見出し画像

犬とのふれあい方:初対面の犬と触れ合う時の注意点

犬が好きな方ならば散歩中に犬を見かけて、「ああ可愛いなあ、カッコいいなあ、触りたいなあ」と思う時って、ありますよね。
今回は、そんな「初対面の犬と触れ合う時の注意点」を、「困ったパターンの実例」も交えて書こうと思います。



相手の犬がどんな犬なのかは、見ただけではわかりません。
人が苦手な犬かもしれない、犬が苦手な犬かもしれない、と想像することが出来て、「触る前・近寄る前に飼い主に声を掛けてくれる」方もいますが、そうでない方も多くいます。

中には飼い主への声掛けなしに、無防備に犬に触ろうと散歩中にいきなり近寄って来たり、触ろうとする方もいらっしゃいます。

小さな子供などは犬を見て一気にテンションが上がり、
「ワンちゃんだー!」
と猛ダッシュでこちらへ駆け寄ってきたりもしますし、それを止めずに微笑ましく黙って見ている親御さんもいます。

「飼い主がリードを持っているのだから大丈夫でしょう」とばかりに、安全性をこちらへ丸投げしてくる親御さん、結構多いんです。



大きな犬と暮らした経験を持つ方なら、こうしたシーンにヒヤリとする思いをした事が二度や三度ではない方も、多いでしょう。
どんなに力加減を心得ている犬でも、ほんの少しの力で近寄ってきたお子さんが怪我をするかもしれない。
子供の動きは急で予測不可能なため、突然の子供の動きに犬がつい反応して子供をびっくりさせ、子供を泣かせてしまうかもしれない。


飼い主なら誰しも、自分の犬を「悪もの」にしたくはないですよね。


犬好きイコール「犬に詳しい、犬を扱った経験が豊富」ではないため、飼い主としては「運転中に人が飛び出してきた」ようなヒヤッとする思いをさせられることは、多々あります。


せめて飼い主さんに一声かけてOKをもらってから接触する事。

②犬の気質や性格を一番知っているのは飼い主さんなので、飼い主さんの指示に従って触らせてもらう事。

③飼い主さんが「この子はこれが苦手で・・・」と言っているにもかかわらず、「私は(うちの子は)慣れていますから!」などと押し切って、飼い主さんとその犬を困らせるようなことをしない事。

④親御さんならばまずは自分が実際に相手の犬と接触して反応(安全性)を確かめる事。

⑤子供が触れ合うならば、いくら飼い主さんがついていても、親御さんも安全のために子供の傍で付き添う事。
離れてニコニコ見ているだけは、責任の放棄と同じです。
子供の安全を一方的に託された飼い主さんの気持ちとその立場を想像してみて下さい。

犬という生き物は、ヒトを簡単に地面に倒すことが出来ます。
その気になれば、一瞬で指の数本を持って行くことも出来ます。
「安全性の確保」を飼い主さんに丸投げしてはいけません。
もし何かあった時、責任が追及されるのは飼い主さんとその犬なのですから。



もちろん、外へ出して連れて歩いている以上、飼い主に「犬をコントロールする責任」が当然あります。

ですので、触っても良い犬なら
「頭上からいきなり手を出したら犬はビックリするから、顔より下にゆっくり手を出してあげてね」
など触り方を伝えた上でOKすることもありますし、社会化が未然な犬ならば
「この子は臆病なので(または他の犬が苦手な子なので・訓練中なので)ごめんなさい」
とお断りして、人や犬とトラブルにならないうちに早めに距離を取る場合もあります。

それは飼い主の責任です。
自分の犬と、相手の方や相手の犬を傷つけるようなことを避けるという責任の一つです。

けれど同じように、「犬に触ってみたい」側の方も、
「飼い主がついていようが相手は犬であり、強靭な体と牙を持つ生き物であり、それに自ら近寄り接触することによる結果は自己責任である」
という認識と意識は必要だと思います。


ヒトが苦手な犬もいるし、犬が苦手な犬もいる。


それを知らない方は、「飼い犬なら大人しい犬だろう」と当然のように思い込んでいる場合があるからです。


人間の子供に人懐っこい子と人見知りな子がいるように、犬にも個性と得意不得意な相手があります。
子供が苦手、大人が苦手、同じ犬が苦手、男性が苦手、声の大きい人や犬が苦手・・・などなど、犬にも得意な相手と不得意な相手が存在します。



