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フィルハーモニーに住んでたベルリン時代

2011-17年、僕は仲間に「フィルハーモニーの住人」と言われるほど、ベルリンフィルを始めとするコンサートに通いつめてました。

現在、無料で観られるようになっているベルリンフィルハーモニー管弦楽団の「デジタルコンサートホール

フランクフルトに来てからというものの、ベルリンフィルの演奏を聴くこともほとんどないので、昔聴いたコンサートを眺めて見てる最近。そしたら

いるわいるわ笑

6年以上、ベルリンというオーケストラ都市にいて、山のように音を浴びた話。

1)「演奏会に通わなきゃ意味がない!(?)」
2)初めてのベルリン・初めてのベルリンフィル
3)「お前、ひょっとして住む所ない。。。?」
4)先生がベルリンフィルで吹いているという状況
5)忘れられないベルリンフィル定期4選
6)忘れられないコンサート・オペラ選

1)「演奏会に通わなきゃ、ドイツにいる意味がない!」

これはもう、ドイツに行くにあたって日本の先生達に口を揃えて言われたこと。

「オーケストラ奏者になるには、オーケストラの音を知るしかない。」
「どう演奏してるか、その結果どう聴こえるか、徹底的に研究しろ」 
「だから、コンサートやオペラが常に聴ける大都市に行くべきだ。」

※今では、留学においてそれが必ずしも1番大事なこととは思わない。大都市でなくても、とってもいい先生がいれば、そっちの方がいい選択かもしれない。who knows! ともかく、僕は日本の先生たちの言うことを信頼した。

というわけで、ベルリン・ミュンヘン・ハンブルクなどの選択肢が目の前にあった。しかし僕はクリストハルト・ゲスリングという「こういう風にトロンボーンを吹きたい!」という人がベルリンにいたので、2010年10月、初めてベルリンへ。

ちなみにゲスリングという人はこういう人(1:57から、ソロが聴けます。)


2)初めてのベルリン・初めてのベルリンフィル

初めてベルリン音大でゲスリング先生のレッスンを受けて、その足でフィルハーモニーにベルリンフィルを聴きにいった。チケットは日本で予約すると高すぎたから、まぁその場で買えるだろうという無謀な感じで。

しかしチケットは売り切れ。それも当然、よりによってその週のベルリンフィル定期はサー・サイモン・ラトル満を持してのマーラー全曲演奏シリーズ、しかも特に定評があった「復活」だったのです。

その時のことが僕の昔のmixi(懐かしい笑)に書いてありました。

ある日ハンス・アイスラー音大(僕が受けるとこ)でクリストハルト・ゲスリング先生のレッスンを受け、学生2人のレッスンを聴講し、その足でフィルハーモニーへ向かいました。10月28~30日は、ベルリンフィルの定期公演でマーラーの「復活」をやっていたのです。

前売りチケットは日本にいた時からすでに完売で、ベルリンまで来ておいてまさかこれを聴きのがす手はない。

聞くところによれば、ベルリンフィルはいくら前売り完売してても、当日券が20枚ぐらい出るらしい。

ということで、それを目当てに行ってみたワケです。

ところが…

開演は20:00で、19:00にフィルハーモニーに着いた時にはもうすでに40人くらいの列が出来てました。


ベルリンを甘く見てた…(>_<)


ともかく僅かな望みにかけて、その列に並ぶことにしました。でもその列も全然進まないし。



もうムリかな…





と、そう思った時です。



優しそうな老紳士が僕の方に来て「このチケット、42EUROだけどどうかね?」と言うではないか。



42ユーロは日本円でいくら?

※42ユーロ=約5000円。

なんて全く考えもせず迷わず飛び付きました!!!!



ともあれ僕は本当に幸運なことにベルリンフィルのチケットをたった42EUROで手に入れ、夢にまで見た「カラヤン・サーカス」の中に潜入することに成功したのでした。

映像や写真でしか見たことのない世界に、本当に自分がいるのが信じられませんでした。


演奏会は、この世のものは思えんほどすごかったです。


観客は総立ち。


本当に涙が止まりませんでした。

(中略)


それにしても…



あのお爺さんは、結構な数いた当日券待ちの行列の中、なんで僕だけに声をかけてくれたんだろう。


はるばる遠方から来ただろう
若い東洋人の小僧が、

汚い楽器ケースを背負って
「買えるかな、無理かな」
ってソワソワしてる様子


あまりにも可哀想だったのかな(笑)

素晴らしいオーケストラと、素晴らしいお爺さんとの出会い

忘れられない1日です。

その「復活」は、CD化もされてます。

そして、僕は翌年の入試に合格し、晴れてベルリン・ハンスアイスラー音楽大学に入学、ベルリンに引っ越すことに。


3)「お前、ひょっとして住む所ない。。。?」

いいえ、あります。笑

それはベルリン生活1年すぎたころ、クラスメイトCarl-Philip(結構ベルリンフィルに通ってる方だった、現イェーナフィル団員)に言われた一言。

いわく「俺が聴きに来て、お前がいなかった事がない」

そう、ある一時期、僕は同じプログラムが3回演奏されてたら、3回聴きに来てたんです。

多分、それを初めてやったのは佐渡裕さんがベルリンフィルを指揮した2011年5月(ショスタコーヴィチ5番)。

たしか、ただ単純に日本人の友達がいっぱいベルリンにきてて、そのそれぞれに付き合っていった、とかそんなような感じだったと思う。

そこで気づいたんです。上手く言えないけど彼らが「3回演奏してたら3回違う感じになってる」ということに。

説明できないけど、これは面白い!!!

