あなたは二階堂奥歯をご存じですか
今日は2023年4月26日です。
ちょうど20年前、まだ朝が来る前に二階堂奥歯はこの世から旅立ちました。それからもう20年も経ったことになります。
二階堂奥歯さんを知ったのは最近のことです。
南条あや系なのかな? とはじめは思いました。
南条あやさんのことはわりと昔から名前だけは知っていました。
”精神的に弱く、だけども愛嬌と文才があり人々を魅了したけれど儚く自ら散ったひと”
その方面には明るくなく、あまり触れないでおこうと思っていたのです。何しろ、インターネットに触れたときは私もまだ高校一年生くらいと多感な時期で、そういうのに影響されやすいと自分でも分かっていたのであえて触れないでおこうと思ったのでした。
なのではじめて二階堂奥歯という人を知ったときも南条あやさんのような人なのかなと思いました。
しかし私はもう30も越え、ある程度分別もつき、気分が落ち込む本や映画を見てもそんなに引きずられることはなくなってきたお年頃です。
自ら命を絶った、瑞々しくも繊細な心に触れても私はもう心を大きく揺さぶられることはないだろうと踏んで、彼女のブログを読むことにしました。
そうして、二階堂奥歯の八本脚の蝶のログを読み終えたのです。(ここからは敬称略)
彼女のブログは最初こそ、お買い物好きでお金の使い方が鷹揚で、お金持ちのご令嬢の少女っぽい世界で生きていたのですが(けれど彼女はとてつもなく賢い)、しかしそれは死と生の狭間を危なっかしく、ふらつく足取りでした。
ログを読み、彼女の才能と魅力に取りつかれた私は彼女の名前を検索し情報を漁りました。多角的に彼女を捉えようと必死になったのです。
実際の彼女は、つづる文章からは想像がつかないほどに明るくテンションは高めで「そうなんですよーうふふ」ときゃらきゃらと笑うのが非常に似合う女性だったこと。
いつも違う服を着ていて、その背景には様々なテイストとテーマとシチュエーションがあったこと。
(それはログの初期からでも分かる、20年前からパーソナルカラーについて言及し、己の美を追求していたのだから)
そんな魅力的な彼女は体調不良から転職後のパワハラに、世界のつれなさに、そぐわなくなってきてしまったんだな、という印象を受けました。
きっと彼女は働かず家で本を読み、お買い物を楽しんで紅茶なんかを飲む有閑な暮らしが合っていたのでしょうが、彼女はそれを良しとしなかったのです。
あくまで“普通“をやりたい、のような。
普通に働き眠り起きて働く……のような。
世間一般による“普通”をそつなくこなしたいのだと、そしてそれは彼女の悲願でもありながら、彼女の繊細な心と美しすぎる世界観によって無理な願いなのだと分かります。
彼女は完璧主義者なのです。
25歳という(まもなく26)、本格的に大人になる気配のあたりで居なくなったのは、すごく分かることでした。私もそのころ、結局何者にもなれなかったなあという子供っぽいことを思いましたし、そういうことに区切りをつけた年でもあったからです。
もう、このあたりなんでしょう。現実を見ていきますよ、のような。
けれど彼女は少女で在りたかったし、その世界に憧れが永遠にあったのでしょう。
彼女は25歳まで頑張って生きてきました。恐怖にのまれ、生きる希望を持ったとしてもそれには敵わなかったのです。
この辺りをやり過ごしたら違ったのになあ、と思います。
25歳からの5年を踏ん張り、30も過ぎたらもっと色々と諦められるけれど、諦めることが難しかったのか許せなかったのでしょうか。
と、20年経ってから知った大人の私はこんなことを言ってしまう。無責任が過ぎます。
彼女のつらさと苦しみへの理解は、永遠に彼女だけもので、触れてはいけませんね。
木地雅映子に言及し、あの作品を書いた彼女がもし今も生きているならどうやり過ごしたのか知りたい、けれど今は消息を絶っているらしい。
とあり、あの作品を書いた彼女すらこの世界から去っているのなら私も、という所があったのですが、木地雅映子は存命で、さらに2022年に木地雅映子は10年ぶりに新刊を出したりしていて、感慨深いものがありました。
奥歯さん、あなたがハッピーマニアのシゲタカヨコのこと話してるけど、今、ハッピーマニアを安野モヨコが描いているんだよ。なんと、シゲタカヨコは中年で、しかも離婚の危機だよ。こんな未来になっちゃってるんだよ。信じられないよね。
私は思う。彼女が飛び降りようと思ったとき、やっぱり恐怖で足がすくんでそこから立ち去ったらと。しぶしぶ、惰性で生きて何とか生き延びて、今はポケモンやあつ森とかをやっていてほしいな、と。(好きそうじゃない?)
残念だ、とても。という気持ちでいっぱいなのです。
彼女の文章をもっと読んでいたかった。はっとする文章、美しいことばたち、きれいな場面転換、有り余る知識と文才。もっともっとあなたの文章が読みたかった。そして大人になった奥歯さんを知りたかった。
(夏の描写とご実家の庭の話が特に好きだ)
今だったらどうなってるかな。twitterのフォロワー数すごいことになってそうだな、とか。
彼女がまだこの世界にいたころ、私も幼すぎる子供ではなく10代半ばで意志を持ってこの世界で生きていたし、彼女と生きている世界が交差していたことが不思議に思う。
彼女が行った場所に私も行ったことがある、見たことがある、知っている。知らないうちに足跡を辿っていたこと……けれどもう彼女はいないこと。
産まれた年からしたら奥歯さんは私より年上だけれど、もう私は彼女の年上になっている。25歳という年で彼女は永遠になったのです。
彼女が飛び降りた際、フェンスにぶつかり体が反転し顔は綺麗だったようです。
魅力的な人だな、本当に……と心から思いました。
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