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シン・ノアの方舟計画Part3(火星移住計画)

オープニング

 『シン・ノアの方舟計画Part1』では「意識拡張」、『シン・ノアの方舟計画Part2』では「人間拡張」を考察しました。

 今回は、トランスヒューマニズムと密接に関連した活動を行っているイーロン・マスクを中心に取り上げます。

 また、Part1とPart2で取り上げたオメガポイントとトランスヒューマニズムは、どちらもアーヴィン・ラズロの主張とリンクしています。

ロゴス文明(トランスヒューマニズム)
理性を重視し、権力と征服を中心とした文明。物質的な豊かさを追求する一方、人と人、人と自然、そして人と社会のつながりを失っていると警鐘。

ホロス文明(オメガポイント)
全一性を重視し、個人の成長と人間のコミュニティ、生物圏の持続可能性を核とした文明。ジェームズ・ラブロックのガイア理論に基づき、地球上のすべての物質や生命が相互に結びついているという考え方を採用。

 ラズロは、現代社会はロゴス文明を突き進んでいるので、科学技術を中心としたトランスヒューマニズムが主流になっていると主張しています。

四つの側面を持つコスモスのホロン階層

 そして 「意識拡張」により自律分散型社会を目指すのがホロス文明です。「ホロン」という概念を提唱しているのはアーサー・ケストラーであり、それを意識の階層構造に発展させているのがケン・ウィルバーです。



イーロン・マスク

 イーロン・マスクは1971年に南アフリカで生まれ、カナダを経てアメリカに移住し、ペンシルベニア大学で物理学と経済学を学んだ後、起業家として成功を収め、Zip2やPayPalを設立しました。

 2002年にはスペースXを創立して宇宙開発に取り組む一方、2004年からテスラのCEOとして電気自動車産業を革新しました。

 イーロンは生い立ちからぶっ飛んだエピソードに溢れています。話題に事欠かない人物なので、彼が関わっている会社を中心に取り上げていきます。



PayPal

 PayPalは、1998年にシリコンバレーで「Confinity(コンフィニティ)」という名前で設立されました。設立者はピーター・ティールで、マックス・レブチンと共に会社を立ち上げました。

 ピーター・ティールはPay Palマフィアの中心人物で、「影の大統領」と呼ばれるほど絶大な影響力を持っています。同氏について、いつか別の記事で取り上げたいと思います。

 当初は、お金とメールを結びつけるデジタル決済システムとして開発し、2000年3月にイーロン・マスクが創業した「X.com」と合併し、社名をPayPalに変更しました。

 PayPalはその後、2002年にeBayによって15億ドルで買収されましたが、2015年には独立しました。

 設立当初から訴訟や不正利用などの課題に直面しながらも、PayPalはデジタル決済の革新を続け、現在では200以上の国で利用される国際的な決済プラットフォームとなっています。暗号資産でも決済できるのが特徴です。



スペースX

 スペースXは、2002年にイーロン・マスクが設立した民間宇宙開発企業で、主にロケットの再利用技術を用いて打ち上げコストを削減し、2020年には民間企業として初めて有人宇宙船を国際宇宙ステーションに到達させ、火星への人類移住を目指すビジョンを持っています。

 また、衛星インターネット事業「スターリンク」など多角的に事業を展開し、迅速な試作と実験を重視する企業文化を持っています。

 スターリンクはその高い技術力と急速な展開により、世界の衛星通信市場で主導的な地位を確立しつつあり、特に災害時や遠隔地での通信手段として、その重要性が認識されています。



Tesla

 テスラモーターズは、2003年7月にマーティン・エバーハードとマーク・ターペニングによってアメリカ合衆国デラウェア州で設立され、2004年2月、イーロン・マスクが同社に参加し、第一回シリーズA投資ラウンドを主導しました。

 このラウンドでは750万ドルが調達され、イーロン自身が650万ドルを投資してテスラの筆頭株主となり、取締役会長に就任しました。

 自動運転技術やバッテリー技術の革新を進め、直販方式や充電インフラの展開で急成長を遂げ、2024年には時価総額で世界最大の自動車メーカーとなっています。

 またTeslaはロボットの開発に積極的に取り組んでおり、「オプティマス」と呼ばれる人型ロボット・プロジェクトに力を入れ、二足歩行のヒューマノイド・ロボット作りを目指しています。

 この人型ロボットの小規模生産を2025年に社内向けに開始し、2026年には外販向けの量産を目指す計画です。



X(旧Twitter)

 イーロン・マスクは2022年にTwitterを440億ドルで買収し、経営陣を刷新、大規模レイオフ(解雇)を実施しました。

 2023年にはブランド名を「X」に変更し、上場も廃止しました。イーロンはスパムボットの排除や言論の自由の促進を目指していますが、私は懐疑的に見ています。



X.AI(xAIに改称)

 イーロン・マスク氏は2023年に人工知能企業「xAI」を設立し、目標に「宇宙の本質を理解すること」を掲げ、DeepMindやOpenAI出身のの専門家が参加しています。ここは重要な内容になるので後述します。



ニューラリンク

 ニューラリンクは、イーロン・マスクが2016年に設立した脳科学関連のスタートアップ企業で、脳とコンピューターを直接接続するインターフェース技術を開発しています。

 ニューラリンクの中核技術は、脳に埋め込む電極デバイスで、数千個の小さな電極を使用してニューロンの信号を読み取り、コンピューターに送信します。この技術は、四肢麻痺患者の支援、視力や運動機能の回復を目指し、人間の知能とAIの直接接続や融合を目指しています。

 ニューラリンクは、2023年5月にFDAから人間を対象とした臨床試験の承認を取得し、2024年1月に初めて人間の脳にチップを埋め込む手術を実施。テスラの人型ロボット「オプティマス」との連携を示唆しています。

 またイーロンは、ニューラリンクが将来的に最も重要なプロジェクトになる可能性があると述べ、医療分野での応用だけでなく、人間の能力拡張や人工知能との共存というビジョンを持っています。

 イーロンを21世紀で最も革新的な起業家のひとりに押し上げた要因のひとつに物理学的思考を基盤とした独自のアプローチがありますが、さらにイーロン・マスクの素顔に迫ってみようと思います。


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