となって、他に用がないかぎり、

ゲネプロ(先生に入れてもらう)
コンサート(先生にチケットもらう)
コンサート(ポディウムを買う)
コンサート(立見席を買う)

みたいな事をしていました。

(ほかにも、アカデミー生のクラスメイトにチケットもらったり、いろんなことしました!)

4)先生がベルリンフィルで吹いているという状況

最初は、ただ単純に「楽しいから聴いてた」んですが、ゲスリング先生にオーケストラ曲を習っている中で、観察の仕方がかわってきました。

「さっきまでレッスンでマーラーの吹き方を習っていた先生が、ベルリンフィルでマーラー吹いてる所を聴く」わけですよ。これを研究しない手はない!

まず、ひとつ自分にルールを課しました。それは

ベルリンフィルの演奏会に行く時は、かならずスコアに(ザッとでも)目を通す。

トロンボーンが乗り番の時は、少なくとも先生のパート(1番)だけは吹いてから行く。

これは、我がアイデアながら、良かった!

おかげで、後々仕事で初めて吹く曲がきても「あ、これは一応もう知ってる!」と、余裕でリハーサルに向かうことができた!

もう少し勉強が進んでくると、

実際にホールで聴こえてる音と、吹いている席での聴こえてる風景は全然違う

ということが重要になってきて、出来るだけ1回は立見席(1番オーケストラから遠く)、1回はポディウムでトロンボーンセクションの真後ろ、というように聴くようになりました。

そこまでくると、もう止められなくなってしまいましたね。ベルリンフィル最強!

人生のある一時期、世界最高のオーケストラをまとめて聴けたことは一生の財産です。


5)忘れられないベルリンフィル定期5選

ランキングじゃありません!順不同です!ただの時系列!

1)2011年5月

クラウディオ・アバド
モーツァルト/ベルク/マーラー

いや、なんといっても、アバドとベルリンフィルの最後3年間を聴けたことは最高の財産です。翌年のシューマン2番、さらに翌年の(最後になった)「幻想交響曲」もすごかったけど、このマーラー10番アダージョは絶句だった。昔のmixiにこうかいてました。

こんなに透き通ったオーケストラの音が存在し得るのか?マーラー10番の「カタストローフ」の場面(不協和音がどんどん連なっていく)でさえ、オケが大絶叫しながらなお美しかった。

そして、アバドさんとベルリンフィルと聴衆の一体感。「一体感」という言葉が陳腐に聞こえるほどの一体感。まるで息をするように演奏していました。


ああ僕はこのまま
この音の渦の中に
溶けてなくなるんじゃないか

そんな感動を人に与えることのできる音楽家は、現在地球上に何人いるんだろう?

もうひとつ、僕が見逃さなかったこと。

定期公演2日目、曲の終盤で弦楽器がピアニッシモまで消えかかり、テュッティでgis mollをバーンと鳴らす通称「カタストローフ」の場。

アバドが1小節はやくフォルテで指揮した!

でも!

ベルリンフィルがこらえた!!!!

ベルリンフィルすっげーーーー。。。となった瞬間でした。

1)2012年12月

キリル・ペトレンコ
ストラヴィンスキー/シュテファン/スクリャービン

ペトレンコが首席指揮者に選ばれる直前(といっても3年も前)の定期演奏会。

明らかにオケのテンションがいつもと違う

っていうのをハッキリ覚えてます。なので、2015年にペトレンコが時期首席指揮者、って発表されたときに、みんなが「へ?誰???」ってなってた時に

あ、納得!!!!!

となってました。

※思い出す。ペトレンコが指名されたときに「無名の指揮者、ベルリンフィルに選出」みたいな記事がでで「どこが無名だよ。。。」と思った話笑


3)2013年4月

サー・サイモン・ラトル
ルトスワフスキ/デュティユー/ベートーヴェン

当時は知らなかったけど、昔から「ラトルの田園」は定評があったらしい。

後々彼はCD化もされたベートーヴェン全曲演奏もするんだけど、僕がわすれられないのはその2年前の「田園」。

おそらく、僕が最も演奏会を聴いた指揮者、ラトル。マーラー全集もほとんど聴いたし(いまだに、マーラー読むと「あのときラトル・ベルリンフィルがどうやってたかな」って思い出す)、その後もブラームス・シューマンツィクルス、シベリウスツィクルス、ベートーヴェンツィクルス、全部聴いたけど、その中でもこの「田園」が、すっごく僕の中に残ってる。

それから、このころゲスリング先生がどうやって吹いてるのか分かってきた時期でもあって、この「田園」でのアルトトロンボーン「待って待って待って待って待って。。。やっとHigh C!」っていうのが、最強にシビれたのもあります笑


4)2016年11月

トゥガン・ソヒエフ
フランク/ラフマニノフ/リムスキー=コルサコフ

(youtube、なし😭)

この「シェヘラザード」はすごかったですよ!!!

みんな知ってるハズの曲、もちろん何度も仕事で吹いたハズの曲

こんな曲だったのか!!!

となりました。機会さえあれば、ソヒエフが「シェヘラザード」をリハーサルをしているところをみたい!!!

5)2017年12月

ダニエルハイティンク
マーラー 交響曲第9番

引退しましたねハイティンク。。。

この演奏会は、もうなんの言葉もでませんでした。。。仲間たちは「なんもしてない、つまんない」って言ってたけどね。

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いかがでしたでしょうか?読み返してみると「コンサートいっぱい聴いたよ自慢」のような気がしてきますが笑 

これを機に、デジタルコンサートホールのアルヒーフを漁る指針にでもなれば、幸いです!

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