また人間にも、犬が苦手だという方も当然います。
飼い犬でも、誰が触っても穏やかな犬もいれば、子供や男性など特定の人間を苦手とする犬もいますし、特定の声を苦手とする(男性の低い声に警戒する・女性や子供の高い声に過剰反応する)犬もいます。
特定の苦手なものがなくとも、まだまだ精神的に仔犬であったり、虐待を受けていた保護犬だったり、「社会化が未熟な犬」もいます。


社会化が未熟な犬(社交性や力加減などが身についていない犬)がヒトにじゃれたりすれば、犬にとっては無邪気な行動でも、思わぬ事故を招きかねません。

ふと当たった犬の足が、目を潰すかもしれません。
強く押されて転び、頭を打つかもしれません。
犬の爪や牙が、消えない傷跡を体に残すかもしれません。
何かの後遺症が残るかもしれません。
そうなれば、関わる人間だけでなく、犬をも不幸にしてしまいます。


これを読み大袈裟だなあと思う方は、きっといつまでも「犬と対峙する覚悟」は身に付かないでしょう。
犬は、それだけのことが可能な動物です。
愛情深く純粋で可愛い面と同時に、「ヒトよりはるかに強い動物」という面も常に持ち合わせているのです。

犬という生き物が持つ特性・習性・本能から目を逸らしたまま、「楽しい理想の光景」だけを求めて犬に関わるのは、犬にとって本当に理解されているとは言えません。

きっと社会化が未熟な犬も、これから飼い犬として幸せに暮らしていくために、飼い主さんと共に懸命に努力をしている犬なのです。
ヒトや社会と共存していくために、飼い主さんや家族と二人三脚で地道な努力を続けている犬かもしれません。

飼い主さんがふれあいを快諾しない時は、「そうさせるべきではない理由があるのだ」と察してあげて下さい。



飼い主さんの努力と犬の努力を無駄にしてしまう可能性がある要望は、ぐっと堪えてあげて下さい。
いつかその犬が、「正しく触れ合うことが出来る犬」になるまで、時間をあげて下さい。


また、いくら飼い主さんが
「うちの子は大人しいから触っても良いですよ」
と言ってくれたとしても、それは

「たまたま今まで何事も起こらなかった犬」だと解釈して下さい。
それくらいの解釈でちょうど良いのです。

安全というものに100%は、あり得ません。

飼い主さんも、そして「触っても良いですか」と声を掛けた側の人も、
「予期せぬ何かがキッカケで犬が『犬になる』可能性」は常に頭に入れておく必要があります。

楽しく触れ合っていたら急に晴れ空から雷の音がするかもしれない。
それにビックリした犬が、リードを持たせてもらったヒトや子供もろとも引きずって走り出すかもしれない。

その先が、道路かもしれない。


わたしは、犬と人との触れ合いを反対しているわけではありません。
「もしかしたら」を繰り広げて、「犬はこんなに怖いんだぞ」と脅すつもりもありません。

犬に真摯に向き合ってほしい、犬の将来を考えて欲しいからこそ、「考えられる危険(リスク)は考えておくべきであり無視すべきではない」と思っています。

見知らぬ人や犬と触れ合う経験を積まねば、犬の社会化も進みません。
少しの訓練で社会性を身に着ける犬もいれば、持って生まれた気質や性格で生涯飼い主以外を拒む犬もいます。
どんな飼い犬も、飼い主さんと共に努力した結果、今があるのです。

初対面の犬とふれあうとき、あなたの目に映るのは一匹の犬とその飼い主でしょう。
あなたの目に映らないものの中に、飼い主さんとその犬のこれまでの努力、そしてお互いの未来というものが確実に存在するのだという事を、努々ゆめゆめ忘れずに、犬と関わってあげて下さい。


関わるという事は、ふれあう事とは限りません。
飼い主さんとその犬を思って距離を取ってあげることも、立派なふれあいの一つです。









いただいたサポートは執筆活動の大切な必要な費用として、大事に使わせていただきます。 書くことを続けられるよう、応援宜しくお願い致します。