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新しい曲がり角

「〇〇くんに適しているプログラムを提供できる自信がない」
「専門の療育を受けながら、〇〇くんに合ったペースで学習させては?」
地域の小学校の支援級に5年弱、母子通学をしたが、毎年、年度終わりには担任からこんなことを提案されていた。

正直なところ、私は長男に適したプログラムが学校から提供されることを期待していなかった。地域の学校へ行くのは、地元の友だちとの育ちあいが目的だった。
保育園から育んだつながりを就学によって断たれたくはなかったから、特別支援学校への編入は考えてはいなかった。

支援学級は毎年3~4名ほどだったが、車いすの長男は教室の後ろ半分に敷いてあるマットに横になったりして、授業に参加した。(3年生からは、私は傍を離れて待機する事が許された)

担任とは学期ごとに一度、進路や現在について話す程度だが、介助員は毎日の会話に自分の意見を挟んできた。自分の子育てに達成感を持っているのがわかり、私のやり方は納得いかないらしかった。長男のことを孫のように可愛がってくれるのは有難かったが、よけいな一言がいつもついてきた。

曰く、専門の教育を受けたら、もっと伸びるし、そのほうが〇〇くんも幸せだと思うよ。
母子通学なんて、お母さんの意地じゃないの?
〇〇くんが支援校に行っている間に、次男くんに関わってあげた方がいい。
等等々。

自信も確信もなかった私は、言われるたびに揺れたが、いや、ここでの時間は大事なんだ、友だちとの時間は「伸びる」よりも大事なんだと、それこそ「意地」になってもいた。
時々見受ける友だちとのやり取り。笑顔。友達の優しさや、長男が友だちを受け入れている視線。体に力がみなぎり、表情が生き生きとなる。
それらを探して見つけては、これでいいんだと安心できた。


低学年のうちは無邪気な交流があったが、学年が上がるとだんだんクラスメイトも教室に来なくなり、長男本人も退屈そうな、不機嫌な表情を多く見せるようになった。歌にも遊びや作業にも、乗ってくれない。
遊びに来ると思っていた低学年も、交流学年ではないためか、教室をちらちら見ながら素通りする。
だんだんと、「これでいいんだ」は「これでいいのか?」に変化した。介助員から言われる意見がますます憂鬱になった。もう無理なのかと感じるようにもなった。

夫は当初から、このことにはあまり異を唱えなかったが、本心では、どうしてそんなに地域の学校に行かせたいのか、(当時は)前例がないことをして周りを騒がせ、自分も母子通学なんて大変な思いをしてまで?と、私の気持ちを計りかねていたかと思う。
ずっと協力してくれてはいたが、「特別支援校へ行くのもいいんじゃない?」と、この機を待って表明してくれた。多分、夫は担任の言う事には何も違和感のない、療育によって「伸びる」ほうに価値をおく気持ちだったのだろう。
私はそれでも腹を決めかねたが、折よく?というか、巡り合わせなのか、3人目を妊娠したことで、特別支援学校への編入を決めた。



コッシ―さんのnoteを読んで、長男との記憶があふれて来て、回想記事を書いた。

子どもを育てていくことには、夫婦間であってもくい違いがある。
子どものことを親身に思っているのに。いるからこその。
まして、記事にあるような担任の先生のずれた励ましは、苦痛だっただろうなぁと、身に覚えがあり、胸が苦しかった。

私は母親としての責任感のつもりもあって、当時、強い言葉を使っていたと思う。担任にも介助員にも、夫にも。
そうすることで、お互いの価値観の食い違いを力づくで埋めようとしていたのかも知れない。
コッシ―さんのnoteを拝読して、担任にも、奥様にも、強い言い方を控えて、相手の言うことを尊重する態度を持しているコッシ―さんをすごいなと思った。

親の胸のモヤモヤはこれからもずっと晴れないと思う。
でも、子ども本人の成長が、きっとそれを変えていってくれると思う。
子どもだって、まわりの友だちだって、親だって、社会のしくみだって、いつも流動的だから。


特別支援学校では、長男は、とても開放的で柔軟な、素敵な先生方に出会えた。重度重複学級だったが、活発で笑顔が多い毎日で、もちろんいろんな日もありだが、そんな環境の中で長男は人を好きになれた(親が思うに、ですが)し、そのことは、現在の入所生活が穏やかであることにもつながっていると思える。
一言いえば十までわかってくれる親御さんたちとのお付き合いにも、恵まれた。
ありがたいことに、卒業後も話し合えたし、日中の支援事業所での親の会にもつながっている。



昔を思い出し、今いる地点から思っています。
こんな言い方は無責任だと承知の上で、息子さんの新しい進路を楽しんでみてはどうだろう、と言ってしまいます。
ごめんなさい、コッシ―さん。
お子さんの特性も、家族それぞれの事情もあるし、自治体によっても違うかもしれません。
・・・言ってしまって焦っています(;^_^A

うん、モヤモヤは続きますよね…

それでも、新しい角を曲がったら、何があるのかな。
大変な事もあるけど、必ず、光を感じる時があると思います。
安心できるご両親のもとで、息子さんは新しい環境を受け入れて行けると思うのです。


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