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【院長ブログ】日本頭蓋健診治療研究会第4回学術集会でのヘルメット治療中のお母様の発表で感じたこと

 去る11月6日土曜に、私も理事を務めさせていただいている日本頭蓋健診治療研究会の第4回学術集会が開催されました。数多くの小児科医や医療関係者の方々にオンライン参加していただき、盛大な会となりました。

この学術集会では、以下の演題が順次講演されましたが、ヘルメット治療を行っている立場からは大変多くの事を学ぶことができました。

(1)水主川純 先生 東京女子医科大学産婦人科准教授 「胎向と出生後の向き癖」

(2)内尾優 先生 東京医療学院大学 保健医療学部リハビリテーション学科 助教 「早産児に関する頭蓋変形」

(3)藍原康雄 先生 東京女子医科大学小児脳神経外科准教授 「頭蓋健診ハンドブックのご紹介」

(4)患児親御様 治療を経験中の患児の親御様 「頭蓋健診と頭蓋治療の経験談」

*日本頭蓋健診治療研究会について、
この研究会は、「頭蓋健診と治療に関する会員相互ならびに内外の関連学術団体との研究連絡、 知識の交換、 提携の場となることを通して、頭蓋健診と治療の進歩普及に貢献するための事業を行い、学術文化の発展と頭蓋健診と治療の向上に資することで、国民の健康と福祉に寄与する」ことを目的として、2020年10月に発足したものです。
現在、乳児頭蓋変形の診断や治療に携わる、小児新生児科医・産科医・助産師・脳神経外科医・小児外科医・形成外科医・矯正歯科医・理学療法士などを中心に活動を行っております。

ご興味ご関心をお持ちの方は、以下U R Lよりご覧ください。今回を含め、今までの本研究会の学術集会の動画もご覧いただけます。
https://www.jcmets.org/

さて、今回の発表の中で、非常に印象深かった発表内容がありました。それは、演題(4)患児親御様からのヘルメット治療を経験中の貴重な経験談の数々です。

その中には、医療機関に従事されている現役の医師や看護師でもある親御様もいらっしゃいました。

演者である看護師の方が痛切に訴えておられたのが、

『(赤ちゃんの頭のゆがみについての)「大丈夫。自然に良くなるから」』は本当?

ということでした。

その方は、生後2ヶ月からお子様の頭のゆがみに悩み始め、インターネットやSNSで「頭蓋変形」を何度も検索され、まずは自分自身でできることをとにかくやってみたそうです。頭のゆがみが測定できるアプリを使用したり、寝る時の頭の向きを工夫したり、頭の形がよくなると言われている枕を使ったり、とありとあらゆる手を尽されていました。

ただ、一向によくなる兆しが見えず、友人でもある医療関係者に相談したところ、

“頭を丸く撫でていれば治る”
“成長したら治る”

との返答でした。

そこで、意を決して、地域の3〜4ヶ月健診の際に、医師に相談したところ、

“そのうち治るから気にしなくていい”
“反対の向きに寝かしつければ治る”

との答えしか返していただけなかったとのことです。

これらは、どれも科学的な根拠があいまいな答えであり、どうしても納得が行かなかった親御様は、小児科の先生から「専門の先生がいるから」、と紹介状をいただいて専門医の診断を受けたところ、「クラス4(最重症)の斜頭症」と診断されたため、ヘルメット治療を決断されたとのことでした。

実際に「頭のかたち」の専門クリニックで診療を行っていても、親御様からこのようなお話し聞く機会はしばしばあり、おそらくこのような経験をお持ちの親御様は、まだまだ世の中にはたくさんおられるのではないかと考えます。

それと、同時に「頭のゆがみは気にするな、放っておけば自然に治る」という誤った認識に基づいたアドバイスにより、「大丈夫」だと信じてしまって、実際には自然には歪みが治らない状態になって1歳を過ぎ、治療が難しくなってしまったお子様が日本全国で少なからずいらっしゃるのではないかと、非常に強く感じました。

「頭のゆがみは気にするな、放っておけば自然に治る」という、ある意味では「迷信」を過去のものとし、「頭のゆがみに対する正しい医学的な知識」に対しての認知を広げていくことの重要性を、今回の親御様の発表を通じて再認識した次第です。

0歳からの頭のかたちクリニックへ

東京クリニック 院長 田中一郎