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大相撲一人場所!

昨日の夕方、義母がそろそろとやってきて、私に向かって手を合わせた。
「明日、里芋掘るの手伝ってくれないかなぁ」
漢字ナンクロをやっていたのだが、手を合わせられた瞬間、その大げさな身ぶりにペンを投げ捨てたくなる。
「足が痛くて、一輪車を運べそうもないから」
「たいした量じゃないんだけど」
「明日は晴れるみたいだから」
「明後日は忘年会があってだめだし」
「どうもこの足が痛くて、一輪車を運べないと思って」
「たいした量じゃないんだけど」
「明日は晴れるげだ。ちっと降ってもできるろう」
「明後日は忘年会でだめだし」

ああ、延々いつまで続くんだろう。
ようやく口を挟む。
「いいよ、私も明日の午前しか時間がないから。やるよ」
と答えるが、それを言い終わらないうちにまた
「明日はちっと降ってもできるろうし、明後日になると私がだめだから」

一度言えば終わることを延々くり返す。
これって、どうにかならないんだろうか。
年を取ると、多かれ少なかれこうなるのだろうけども
あまりにもしつこくて、「わぁ~~~っ!!」となってしまいそうだ。

これだけ念を押すのに、晩御飯の時には一言も言わなかった。
きっと夫が一緒にいるから、言いにくかったのかもしれない。
「もう畑をやめること考えたら?」とまた言われるだろう。
先日、足が痛いと言ったら「医者に見せた方がいい」と強く言われたから、蒸し返されないように、里芋掘りのことはおくびにも出さないのだろう。


今朝も起きてくるなり
「今日と明日は晴れそうだね。明日にするか」というので
「私は今日しか時間とれないよ、今日やろう」という。
そこからまた
「たいした量じゃないんだけど、一輪車がね」
「この足じゃ、一輪車を押せないと思って」
「たいした量じゃないんだよ、今日晴れれば今日のうちがいいね」
「明日は忘年会で私はだめだから」

ああ、また始まる!と少しひるみながらも
「うん、今日がいいね、10時過ぎくらい?」
「うんそのくらいだな。
なにしろ足がだめで、一輪車が押されなくてさ。
たいした量じゃないんだけども・・・」

さすがにもう限界に近く。
「わかったから。同じことばっかり何度も言わないで!」
と、大きな声になって言ってしまった。
「ああ、かんべんかんべん。じゃあたのむよ」
とあっさり去った。

ああ、言っちゃったな。結局こうなって終わる。
自己嫌悪が広がる。
つくづく合わない。つくづく私はこの人が苦手なんだ。
そして、きっと義母は何もなかったように作業をするんだろう。
ケロっと、まるで無邪気に。
まあ、それで救われもするんだけど。

でもどうして、私が引け目をもたなくちゃならないの?
どうして私が救われたと思うの?
言わせられるまで、ほらほら、と押されているみたいな会話。
押しに押されて、気が短い私はまんまと悪者にされている。
しかもあちらは、私を悪者とも思っちゃいないだろう。

作業が終わるときっと
「ああよかったよかった、バクゼンさんに頼んでよかった。
なんせ足が痛くて一輪車が押せないと思って。
たいした量じゃないんだけどね。
今日が降らなくてよかった。
明日は忘年会でだめだから・・・」

今日は夕方まで言うんだろう。

耳を塞いでいたい!

ああ、このひとり相撲!!
バカみたい。

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