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ブルックナー関連まとめ

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2022年5月の記事一覧

ブルックナーの知られざる名曲三選-小品から見えてくるブルックナーの音楽像

 ブルックナーと言えば交響曲だが、魅力的な小品から彼の音楽の全体像を再構成することも可能である。  今回は三つの小さな名曲を通じて、ブルックナーの音楽作品全般に通ずる普遍的な特徴について見ていきたい。 1.リーベラ・メ Libera me [WAB22](1854年) 師である聖フローリアン修道院長の告別式のために書かれた作品である。  作曲当時、ブルックナーは三十歳。  どことなくモーツァルトのレクイエムの一節を思わせるような曲調であり、あるいはモーツァルトに少なからず影

ブルックナーの交響曲聞き方ガイド(中級編)

 ブルックナーの交響曲は、とてつもなく長い。  演奏会で聞くにせよ、録音で聞くにせよ、集中力を保ち続けるのは至難の業である。長大な交響曲を最初から最後まで聞き通すコツはないのだろうか?    ブルックナーの交響曲を一曲丸々聞き通すには、各楽章ごとに、曲の構成(つくり)を押さえた聞き方が必要になってくる。  逆に、曲の構成さえ理解すれば、ブルックナーの交響曲は非常に明晰で聞きやすい。    中級編の今回は、交響曲全般に共通する構成の特徴を概観した上で、《交響曲第8番》(1887