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デジタル時代の令和に浸るノスタルジー

竜の落し子【タツノオトシゴ】
ヨウジウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ亜科、Hippocampinae の海水魚の総称(ヒポカンパス:ギリシャ語のHippos[ 馬 ]、Campos[ 海の怪物 ]から由来)
全長18センチメートル以下の小形魚で、日本では形態が空想上の「竜」の子供を想像させることから「竜の落し子」と呼ばれている。中国語ではウミウマ(海馬)、英名はシーホース(海馬の意味)
体色は普通褐色をしたものが多いが、個体も変異に富む。

童心【どうしん】
① 子どもの心。子どもごころ。おさなごころ。
② 子どものような純真な心。無邪気な心。
Wikipediaより

あんなフォルムだけど、調べたらタツノオトシゴもちゃんと魚の部類らしくて、へぇぇ〜ってなる…固定観念に囚われるの良くないね。


男性ブランコのコントライブ『トコトコGOGOタツノオトシGO』

『タツ』と聞き、『GOGO』のフォントを目にした瞬間、某アニメプロダクションしか思い浮かばなかったわたしは昭和生まれ。
まずは観終わった直後の感想をひと言で書かせてもらう。今回のコントライブ、今年観た彼等の単独コントライブ公演の中で一番好きだった。

公演詳細は以下。

リアルタイムファミリーコンピューター世代(且つ今でもゲームで遊ぶ身)としては、童心を擽られる感じが心地良くて堪らなかった。その辺りもコントの感想を交えながら塩こしょうをひとつまみ入れる程度に書いていくことにする。
最近前置きが長いことが多いので、今回はサクッと感想書き始めます。

こんなヤツの感想でも気になるという酔狂な方はどうぞ。


開演前に流れるチップチューンのデジタル音を耳にし、「最高やん…堪らん」と、既に心を掴まれていた。あのメンコを模したキービジュアルにこのサウンド…ここに関しては転換や幕間の時まで抜かりなく一貫していた。こ〜れは相当にワクワクする、こういう音楽が好きな方やゲームが好きな方には堪らないだろうと思う(ツインビーやUndertail、星のカービィを思い出す)し、始まるまでのこの時間すらも最高だと思わせてくれる。そして開演直前、劇場の音声に切り替えられると、客席のざわざわとした感触がイヤホンを通じてブワッと聴覚を刺激する。少し緊張しながら、画面と向き合った。


OPのコント、いつも本当に面白いのだけど、特に今回の【ブティック】はオチまで本当に素敵で、わたしは完全にこのコントの虜になってしまった。

その店のオーナーらしき女性と、妹へのプレゼントを買いに来た男性の話。
平井さんが登場した瞬間、女性役が来るところまで来たなと思った。こういうベリーショートの女性は普通に居るし、地毛で女性役が成立する髪型は強みだと思う。全く関係ない話だが、個人的にはベリーショートに憧れがある(髪質的理由で出来ないが)
…あと黒いエナメルのベルト付きヒールがとても素敵だった。

「恋人2」はバレたら確実に修羅場ですぜ姉さん。
浦井さん演じるお客さんの髭、やけに違和感があるなと思いながら観ていたら、

「あの、もうひとつだけ、お願いをしても良いでしょうか?」
「お願い?何かしら?」
「……Xの棚の0077番をください

…この台詞とその後の緊張感を与えてくれる絶妙な間、本当に痺れた。このコントの舞台設定は英国なのだろうか。少なくとも一瞬、英国の店構えと街並みが見えたような気がする。
オコーネルの変装、顔は髭だけだというのに気付かないアマンダ…ちょっと抜けているのか、はたまたオコーネルが本当に変装の達人なのか。
そして、この単独公演が10分押す原因となった(らしい)口論の場面(ディラン&キャサリンが頭に浮かんだ)は、御二方とも本当にふざけにふざけていてめちゃくちゃ笑った。オコーネルが途中バグを起こしたロボットみたいになってたな…。

