店用でも自分用でもない。

あたらくしあへお越しいただくお客様で、年齢を自ら口にした方の最高年齢は86歳。
お二人いるが共に男性。

そのうち、最近足繁く通っていただいているNさん。

少し前「神保町の交差点から店への行き方が分からないから教えて欲しい」と電話があったので、私が店を出てそこまで伺い、ご案内したのが最初。
手には「ぴあクラシック」に掲載されたうちの記事の切り抜き(しかも夏号!)がしっかりと握られていた。

杖をついてトボトボ歩き。

しかし驚く勿れ、千葉市稲毛区から1人で電車に乗ってやっていらっしゃる。

またもやここに「好奇心の塊」のご長寿一人。

イヴォンヌ・キュルティとネットショッピング

Nさんは、昔はLPレコードを沢山持っていたが、今は全部処分して専らCDで音楽を楽しんでいるそう。

ここにもまた一つ、レコード・コレクションの終活問題…。

CDが届いた2日前、Nさんは店にやって来て「おたくはAmazonとやらと取引があるか?」と言われたので、「うちがAmazonにショップを持っているか?」ということかと思い、「いいえ」と答えた。

すると「どうしても欲しいCDがあるのだけれど、店にそれが売っていなくて、アマゾンというところなら売っているらしい」とのこと。

つまり「取引」というのは「Amazonでものを買ったことがあるか?」という意味だったのだ。

その欲しいCDというのは、イヴォンヌ・キュルティというフランスの女流ヴァイオリニストが録音した小品を収めたもので、2枚あるという。


実はこのキュルティ、1930年代に小品のSP盤録音を数多く残していて、その録音がほぼこの2枚に網羅されている。

しかし、どこで生まれて、どこで勉強したのかといったプロフィールがほぼヴェールに包まれているキュルティ。

そのオリジナルナルSP盤は、今では稀覯盤扱いされているので、彼女の演奏を聴くなら、SACD化もされたこの2枚のCDで聴く、ということになる。

ただし、実店舗では在庫がないのは今のご時世当たり前。

だからこうして、Nさんのように、ネットショッピングはちんぷんかんぷん、という御仁は、「ものはあるのに、手にできない」ということになりがち。

Nさんにそれを頼めるご家族がいるかは存じ上げない。

世の中、便利なのか不便なのか…🤔

代理購入

というわけで、私がその場でタワレコ・オンラインで検索したら、2枚とも注文すれば一両日に発送できる、と分かったので、「代わりに私が買って、それをお渡しするということで良いですか?」と尋ねたら「そうして欲しい」ということだった。
だからその場でポチり、値段と送料をNさんに伝え、届いたら連絡を差し上げると伝えておいた。

その時、お金を払われそうになったので、商品と引き換えで構わないと言った。

CDが届いたのですぐにNさんの携帯に電話をしたら、今日か明日取りに行く、とのこと。
そして予告通り15時半頃店にいらした。

店に入るや否や手提げ袋に入ったユーハイムのお菓子を手渡され、「お礼です」と。

実は手提げ袋の中にレシートが入ったまま…。
チラッと見たらもう1枚CDが買えそうな金額だった。

2日前にいらした時に「手数料は払うから」と言われたのでそれは固辞したが、こちらはありがたく頂戴した。

今夜はさぞかし夢心地の時間を過ごされることだろう。
お気をつけてお帰りを。

蛇足

蛇足ながら、あたらくしあにはそのキュルティのSP盤が1枚だけある。

稀覯盤らしからぬ、15€というお値段で買ったのだけれど(それもミント・コンディションで)。

蛇足ついでに、自分の意思で(親に連れられて来たのではなく)いらした最年少のお客様は、神田猿楽町の神田女子学園高等学校の生徒さん…しかもおひとり様。

期末テストが終わった日だったらしく、学校から直行してきたそうな。

「前から来たかったのだけれど、オーダーするまで緊張しました」と言って、クリームソーダとチョコレートケーキを。

「年齢は実年齢でなく、精神(マインド)年齢で」

これ、基本中の基本、です。

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