アクロバットミッション【斬新の不完全燃焼】
1991年にタイトーから発表されたビデオゲームです。開発はUPLとなっています。
UPL社のゲームらしい独特なシステムと世界観を持った強制縦スクロールシューティング物です。
自機を8方向レバーで操作しショットとボムの2ボタンを使用します。
ショットは前方に強い扇状に広がるウェーブと、自機の周囲を防御するように旋回してから前方に発射されるハリケーンとの2種類から成っており、パワーアップアイテムを入手する事で選択する形が取られています。それぞれ4段階までのパワーアップが可能ですが、極端に強くなる事がないバランスが良く出来ています。また、どちらのパワーアップを選んでも特に有利となる事がありません。好みに応じてと云った感じで使用出来ます。若干ハリケーンが使い易いかなと云うレベルですね。
ショットボタンを押し続ける事で溜め撃ちも可能となります。完全にチャージしないと発射出来ないのですが、敵弾も消し去る強力な攻撃を持っています。しかし如何せんチャージ時間が長いようにも思えます。ここは敵の出現位置を憶える事で許容出来るとしても、パワーアップアイテムを入手してからでないと使用出来ないのは不親切なところです。
最弱状態やミス復帰後の救済措置となっていない溜め撃ちでは、その真価も疑われてしまいますね。
自機が敵に触れてもミスとはならない部分は新しいゲーム性を提供してくれています。
その際に鳴る金属音も斬新な感覚を与えます。しかし、これと云ったシステムとの連動がないのは残念でもあり勿体ない感を募らせます。もう少し敵に触れる事を前提としたステージ構成があっても良かったのではないでしょうか?
自機は敵弾に触れて初めてミスとなりますが、直ぐには爆発せずに5秒間の猶予が与えられます。その間は通常の操作が不能となり、煙を吐きながらランダムに蛇行する自機を左右への舵当てだけで操作する事になります。このもどかしい操作感は絶品に値します。その後、爆発した自機と飛び散る破片に当たり判定が生じますので、ダメージを与えたい敵に近付いた方が良いと云う攻略法が編み込まれているのです。
この部分が本作の最も目立つ斬新なシステムですね。どうせでしたらボム一発分程度の破壊力があっても良かったのではないかとも思えます。
自機の復帰後に画面上の敵を消滅させるシステムを持ったシューティングゲームは多く見掛けますが、これの逆パターンにしてしまうと云う意味です。納得感も充分に得られる筈ですが如何でしょう。
自機が移動する際に逆方向にバーニアの炎が出る演出が付いているのですが、これはグラフィック上の演出だけではなく、当たり判定も有していて敵を倒す事も可能となっています。倒した敵の点数が2倍になると云うサービス付です。
しかし、見た目に分かり難い事と、ショット一発分の攻撃力しか持たない事から殆ど目立たないシステムとなっています。面白いアイディアだと思えるだけに、もう少し絵として分かり易くしてテクニカルな印象を与えて欲しかった部分ですね。
このような斬新を多く含んだゲームなのですが、その何れのシステムも不完全燃焼のまま捨て置かれているように感じられます。練り込みが不足しているとも取れますし、新システムを活かす土壌構成まで考えられていないとも云えます。
ここらへんはUPLの作品が持つ悪い癖だと思います。自機システムにだけ腐心して後はお座成りと云ういつものパターンですね。
本作に限って云えば、斬新なシステムを多数搭載しているものの、何か売れ線を狙っているような衒いも見て取れます。斬新の中途半端がそう見せているのかも知れません。
個人的には好きな作品ですしリアルタイム時にはそこそこ遊んだのですが、人にお奨め出来るものではありませんね。このもう一歩と云う感覚が同社を倒産に追い込んだ疑うまでもない事実と云えるのではないでしょうか。
2005.09.28
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