貴方っていつもそう。」…バディを組んでいた時期もあったのかもしれないな、など想像させてくれるこの台詞、素敵な女性が口にするとその言葉はある種の色気を放つ。
ハリウッド映画でよく目にする光景を濃縮還元したような、映画が好きな人には一度観てみて欲しいと思わずにはいられないコントだった。アマンダの「ドンとお任せください」の所のゴリラ感と、アナログ『マイノリティ・リポート』的な所作が個人的にツボ。
ところで、『しゃちこばる』と『いごこる』とはどういう意味ぞ…?『かしこまる』とかそんなニュアンスなのだろうかと思い、調べてみたらちゃんと出てきた。

しゃちこ‐ば・る【鯱張】
「緊張してかたくなる、からだをこわばらせる」


他にも意味はある様だが、コントの挙動から察するに、近いニュアンスの意味はこれが妥当だろう…しかし初めて聞く言葉だったな。因みに『いごこる』は出てこず…平井さんの造語だろうか。


【ブティック】の素敵なオチ台詞から暗転し、世界が明るくなる様なキャッチーな音楽が流れ、「あぁ、今日もまた素敵な時間がはじまったのだな」と実感し、心が湧き躍る。
OPV、過去作に散りばめられていたおしゃれな映像は気持ち少なめのように感じた。ライブ中に出てくるキーアイテムを除いても、隠し味のように差し込まれている程度で、割と控えめだったなという印象を受けた。その分、デジタルな素材や幾何学模様が多用され(ている気がしただけかもしれないけど)、観ているこちら側の視覚とワクワクを刺激し、グッと気持ちを押し上げてくれる。サンプラーの様なイラストや8bitフォントも使われたりしていて、今回は特に幕間VTRと共にテーマの地続き加減が分かりやすい。毎度映像の中に必ず登場するダブルメガネも健在。
幕間VTRは今までとは打って変わり『GOGO オトシゴちゃん』というRPG的映像…『オトシゴちゃん』という主人公の冒険を我々はただただ見守る。この映像が本当によくできていて、観ながらちょっと感動していた。最初期のポケモンを彷彿とさせる出会いから始まり、8bitの世界でオトシゴちゃんは出会いや困難に立ち向かっていく。ちょっとしっくりこない感じで幕間VTRは終わった様に思うのだが、一番最後にある意味合点のいく形でこの物語は幕を閉じる。

小魚を丸飲みしちゃうオトシゴちゃんを「心配になるね」と気にかける中の人かわいい。


女性の店員さんを前にしてカッコつけたいが為だけに、好きであるにも関わらず【ホットドッグ】にケチャップを付けることを断った男性と、その友人の話…なんと思春期男子のような純粋さを持った男か。
「あの店行きづれえぇ」がちゃんと繋がっているとはね…あと「友よ、」のくだりの温度差が大好きすぎる。

「キモ解釈をやめて」だったり「ずーっとスタート地点に居るのよあんた」だったり、浦井さんから発せられる台詞(台本なのだろうけど)の語感の良さも楽しめて、個人的にはかなりツボを擽られるコントでもあった。言葉とともにそれをアウトプットする際、平井さんは遊びの要素を、浦井さんはセンテンス毎のリズム感をそれぞれ重きに置いた上で言葉を選んでそうしているのかなと、最近のコントや漫才を観ていると気の所為かもしれないけれどそう感じる事がある…無意識か否か、その辺りは計れないけれど。そして御二方ともに、それぞれの形で言葉を本当に大事にされているのだなと改めて思う。平井さんがホットドッグを半分こしようとするところは、分かっているのに何度観ても爆笑してしまう。なぜそう割ろうと思ったのか。


今回のコントライブの中で、ほんのりと狂気じみていて好きだったのが【魔法の角砂糖】…同時にサカナクションの『エンドレス』という曲の歌詞を何故か思い出す…共通点は連鎖くらいだろうに。
喫茶店のマスターと、彼に愚痴を溢すお客さんの話…虫歯になるでアンタ。
明転した瞬間のあのシチュエーションは、既視感があってクスッとするけれど、根本的に違うお話。まさか、自分の言葉がきっかけで彼を闇堕ちさせてしまうなんて、マスターも思わないよなぁ。

