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乳児の頭蓋変形についてChatGPTにきいてみた

 0歳からの頭のかたちクリニック東京で金・土・日曜外来を担当している形成外科医の梶田です。
 私は慶應義塾大学の理工学研究科にも籍をおき、医用画像の解析に関する研究にも携わっています。
 
 近年のAI技術の発展には目覚ましいものがあります。あたまの形の診療に関しても、いろいろなAI技術が用いられた報告や論文が見られるようになりました。今回は、話題のChat-GPTに、赤ちゃんの頭の形に関する質問をしてみました。
 多くの人の参考になるよう、無料の Default (GPT-3.5) を使用しました。なお調査は2023年9月8日に行いました。
 まずは、AIに医療に関する内容を質問する際の一般的な注意事項を確認してみます。

 KH(梶田)
Chat-GPTで医療に関する質問をする際の注意事項を教えてください。

ChatGPT
Chat-GPTを使用して医療に関する質問をする際には、以下の注意事項を守ることが重要です。医療の専門家ではないため、情報提供のみを目的としており、正確な医療アドバイスを提供することはできません。

1、医師の意見を優先する:Chat-GPTの情報は一般的な知識に基づいており、具体的な医療状況に合わせたアドバイスではありません。医療の問題がある場合、必ず医師や専門家の意見を仰ぎましょう。
2,情報の正確性を確認する:提供された情報は一般的なものであり、最新の医学的知識を反映していない可能性があるため、信頼性を確認するために複数の信頼性のある医療情報源を参照しましょう。
3,緊急の場合は医療専門家に連絡する:医療的な緊急事態が発生した場合、即座に緊急医療サービスまたは医師に連絡し、Chat-GPTに依存しないようにしましょう。
4,個人情報の保護:個人的な医療情報や識別可能な情報を提供しないようにし、プライバシーを守るために注意しましょう。
5,より具体的な情報を提供する:質問をする際に、症状、病歴、治療履歴などの具体的な情報を提供すると、より適切なアドバイスを得る可能性が高まります。
6,アドバイスを総合的に考える:Chat-GPTのアドバイスは参考情報に過ぎないため、病状や治療に関する重要な決定をする際には医師と協力し、複数の情報源を総合的に考慮しましょう。
7,リスクと責任を理解する:Chat-GPTを使用した情報に基づく行動は自己責任であり、その結果に対する責任はユーザーにあります。
8,症状が悪化する場合は医師に相談する:Chat-GPTのアドバイスに従ったにもかかわらず症状が悪化する場合、すぐに医師に相談しましょう。

医療に関する質問は重要ですが、安全と信頼性を確保するためには慎重に行動することが大切です。 Chat-GPTは情報提供の補助として活用し、医療専門家の意見を優先させましょう。

かなり適切な内容が返ってきました。ネットで収集した情報を信じ込むよりも、個別の状況を踏まえた信頼のおける専門医の判断を仰ぐほうが良さそうですね。
 
次に赤ちゃんの頭の形について聞いてみます。色々なトピックが考えられますが、今回は包括的に以下の質問を投げてみました。

KH
あなたは乳児の頭蓋変形の専門家です。 赤ちゃんの頭の変形が気になる保護者に向けたアドバイスをください。

ChatGPT
赤ちゃんの頭蓋変形は、多くの場合、一時的で治療の必要がないことが多いですが、保護者として気になることは理解できます。以下は、赤ちゃんの頭蓋変形に関するアドバイスです。

1,定期的なフォローアップ:赤ちゃんの頭蓋変形が気になる場合、小児科医や乳児の頭蓋変形に詳しい専門医に相談しましょう。定期的なフォローアップを受けることで、変化をモニタリングし、必要な場合に専門的なアドバイスを得ることができます。
2,タイミングを考慮:赤ちゃんの頭蓋骨は柔らかく成長中です。多くの場合、軽度の頭蓋変形は自然に改善することがあります。したがって、最初は焦らず、時間をかけて変化を見守りましょう。
3,Tummy Timeを推奨:赤ちゃんを寝かせたときに、定期的にお腹に寝かせる「Tummy Time」を行うことは、頭蓋変形を予防するのに役立ちます。ただし、赤ちゃんが目を離さないように監視しましょう。
4,プレッシャーを避ける:赤ちゃんの頭に過度な圧力をかけることは避けましょう。枕を使わず、頭を一定の方向に固定しないようにしましょう。
5,ヘルメット療法:重度の頭蓋変形の場合、医師からヘルメット療法が勧められることがあります。この治療法は赤ちゃんの頭の形状を調整するのに役立ちます。しかし、ヘルメット療法については医師の指導に従うことが重要です。
6,ストレッチとマッサージ:医師の指導のもとで、頭蓋変形を改善するための特定のストレッチやマッサージを行うことがあります。これについては専門家のアドバイスに従いましょう。
7,サポートグループ:赤ちゃんの頭蓋変形に関する不安や質問がある場合、サポートグループやオンラインフォーラムで他の保護者と情報を共有し、経験を交換することができます。

最も重要なことは、赤ちゃんの健康と発育をサポートし、医師の指導に従うことです。保護者として、赤ちゃんの頭蓋変形について適切な情報を収集し、適切なケアを提供することが大切です。

AIによってつくられたロボット画像たち(Chat-GPTとは無関係)

 すごいですね。

悪くないですが、専門医として気になる点があるので補足したいと思います。

 1. 定期的なフォローアップ:これはいわゆる乳児健診では不十分な可能性があります。健診の医師は必ずしも頭蓋変形に精通しているわけではありません。健診での相談後、少しでも不安が残るようでしたら、早急に乳児の頭蓋変形に詳しい専門医にも相談したほうが無難だと思います。
 
2. タイミングを考慮:これは「軽度の頭蓋変形」に限った内容です。中等度から重症の変形の場合、自然に改善する可能性は小さくなります。赤ちゃんの変形が「軽度」なのかそうでないのか、専門医でないと判断は難しい場合があります。ヘルメット療法を行う場合、タイミングが遅くなるにつれて治療効果が小さくなってしまいますので、なるべく早めに受診していただいたほうが良いです。
 
6. ストレッチとマッサージ:私自身はストレッチやマッサージの効果に関する知見がありませんので、肯定も否定もできません。国内には赤ちゃんの頭蓋変形に対する施術を行う治療院があるようですが、「医師の指導のもとで」施術が行われているのか、注意が必要かもしれません。
 
7. サポートグループ:他の保護者と情報を共有することは素敵ですが、赤ちゃん一人一人の性格や変形の状況は個別に異なりますので、他の保護者の経験がご自身のお子さんにも当てはまるとは限りません。また顔の見えない他の保護者の情報を鵜呑みにして事態が良くならなかったとしても、誰も責任を取ってくれません。

 
 他にも気になることを質問すれば、Chat-GPTはいくらでも答えてくれます。しかしその回答は、一人一人によって異なる背景や状況を反映したものでは無いと思います。もし不安や質問があるようでしたら、数多くの赤ちゃんの診療に携わった経験をもった信頼のおける医師に相談し、お子さんの状況に合った的確なアドバイスをもらったほうが良いと思います。
 
 私たちは、頭のかたちクリニックの専門医として、一人一人の赤ちゃんの未来を良いものにすべく、今後もAIに負けない価値が提供できるよう、精進してまいります。ぜひお気軽にご来院ください。

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東京クリニック 医師 梶田 大樹