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あなたを縛る心の症状。ひょっとして「囚人症候群」では?

望んで産んだはずなのに……
社会から取り残された気分
誰も私を理解してくれない
女性の生き方が多様化する中、お母さんになったことで子育ての悩みに打ちのめされ、自分を見失ってしまう女性がいます。ママたちを追い詰める原因は何か。そしてその解決法は? 心の処方箋をご紹介します。
お話を伺ったのは
マザーリング&ファミリーナーシング研究所 所長
たけながかずこ先生
東京大学医学部附属看護学校卒業。東京大学医学部附属病院接遇向上センター顧問。女性の健康問題をサポートするトークサロン、カウンセリング活動を展開。仕事を続けながら3人のお子さんを育てた経験もある。

「みんながやっていることのはずなのに、
私はうまくいかないことばかり。
こんなことなら子どもなんて
産むんじゃなかった」

「自分だけ出歩いて
気が向いたときだけ
子どもの相手をする夫。
そんな人に食べさせて
もらっているなんて……。
考えただけでイライラします」

「子どもを産んでいない友人の輪には戻れず、
産んだ人たちの輪にもなじめない。
私は何をするために
子どもを産んだのだろう」

「子育てに自信がもてません。
でも私だって、愛情深く
育てられていなかった……」

「企画力も営業力も人脈もあった私が
今は子どものおむつを替えてごはんを食べさせ、
遊び相手をして寝かしつける日々。
これって本当の私なの?」

【原因究明】対処法を知らないと赤ちゃんに影響も。育児中に感じる孤独は「囚人症候群」の症状に似ている

あなたのイライラは本当に産後うつ?
赤ちゃんを産んだばかりの女性は、多かれ少なかれ、「産後うつ」を経験します。これはホルモンバランスの急激な変化がもたらす生理現象で、産後1~3カ月でよくなるのが一般的。個人の性格によって回復までの時間に差はあるものの、大体は自然と治っていくものです。
それなのに、いつまでも鬱々とした状態が続いたり、孤独にさいなまれたり。なかには「こんなふうに思う私は母親失格なのではないか」と行き詰まってしまう人もいます。実はその原因は、ホルモンの変動とは別にあることがわかってきています。

その心のストレス、囚人症候群の症状では?
さて、下のチェックリストに目を通してみてください。これは人間が拘束された条件で生活を強いられた場合に起こる《囚人症候群》の発生原因で、囚人はもちろん、船や研修場、孤立した海外の建設現場などで働く人々、そして育児中のお母さんにも多く見られる症状です。

【囚人症候群チェックリスト】
当てはまる項目にチェックを。数が多い人ほど、囚人症候群の可能性大。

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〈意思に反した拘束〉
□仕事をあきらめて家庭に入った
□子どもを産んだことを後悔することがある

〈自由行動の制限〉
□出産後、一度も旅行や遠出をしていない
□子ども2人だけで出かけるのは苦痛だ

〈プライバシーの欠如〉
□今のところ、子どもの世話は自分しかできないと思う
□結婚・出産後、ひとりの時間はまったくなくなった

〈個性の消失〉
□最近もっぱら、ママ友としかつき合いがない
□子どもができる前の自分は今より輝いていたと思う

〈快適な社会生活からの隔離〉
□雑誌やテレビを見るにつけ、社会から取り残された気分になる
□夫が飲み会などで遅くなるとイライラする

〈家族との断絶〉
□頼れる人が近くにいない
□夫は自分への理解が足りないと思う

〈金銭の排除〉
□今、夫に食べさせてもらっていると思うとイヤになる
□夫や親族が、自分が外で働くことに後ろ向きであるようだ

〈規則への服従〉
□つい、よき妻、よい母親を演じてしまう
□自分は夫と子どもに縛られていると感じることがある

〈変化の乏しい食生活〉
□子どもの世話に手一杯で、自分の食事にまで気がまわらない
□外食するのは疲れる

今のお母さんたちは子どもを産む以前、自分で働いてお給料をもらう生活をしていたことと思います。自由な時間、自由に使えるお金があり、自分で考え、行動してきたはず。そんな女性が突然今までと異なる状況で生活しなければならないとしたら、精神的にまいってしまう人がいても当然です。
本人の意思に反して自由を奪われる状況では、男女差や年齢差、その人自身の資質とは関係なく、心に大きなストレスをもたらします。

出産は、新しいライフスタイルをつくるチャンスでもある
悩みを抱えるお母さんの多くは、子どもをもった幸せを受け入れつつも、それまでとはあまりに異質な「育児」という世界にとまどっています。家事や育児に協力しない夫、次々に起こる子どもの変化、育児に縛られすぎて自分の時間が持てないという不満、自分の収入がないという悲哀、社会から取り残されるんじゃないかという不安、自分なりに育てようとしているのに、親せきあるいは両親からの過剰な口出しに対する言いようのない怒りなど、自分ひとりでは解決できそうもない問題が一気に押し寄せてきて、ノイローゼのようになってしまっているのです。こんな状態で混乱し、自分を見失ったままでは子育てはできません。
大事なのは「じょうずに悩む」ことです。問題が起きたらあまり深刻に考えず、「これは重要だから改善する」「これは無視」「これは手抜きしよう」「これはあの人に相談」「これは夫に任せる」というように、悩む前に整理し、どんどん決断していく。そうして、次々起こる問題に翻弄されない生き方を身につけていきましょう。
あなたは今、結婚して赤ちゃんを産み、今までとは全く違う生活をスタートさせたばかりです。精神的につらくなるのは誰にでも起こる当たり前のことだと理解したうえで、バージョンを切り替え、新しい生き方を探していきましょう。