人生って、思ったより辛いことの方が多いのかもしれませんね

辛いことの方が多いのかもという気持ち、分からなくもないかなとちょっと思う。ふと思い出す記憶は、辛かったり、あとは…黒歴史的経験の方が多かったりして頭抱えることもあるし(そういう事じゃないと思う)
それはそれとして、彼のこの一言。角砂糖に依存してしまうほどに、過去の経験で味わった辛い気持ちがどれだけ込められていたのだろうかとふと彼の胸中を推量してしまう…だって相当食べてたよアレ。この感覚を理解していない人間なのでよく分かってはいないが、『闇が深そう』とは多分こういうことを言うのだろうなとも思う。

角砂糖ひとつで自分を取り戻していた様子だったので大丈夫だとは思うが、これから先マスターまでもが深淵に堕ちないことを祈るばかりだ。


ある程度、年齢を重ねたおじさんふたりのピクニックこと【おじピク】…タイトルがかわいい。
『変身大阪ウミウシ』でやった【来ました】というコントを観た時にも感じた事だが、浦井さんが演じるおじさんの芝居、「こういう人本当に居るわぁ」と思わせてしまう程の説得力があり、ずっと見ていたい位に飽きない…本当に上手い。衣装の着方や台詞回し、声質も軽く変えたりすることによって、文章(台本)上でしか見えなかった年輪が具現化され可視化されるのだから、本当に凄いなと思う。そして御二方が演じるおじさん達は本当に可愛らしい。チャックのくだりとLINEあるあるの場面がめちゃくちゃ好き。情報が錯綜する前にLINE交換の時点で錯綜しているおじさんふたりが本当に面白すぎた。

そして引越しによる別れの物語は、いくつになってもあるのだなと改めて思わされる。
「お手紙って、もうっ、便箋選ぶとか楽しいやん!」
「ほなええやん」
のやりとりがおじさんの会話にしても可愛くて好き。テンポ感、分かるなぁ…それが手紙の良さでもあるとは思うけれど。
ミツクビアリクイと聞いて「ケルベロス的な…?」と思ったが、なんかそういう名前のアリクイが実際にいるんじゃないかと思って、実は後日ちょっと検索してみたりした(ちゃんと居なかったです)
奥様も同じスタンプ持っていて、それを旦那様に返すだなんて、タジマ夫妻の仲睦まじさを感じさせる瞬間が凄く温かく微笑ましいなぁと思うし、ナルオカさんと一緒にピクニックに行けなくなる淋しさをスタンプ連打で表現してて、タジマさんは本当に真っ直ぐな温かい心を持った憎めない人なんだろうなと思う。


大型家電量販店の店員と、お客さんのやりとりで展開される【家電探し】…引越し企画から構想を得たのかなと一瞬思ったりしたコント。ジェスチャーや目的を聞きお客さんのことを理解しようとしながら接客する小橋…真摯に向き合ってくれるこんな店員さんに、自分も接客してもらいたいなぁ。大型家電量販店のメリット、たしかに笑
日常生活に支障が出てしまうほどの発音を叩き込んでしまうバリヤバイ英会話教室こわい…そんな状態になってしまったら、思わず翻訳機が欲しくなる。
「訴えました」のひと言に小橋(というか浦井さん)が頽れてたけど、あの部分はアドリブだったのかな。

エキナセイヤミメロメロキャミキャミ…うん、これは訴えて正解。オチでお客さんに寄り添った接客をする小橋、素敵だったな。


浦井さんの影マイクから始まる【ヒーロー】…【おじピク】の後日談。そして、【家電探し】の前の出来事。この構成の感じ、久しぶりに観られて嬉しかったな。改めて『単独』を観ているんだと気持ちが一層引き締まり、舞台上を注視する。ナルオカさんと小橋、同じ人が演じているとは思えないくらい小橋がスマートに見える。

