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ひえひえの虎馬

長男をショートステイに送り届け、ショッピングモールで眼鏡の調整をしてもらい、お昼はフードコートで軽く済ませることにした。窓際のお一人様席に座り、眼下の駐車場を眺める。
夏休みに入ったとはいえ、平日の駐車場はところどころ歯抜けのように空きがあって、少しほっとする。

昼食は銀だこにした。「青じそぽん酢」というのを頼んだら、おろし大根や刻みネギがたっぷり。味変用に胡麻油も添えてある。熱いたこ焼きの外側のパリパリと、刻みネギのサクサク、おろし大根の涼やかさに、ああこれにしてよかった!と満足する。
烏龍茶は冷たいのにした。この夏は、久しぶりに冷たい飲み物をおいしく飲んでいる。ずっと、ここ数年くらいは、猛暑でも冷たいものをお腹に入れるのが怖かった。

50歳を過ぎるころから、夏場に冷えるようになった。暑いのが苦手で、エアコンが大好きだったのに、急に冷えるのが怖くなった。
きっかけは、あるホテルでの会食の時、冷えすぎて食事がとれなくなったのだった。

わりと大掛かりなパーティーだったが、目の前に次々と出される料理に、まったく箸がつけられなくなってしまった。私の前には手をつけない料理がどんどん溜まっていく。
天井から降ってくる冷気に、頭も肩も冷え切り、お腹も背中も冷たくなって、多分、胃が動くのをやめたのだろうと思った。吐き気に耐えた。冷や汗が流れて、それでさらに冷えた。
お願いして借りた毛布を何枚も被り、ひたすら固まっていた。何やらナゾの毛布の塊が、その会場にこんもりとできていただろう。

7月、梅雨が明けた頃だったと思う。
帰路はホッとして涙が止まらなくなった。体が徐々に温まってきたせいでもあっただろう。車窓から入ってくる湿り気のある風に安堵した。

この時がトラウマのようになって、夏場はエアコンが怖くなった。暑いのも弱るし、エアコンも怖い。居場所に困った。

ある夏は友だちの家に数人でお泊り会があった。でもエアコンの屋内に居られなくなり、1人、縁側に出て足湯をし、また毛布をかぶり、夏の日差しの中、寒さに耐えていた。周りに心配かけている自分がいやになって、エアコンの季節は、いろんな会合やお楽しみなどに足を向けなくなった。


なんだったのかな。

それが改善傾向にある今考えると、更年期障害の一種の症状なのかなと思える。よく耳にする「火照り」などはなく、ホルモンバランスの変化による辛い症状などはなかったが、夏場のエアコンに負けるのが、きっと私の更年期障害の症状だったのかなと思う。

暑い季節に冷たい喉ごしの飲み物が飲めるのは、ほんとに嬉しい。
銀だこのあとは、しばらくモールを徘徊して、スタバでコールドブリューコーヒーを買った。

コールドブリューとアイスコーヒー、何が違うの?って以前娘に聞いたら
コールドブリューは水出しコーヒーだよ、と言っていた。コーヒーでもお茶でも、水出しは味に角がなくまろやかになるようだ。

飲みながら運転して帰った。去年までは暑い車内で熱いコーヒーを飲んで、猛暑にホットもオツだね、なんて思っていたけど、やっぱり冷たいのが飲めるのは嬉しい。

この夏は、アイスクリームも食べている。
うん、嬉しい。





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