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追悼

親しい友人が亡くなった。病気を患っていた訳でもなく、本当に突然の事で、嘘でしょ?嘘じゃないのかぁ、嘘でしょ?嘘じゃないのかぁ、を起きてる間は延々と繰り返している。まだ受け入れられずにいるが、友人や家族の言動や行動で嘘じゃないことを脳みそに叩き込んでいるような不可解な状態だ。

10年くらい前に知り合い、家族ぐるみで仲良くしていた。いつの間にか個人的に飲みに行くようになり、数年前までは毎週末に朝まで飲んでいた。初詣も夏祭りも何回いったか数えられないくらい。毎年大晦日はみんなで過ごして、いつもそこに居て、10年くらい前に知り合ったことが信じられないくらい、思えばもうほとんど家族だった。してもらったことばかり思い出され、その結果後悔ばかり出てくる。後悔って取り返せるものじゃないし無意味だと思ってたけど、いざとなるとこんなに後悔してしまうとは。自分でも驚いている。


一人暮らし貯金のため地元のスナックで働いていた時は、毎週必ず来てくれた。すぐに酔うくせにアホみたいに飲んで、最後にはいつも大声で名前を呼んで肩をバシバシ叩いてきた。調子に乗りすぎる時にはビンタした時もあった。お金が貯まった頃には家具家電の買い出しにも付き合ってくれた。何も考えてなかったわたしは、最初にカーテンや電気が必要なことすら分かっていなくて、呆れて笑われた記憶がある。何とかなるっしょ、と適当にブラブラしてIKEAでぬいぐるみを見てたわたしを正して、親身に買うものを考えてくれた。

何を申し出てもいいよいいよ、が口癖の、本当に思いやりの塊みたいな人だった。
一人暮らしを始めた後また繁華街のスナックで働くようになった時には、わざわざタクシーで往復してまで毎週末飲みに来てくれていた。
相談したいことがある、と呼び出した時には、「相手が分からない子供を妊娠したのかと思った」とまで言われ、わたしがいかにパッパラパーだと思われているかを知った。

サボテンが欲しい、と言うとサボテン屋さんに連れて行ってくれた時もあった。
わたしが面倒くさくなって疲れて帰りたくなってきた頃も、店中を回って、これ可愛いよ、これいいんじゃない、見てこれ変な形してるよ、と言って隅っこにあるサボテンを見つけて教えてくれた。
改めて彼の写真を探したが、一緒に撮った写真なんて数枚しかなく、あったのは食べさせてもらったご飯の写真ばっかりで、自分の愚かさに泣きながらふと外に目をやると、買ってもらったのに枯らしてしまったサボテンが目に入って、わたしは人の気持ちを踏みにじる本当にクソみたいな奴だと改めて思った。

周りからお前ら結婚しろと言われたり、何となくここまで良くしてくれるのは、と好意を感じてはいたが、そういう雰囲気になる度に無理とはっきり言っていたし、それを彼が笑って受け入れて、みたいな空気が浸透してきた2年ほど前、結婚しようと言ってくれた。一時期は結婚するならこの人かなぁ、と考えたこともあったが、当時好きな人がいて、何となくはっきりと言いづらく、他の理由をつけて断った。断った後はすっぱりと全く連絡が来なくなり、わたしも避けるようにしていたので、みんなが集まる大きなイベント以外では会わなくなった。

色んなことを振り返りながら、仕事が終わって眠るまで、毎日獣みたいな声を出して泣いた。こんなに止まらないものかと驚いた。人間の体って本当に水分なんだなーとジンジンする顔を触りながらうっすら思った。本当に突然の事だったから、これからは満足に会えてない人とも連絡を取り合おうと思った。伝えたいことはもっと伝えようと思った。会ったことがないひとの方が多いけど、これを読んでくれた皆さんの健康と、楽しく生きられる日々を心から祈っています。ほんとだよ。

訳あって葬儀には親しかった全員が行けず、最後のお別れは出来なかった。ある意味良かったのかなと思う一方で、実感が湧かないまま消えて過去形になるって、そんな寂しいことないだろ、とも思う。
ただ一つだけ言えるのは、知人という立場で遠目から理解したのではなく、まだ数人にしか知らせていない段階で知らされるほど仲良くなれた。だからこその悲しみなので、目を背けずに受け止める。どこに行っても居たから、これから出かける度に居ない実感が湧いて寂しくなるだろう。
コロナ禍で出歩けず、日常を実感しないで済むのはせめてもの救いだろうか。


過去のLINEを読み返していたら、わたしが豚触った後かき氷たべに行かん?と誘って変なクスリやってる?と聞かれていたり、ハロウィンの仮装に可愛い魔女の衣装を提案してくれて、わたしそんな可愛い系じゃなくてイカとかが良い~と言ってて、ちょっと笑った。お互いお笑いが好きだったので、金属バットのイベントにも連れていってくれた。良い関係だ。
今思えば副業等で寝る時間を削ってバタバタと毎日食らいつくように生きてたわたしを応援してくれていたのだろう。すっかり忘れていたが、節目節目にお礼もきちんと伝えられていた履歴があって、少しだけ気持ちが楽になった。
いっぱい遊んでくれてありがとう。あなたのご恩は忘れません。ゆっくり休んでください。


読んで頂きありがとうございました。

コーラ