ひとりピクニックをしていたタジマさんに悩みを打ち明ける小橋。
自分が憧れていた場所に自分が居ない現実を痛感して、仕事をズル休みしたくなる気持ち、ものすごく分かるな。通勤ラッシュの中、沢山の人の中に混じって会社というひとつの場所に行く為に、沢山の人と同じ道筋を歩いていく朝、「わたしは何をやっているんだろうな」と何度も思うことがあるし、それが嫌すぎて小橋のようにズル休みをしたことも、過去にはある。
そんな彼に対しても、ナルオカさんに対する時と変わらない人当たりの良さと、「自分のタイミングで」と言ってくれる懐の広さを見せるタジマさんの存在は、自分にとっても救いだなと思う。
粉ポカリは幼い頃、一度は口にした覚えがあるものなだけに、えも言われぬ郷愁を覚える。【おじピク】と、この【ヒーロー】での粉ポカリというアイコンは、捉え方が全く変わってくる気がする。この出来事があったから、【家電探し】での小橋は今の自分の場所と向き合うことが出来ているんだなと思う。

「まぁでも、暇あったら…また帰ってきてや」と【おじピク】の時に言っていたタジマさんとの約束を口約束だけで終わらせないナルオカさんも素敵だな。
それにしても最後の平井さん、エンディングでも反省してたけどマジでふざけてたなぁ笑


毎月単独恒例、今回の【エピローグ】(タイトルが分からないので)は、『GOGO オトシゴちゃん』としてもエピローグになるような形であろうか。
幕間VTRの際、オトシゴちゃんとの壮絶なバトルを繰り広げたタコモンスターは怯んで逃げていたので、多分そういうことなのだろう…以降、そう推測した上で話を進める。
やけにトチ狂っていて馬鹿馬鹿しすぎて大好きだったが、初見で「平井さん疲れてるのかな」と思ってしまった(ごめんなさい)…ただ前述したように、ちゃんと幕間から物語は此処に引き継がれていると思われるので大丈夫だと思う。
御二方ともに、ここではこの短い時間を楽しんでいたようにも見えた…そう見えただけなのかもしれないけれど。
だけど、エンディングでもやってくれてたあたり、浦井さんあの感じ絶対に(かどうかは分からないけど、多分)好きでしょ。

完全にコレだったもんな…(公式ビジュアルより)

「凄いやり過ぎだと思うんだけどみんなど〜ぉ!?」
せっかく逃げてきたのに無慈悲すぎる笑…たしかにあそこでのぜんめつビームはオーバーキル(やりすぎ)ですし、最後のドヤ顔含めてこのコント大好きです。
このコントを観て、ハートフルなコントも悪くないけれど、改めてわたしは平井さんが書く何も考えずに見て笑えるコントも結構な割合で大好きなんだなと思う。


エンディング、あの格好で出てくるのちょっと面白すぎたな…浦井さんが付録を取りに袖に捌ける時ずっとノリノリだったのも、その後の裏話も含めて最高だった。
ふろく、がっつりパーツを補強してから作ってみたいな(大人の発想になっちまって…)

冒頭にも書いたキービジュアルとチップチューンという組み合わせ同様に、全体的にノスタルジックとデジタルのハイブリットの様な匂いもありつつ、今回はとてもポップなコントが多かったように感じる。観ていると、とても気持ちがパッと明るくなるような、全体的にそんなコントライブだった様に思う。今年行われた単独公演の中で一番全てが地続きになっている様な気がした。
後日更新された『浦井の枕もと』の中でも浦井さんが仰っていたが、前日までは大阪でライブだったりと、Twitterを見ていても素人ながらに「大変そうやなぁ」と思っていたし、公演中にアクシデントもあった様子だったが(あの場面があった分、タジマさんというキャラクターへの愛着が一層湧いた感はある)、その余白すらも楽しめるコントライブでとても面白かった。自分が「こことかそうかな?」と思っている箇所以外の所にもアドリブがあったんだろうなと、枕もとを聴いて以降は考えている。
ヘジホジとはまた違うポップさがあり、エドガーラビットとは違う背中の押し方をしてくれるライブ、構成もとても好きだった。初めて彼らの単独公演を観に行った時の事をふと思い出すコントライブでもあった。

次回のキービジュアルも…も〜本当に好き。

このまま映画好きを引き摺り込んで欲しい。
蒸し暑くなってきて、ジリジリと、そしてヒリヒリとした夏がすぐそこまできている…次回公演までに梅雨も明けていると良いなと思いながら、来月をまた楽しみに。

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