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現地コーディネーター

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長編小説「現地コーディネーター」のまとめです。創作大賞2024に挑戦中。
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#ニューオーリンズ

現地コーディネーター:第25話

 エドウィンとフリアナはマルディグラ最後のパレードの鼓笛隊をBGMにフレンチクオーターを歩いた。たった二日でこの街に愛着すら感じている。しかしこの華やかなパレードが終われば彼女と別れなければならない事を考えると、エドウィンは自然と彼女の指を強く握った。  カナル通りの電線には数日の間に飛び交ったビーズのネックレスがからまっており、彩りを増していた。通りの端の消火栓や交通標識 にも緑や紫や金色のビーズがぶら下がっている。  エドウィンはふと足を止めるとフリアナの顔を物惜しそ

現地コーディネーター:第24話

 深い海に沈んだように眠り込んだエドウィンはズキズキする頭痛と共に目を開けた。目の前に褐色の滑らかな丘陵があり、その頂上にコーヒー豆のような乳首がある。エドウィンはフリアナの裸の胸をそっと撫でた。二日酔いはひどいが、ずっと奥に閉じ込めていた頑固なできものが消えたような感覚があって清々しい気分だった。時計はすでに昼過ぎを示しているが、この甘美な時間をずっと味わっていたい。  エドウィンがそっと口づけをすると天使はゆっくりと目を開けた。エドウィンと目が合うと彼女は小さく微笑んで

現地コーディネーター:第22話

 フリアナが自分に触れる回数が増えている。ブラジルではごく普通のスキンシップなのかもしれないが、汗で少し湿った手が自分の首筋や頰を撫でる度にいちいち下半身が反応しそうになる。エドウィンは彼女に気付かれないようにこっそりポケットに手を突っ込んで物を抑えつつ、会話に集中するよう努めた。 「エドウィンは、普段休みの日は何して遊ぶの?」 「う~ん。友達と映画とかライブに行ったりとかかなあ」  何故か嘘をついてしまう。一緒に遊ぶ友達なんていないのに。  二人は他愛のない会話を繰り返

現地コーディネーター:第21話

 フレンチクオーターはどこを歩いても人がごったがえしていて、どの飲食店も店外まで行列が続いている。並ぶつもりのない三人はテイクアウト専用の簡易屋台のバーでハリケーンというカクテルを三つ頼んだ。地元名物で一度は飲むべき酒だとフリアナが言うのだから飲まないわけにはいかない。 「サウージ!」  出会って間もないのにすっかり馴染んだフリアナの音頭で乾杯をした。オレンジとパッションフルーツのジュースのミックスがすっきりとして飲みやすいが、随分な量のラムが入っている。フリアナになかなか

現地コーディネーター:第20話

 ミシシッピ州の安モーテルで一晩を過ごした二人は急に湧いてでてきた目的地ニューオーリンズへ向かった。二人を乗せたビートルは時速百キロで舗装されたばかりの道路を滑るように進んだ。古い木々が道路の両側に茂り、その影には小さな教会や田畑が広がる。  モーテルは前回より清潔だったし、カズマの提案でそれぞれ別の部屋に泊まったのだが、エドウィンは気分が高揚して中々寝付けず、またしばしの間眠っても極度に乾燥した部屋のせいで途中で何度も目を覚ましてしまっていた。アメリカに来てまだ一度もしっ