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宇宙戦艦ゴモラ【一流と三流の境目】

1991年にUPLから発表されたビデオゲームです。

開発元はNMKとなっていますが藤沢勉氏の作品だと思います。ここら辺の詳細は分からないので知っている方がいらしたらお教え下さい。

本作もかなり風変わりなゲームとなっています。

基本的にはサイドビューの横スクロールシューティング物なのですが、自機性能と操作方法が斬新です。

8方向レバーと2つのボタンで操作します。

ボタン1が通常ショット。ボタン2が自機固定となっていて、これを押している間は照準を移動させる事にレバーを使用するようになります。そしてボタン1を押すと敵弾まで相殺可能な強力レーザーを打つ事が出来るのです。

要は「SDI」の照準移動ショットを自機移動不能とする事で可能としたシステムだと云えるでしょう。特殊なインターフェイスを使用せずともアイディアだけで同様の効果を入手しようと腐心したが結果であると思われます。

また自機は体力制を伴った残機制が取られています。パワーアップする事で巨大化して行くところも新しい部分です。

非常に丁寧に作られた良作だと感じますが、独特な操作方法とそこから生ずる難度の高さから一般に支持される事なく消えた作品でした。

しかしヒット作と成り得なかった原因はそれだけではないと云わざるを得ません。

藤沢氏の企画は何れも斬新で業界へのアンチテーゼを含んでいるものが殆どなのですが、その真摯な思想とは裏腹にゲームとして上手く成立されていない事も多いのです。

誤解を恐れずに云ってしまうと、アイディアは一流なのだけれども、それを纏める事に関しては三流な企画者だったのではないでしょうか。

本作は氏の弱点を研究するには恰好なテキストとして機能してくれています。

もう少し細かく検証すれば、氏の斬新なアイディアとは内容の末端近くに位置する些細とまでは云わないまでも、根本を変革するほどではない発想であるとも取れるのです。

または斬新を効果的にコーディネイト出来ない企画者であるとも云えます。

本作の売りとなるべき照準レーザーシステムを活かすのであれば、敵のアルゴリズムや攻撃方法とマップ地形もそれまでのゲームにはなかったものとする必要があります。巨大化する自機も売りのひとつですが、これもゲーム内で効果的には使われていません。

結局は今迄にもあった横スクロールシューティング物に組み込まれているに過ぎないのです。

これでは素晴らしいアイディアもちょっとした装飾程度にしか機能しないのと一般であると云えるでしょう。

私は個人的に氏のファンですので、そのアイディアやゲームに対する思想スタンスには非常な敬意を払っています。それだけに本当に残念に思えてしまうのです。

もし氏が大手メーカーに在籍し最新のハードでゲームを作る事が許されていたら……もし現在のようなプロデューサーシステムが完成されていて氏を操舵出来る人物がいたとしたら……多作な氏の事ですからきっと素晴らしい作品を量産し続けてくれた事でしょう。

しかしそれも適わぬ願いとなった今、私達は氏の遺した歪んではいるけれども輝き続ける作品の数々を儚く思い描く事しか出来ないのです。。

2005.04.02

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