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梅雨空のビリージョエル

シリーズ化する気はないんだけど(笑)

今日は長男をショートステイに送って行く日だった。
目を覚ました時はにっこり笑顔で、熱も平熱。
私は気分も軽く、いつもよりシャキシャキと動いた。

朝食の注入。歯磨き、着替え、オムツ替え。

さて、布団をあげてとなったとき「バタン!」
長男がよくやる、腕を床に打ち付ける音が。

これは不機嫌を意味する音なのだ。
気づかないふりで、表向き平静を装って出かける支度を進める。

バタン!がバタンバタン!になり
バタンバタンバタンとしながら
だんだんと体をずらして、布団からはみ出し
床ににじり出る。

このくらいになると、痰の上昇も多く頻回の吸引になる。
それでもかまわず、寝返りを打ち、さらにまた仰向けになり
部屋の隅から隅まで、ぐるぐると回りだす。
痰もヨダレも床に落とし放題だ。

私は内心ではそうとうなパニックになっている。
でも、ここで声に出すと、さらに長男の興奮に拍車がかかる。
無言で、危険をよけ、汚れを拭き、吸引をする。
興奮について回る。

押さえようとしたり、なだめようとするのは
火に油を注ぐだけだ。

食事中の次男も、何事もないように食べ続けながら
こちらに目を配っているのがわかる。

汗だくになるから、着替えは途中でやめて、肌着のまま。
髪の毛は汗でくっつき、シャツは肌にへばりつき
お腹の胃ろう部のガーゼには血がにじむ。

止まらない興奮に怒っているように見える。
「なんでこうなるんだ、なんとかしてくれ!」と。

30分ほど騒ぐと、雷がだんだん遠ざかるように収まって行き
次男と一緒に車いすに乗せた。

髭剃りをする頃には、笑顔が戻る。
ああ、よかった。
自分が一緒になってパニックに陥ることが何よりも怖かった。

過去に何度も経験した。
手も出る。足も出る。言葉の暴力もふるう。
そのたびに自己嫌悪に沈んだ。
そばに次男がいたことが、抑止力になったかもしれない。

手の付けられない状況とはいえ、無力な人に対しての
浅はかなふるまい。
過去のみじめな自分がフラッシュバックする。


車に乗って出ると、湿っているけど涼しい風が入って来て
ふっと我に返った気持ちになる。

よし、出発だよ。

さて、今日もまたBGMは、ビリージョエルでいいのかな。
ここのところずっと、飽きないのか、聞いてくれている。

いや、ほんとは、ゆずとか、髭男とか、
出かけた先では聞いているらしいけど。

きっと聞く場所で違うのだ、聞きたい曲が。
ドライブではビリージョエルで「かまわんよ」みたいだ。
変わり映えしなくて、しのびねぇな(古い?)

いつものラインナップではない、YOU’RE ONLY HUMAN を流してみよう。


そう、人間だもの。いろいろあるよ。
でも必ず、次の風が吹いてきて、きっと違う自分を発見できる。
今の状況から脱出できる。

どーん ふぉーげっちゅあー せかんうぃん!
セカンドウインドを忘れるな。

軽快なテンポにのって運転する。

やがてまた痰の上昇音がしてきて
吸引のため路肩に停車となる(いつもの展開)。
どうもこの曲ではないらしい。

JUST THE WAY YOU ARE ♬かな。
これは鉄板なんだろう。




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