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「月に憑かれたピエロ」に憑かれた僕(3)

「月に憑かれたピエロ」(以下「ピエロ」)は、オーストリアの作曲家アルノルト・シェーンベルク(Arnold Schönberg, 1874 - 1951年)による、アンサンブル伴奏付き連作歌曲(全21曲)です。

先にお断りしておくと、この記事は「ピエロ」の紹介記事・解説記事・ファン記事のどれでもありません。

なので、「ピエロ」自体について詳しく知りたい方は、こちらに川島素晴先生(作曲家・国立音楽大学准教授)の素晴らしい記事と演奏動画がありますので、そちらを御参照ください

正直、なんの曲でもよかったのかもしれませんが、僕は指揮を始めたころのある時期「書かれた音楽作品をどう読み、咀嚼し、音にするか」というプロセスにおいて、とても大事なことを、たまたま「ピエロ」という作品に教わったので、その話です。

僕がこのイカれた作品とどう出会い、どう取り組2み、これからどう向き合ってゆくか、というコボレ話。

※前回記事はこちら

9)そのrit.、なんで誰もやらないの?

ここにくるまでに、かなりのことをスコアがら読み取ることが出来てきた。

それとは並行して、もちろん、それなりの数のレコーディングを聴いてきたけど、その中で沸いた疑問がこの第3曲「伊達男」の2ページ目。

このページに書いてあるテンポ表記は

①etwas langsamer (6小節目)

②rit.(8小節目)

③langsam(9小節目)

④rit.(12小節目)

⑤Tempo(13小節目)

前提として、僕がここにおいて重要と思うのは、

-①より③が遅いこと(言い切りのLangsamだから)

-しかも③は「des schweigenden Dandys von Bergamo」とある。けっこー遅いべき。

-②は、③に行き着くためのrit.であること

-シェーンベルクにおける「Tempo」は、a Tempo とは限らない。im Tempoであるだけ。

しかし、どのレコーディングを聴いても④のrit.がない!

しかも、レコーディングによっては10小節目のピッコロに続くピアノに、謎の加速!

※ココ↓↓↓

今回この記事を書いてるにあたって、手持ちの「ピエロ」のレコーディングを聴き直したけど、やっぱりどれもピンとこない。。。

楽譜に書いてあること、ちゃんとやろうよ!

僕にとってここで重要だったのは、別にブーレーズ、エトヴェシェ、ラトルのようなマエストロ達のレコーディングより自分を高い位置に置くことではありません。ひょっとしたらマエストロ達には、僕なんかには到底気が付かない「rit.しない根拠」があるのかもしれないし、別にそんなことはどうでもよかったのかも知れません。

それよりも、それだけ自分の中で「こうでなければならない」というのが強まったことに対する驚きでした。

これでようやく決意にいたりました。

「ピエロ」、やってみよう。

昨日一昨日、うっかり更新を休んでしまいましたが、これからはチョットずつ書きます笑 

第4回に続く!

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