10代と30代では世間の見方もこんなに違う

〈10代〉
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〈30代〉
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ビジネスの世界に慣れている女性ほどとまどいも大きくなる
囚人症候群の症状が出やすいのは、圧倒的に20代後半から30代の女性です。理由は、一度大人の社会、大人の論理、大人の楽しみを知ってしまうと、子どもの世話や子どもに関する話題、子ども相手のおしゃべりだけでは物足りなさを感じてしまうから。
しかも、子育ては仕事のようにスケジュールどおりにはいかず、評価してもらいづらい世界です。誰でも育児の初心者のはずなのに、年齢が上の女性ほど「子育てして当たり前、できて当たり前」と周囲から見られてしまうのも、お母さんを追い詰める原因のひとつになっています。

〈ビジネスプラン〉
予定的・計画的

計画的に物事が進むと快感

評価される

結果が出る

〈ファミリープラン〉
予定は未定

思うように進まないので不快

評価されにくい

結果が見えにくい

葛藤

【問題解決】心の拘束を解くカギは「3つの輪メソッド」

効果的なストレス発散で生き方じょうずになろう
囚人症候群の対処法は、下の図2つしかありません。育児中のお母さんの場合、ストレスの原因は夫や義父母、自分の両親や赤ちゃんということになりますが、どれも自分の意思で排除することはできません。この場合の対処法は、いかに効果的にストレスを解消するかにかかっています。ストレス解消の方法は何でもいいのですが、できれば、一時でも赤ちゃんを実家の両親や託児所に預け、ひとりの世界、あるいは夫婦の世界を持つことが理想です。

〈囚人症候群の対処法〉 
□ストレスの発生原因の除去(子育て中のお母さんの場合、ストレスの原因そのものを取り除くことは難しい)
□効果的なストレス解消の技術を持つこと

Column:女性と男性、ストレスに強いのはどっち?
人間の脳にはさまざまな感情を情報として流すパイプがあります。女性は男性よりこのパイプが太く、その分、喜びや悲しみ、不安や怒りといった情報を一気に、より多く流すことができる仕組みになっています。
その反面、ストレス関連の情報が増幅されやすく、そのたびに心身の不調という形で脳が危険信号を発信。ストレスが大きくなりすぎるのを防いでいるのですが、これは、ストレスに対するセンサーが男性よりも発達しているから。その意味で、女性は男性よりも、ストレスに強いといえるかもしれません。

自立したお母さんになるための「3つの輪」
私たちは仕事、あるいは家事や育児を単調に繰り返しているだけではおもしろくありません。また、ひとつのことにしか関心が向かないような生き方はストレスに弱く、それがうまくいかなかったときに、パニックに陥りやすいということも覚えておいてください。そこで重要なのがバランス感覚。その支点は、家族、ビジネスとしての仕事、興味・ボランティアの3つの輪に置くべきだと私は考えています。
この3つの輪は、人によって、あるいは人生の場面によって、分量が違っていてもいいのです。子育ての時期には家族の輪が大部分を占めますが、そんなときでも、ビジネスや興味の輪をゼロにしないこと。これは趣味や仕事がなくても全然平気!という方の場合も同じです。お母さんの多面的なものの見方、考え方は、子どもにとっても、とても大事だからです。

〈3つの輪メソッド〉
3つの輪のそれぞれを、わずかずつでも実行していると、これらは相互に協調し合ったり、レベルアップするいいきっかけになったりします。

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趣味・ボランティア脳
今すぐできることは
●好きなことに熱中する時間をつくる
●ボランティア活動などに参加する
興味の世界では同じ気持ちの仲間がたくさんでき、純粋に心をリフレッシュするいい機会です。またボランティアは社会的に自分が役に立っていることをストレートに実感でき、社会との絆を目に見える形で実現できます。

ビジネス脳
今すぐできることは
●新聞を読む
●昔の人脈をつないでおく
●昔の会社の同僚と食事に行く
●家でできる仕事を探してみる
●パートに出る
いろいろな情報が渦巻く職場は社会の窓です。こういう場に週に何日かでも身を置く時間があると、心が引き締まり、生きているという実感を得られます。わずかでも報酬が得られるのも、心の安定につながります。

家族脳
今すぐできることは
●子どもを慈しみ育てる
●夫と良好な関係を築く
家庭は“評価”がない分、純粋に人間的な、深いつながりを感じあえる世界です。このような世界を持つことで心のよりどころが生まれ、人生をより豊かに生きることができます。

人生のステージによって3つの輪の形を変えると、柔軟に生きていける
例えば……
独身時代:仕事を思いきり楽しむ時期

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育児期:子育てしたり家庭をつくる時期

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