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最後の忍道【意外と少ない和風ゲームの最高傑作】

1988年にアイレムから発表されたビデオゲームです。

同社は86年発表の「R-TYPE」以降80年代後半まで数々の良作を発表し続けました。

「イメージファイト」「ミスターヘリの大冒険」「迷宮島」「トンマ」「R-TYPEⅡ」「ドラゴンブリード」「Xマルチプライ」などなど何れも個性的な作品として記憶に残っています。

それ以前の作品が「快傑ヤンチャ丸」「妖獣伝」「スペランカーⅡ」「ロットロット」などだった事を考えると、まるで嘘のような密度を持っていると云えるでしょう。

この変革は「R-TYPE」の企画者が持ち来したものだと云われています。若さと情熱を持った彼が入社した事で新しい息吹が入り込み、中堅メーカーの惰性とも呼べる古い因習をなきものとしたのだと見れば良いのかも知れません。

実際に当時のアイレムからはゲーム開発にかける熱い思いや勢いが感じられました。一定水準以上の作品を連発すると云う意味では、一時期のナムコやカプコンにさえ引けを取っていないとしても過言ではないでしょう。

そんなアイレム黄金期の中にあって最高傑作だと思われるのが、本作「最後の忍道」です。

ゲーム内容は「魔界村」から発展して行ったジャンプアクションシューティング物のひとつだと云えます。

ゲームの世界では意外と珍しい純和風の世界観を遵守しているところが特徴的です。

8方向レバー1本、ショットとジャンプの2ボタンで自機を操作します。また武器選択ボタンを押す事で4種類ある武器を適宜使い分けて行く戦略性(攻略性)も持ち合わせています。

何れの武器も使い勝手が良い強力なものとなっているのですが、本作に独特なゲーム性を提供したのが「鎖鎌」の存在です。

「鎖鎌」は中距離攻撃用の武器となっていて、ショットボタンを押してレバーを回す事で(厳密には違いますが)自機の周囲を大きく回転すると云う特徴を持っています。攻撃判定も広く敵の弾まで相殺出来るメインの武器と呼べます。これにパワーアップの分身を2つ付ける事で画面内の敵をほぼ全て倒す事が出来るのです。

実際的には小ジャンプ大ジャンプを繰り返す中でレバーをぐりぐり回しながら進んで行くゲームとなっています。爽快感とテクニカルな技が同居して高いゲーム性を作り出す事に成功したと云えるでしょう。

ジャンプアクション物ではありますが、落下して死亡する場所などは皆無ですので、多少アバウトに進んで行く事も許された融通性を持っています。

自機は体力制の取られていない一発で死亡するシステムなのですが、敵に触れただけではミスになりません。敵の放つ飛び道具に当たるか、敵が刀を振るなどして発生した攻撃判定に触れて始めて死亡するのです。ここにも今迄にはなかったゲーム性の一端が隠されていると云えるでしょう。ミスしたように見えて死亡していないと云う状況がよくあります。

多少の乱数要素があるのも特徴のひとつに数えられると思います。敵の出現パターンは決まっているのですが、画面の左右または上下どこから出現するのかが分からないのです。この部分は当初は気にならないところではあるものの或る程度やり込んだ際に重要になって来る要素ですね。

面構成とグラフィック、音楽も非常に素晴らしい出来映えとなっています。しかし本作は難度の高さから一般に受け入れられず消えて行った不遇の末路を辿りました。

確かに意地悪なほど難しい場面も幾つかあるのですが、世間で云われるように激辛難度のゲームではないと思います。

どちらかと云うと制作者が今迄にないものをと気合いを入れて作った部分が裏目に出たのではないかと云う気がします。特に敵当たり判定の件はやり込まないと感覚的に理解し難いシステムかも知れません。PCエンジンに移植されたものはそのような反省を踏まえたのか体力制になっています。

それでもヒット作品となっていないところを見ると他に問題があるとも取れます。私の考えでは新しいルールが硬派な難度に隠されてしまい、アバウトに思わせる操作がゲーム性を感じ難くしてしまった……こんな辺りではないでしょうか。

現在に遊べる環境をお持ちの方には是非ともお薦めしたい作品のひとつです。攻略サイトやリプレイを参照にやり込む事で、本作の魅力が自ずと判然するのではないかと思います。

2005.04.05

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