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彼等は牙を隠し変化する

剣歯虎【けんしこ】
漸新世(地質時代:約3,400〜約2,300万年前)後期から更新世(地質時代:約258万〜約1万年前)にかけて栄えたネコ科に属する食肉獣。上顎犬歯がサーベル状となったグループ。サーベルタイガーとも。

しょんぼり【しょんぼり】
・元気がなく、しおれているさま。
・男性ブランコのコントライブ『しょんぼりサーベルタイガー学園前』のチケットがご用意されなかった現実を改めて突き付けられた時の中の人の心情(知らんがな)
一部Wikipediaより

スマホのカメラロールにトラの写真が無かった。


∞ホールで開催される、男性ブランコのコントライブのチケットがいよいよ取れなくなってきた。

彼等の存在を知りもうすぐ2年になるが、今までずっと劇場で観る事ができていた事もあり、その反動でなかなか生の新作コントを観る事ができないさみしさも無いといえば嘘になる。反面、2022年のこのライブ達が、少しずつでも彼等が抱く未来図を完成させる為に必要な基盤の一部と変化していくのかもしれないと考えると、ワクワクもしている。

今回の『しょんぼりサーベルタイガー学園前

当落結果を見た際は、

「まぁ最近の感じだと、生でコントライブ観たい人も増えてきてるだろうし、今までみたく観られなくなってもしょうがないよねぇ」

…と、前回の『変身東京ウミウシ』同様、早々に諦めをつけ、その時は割り切ったつもりでいた。
しかし前夜になり、改めて劇場で観る事は叶わないのだなぁと、寝る前にふと思い返した瞬間、言いようのない感情が沸々と湧き溢れ出てきた。
めちゃくちゃに悔しかった。もっ……………………んの凄く、悔しかった(悔しさの度合いが伝われば幸い)

既存の曲を使われてしまうのなら、やっぱりその場で観たかった

自業自得ではあるのだが、自ら現実を突きつけてしまったが為に、本当にしょんぼりしてしまった。めちゃくちゃ落ち込んだ。
今までで一番しょんぼりした。本当に観たかった。
空気読めないって言われる人って、こうやって無意識に人の気持ちを沈めているのかもしれない…気を付けるね(空気読めないってよく怒られてた人より)
目にした話、小山田壮平さんの楽曲を使用したとの事で…観てみたかったな、あな悔し。

ただ、そんな気持ちも翌日の夜には消え去っていた。一週間視聴可能な編集版公開のアナウンスが既にされており、ライブ自体は観る事が可能だし、次回のコントライブ開催も決まっている(当落についてはお察しください)
何度も書くけれど、単独に限らず配信やアーカイブが既に確定している事に関しては本当に有難く、その場の空気感に少しでも触れられるという事に対し、嬉しい気持ちでいっぱいだし、視聴することにより明日への活力にもなる。いつも元気もらってます。

そんなわけで、今回はその編集版を観た感想を書いていこうと思う。
たまに決まり文句の様に書いてますが、こんな奴の感想でも見たいという酔狂な方はどうぞ。


ビジュアルには全体的にキリッとしたアーバンな空気が漂っていたので、とある都会の片隅で起こる様々な出来事がコントになるのだろうと思っていた。それは実際そうだったのだけど、今回のコントライブを観て、ひとつ感じた事があった。
自分の父親の様に、常日頃からしょっちゅう映画を観ているというわけではないのだけど、後半のコントを観ながら『映画』という2文字が頭に浮かんだ。

男性ブランコのコントライブは、『一本の映画を観た後の様な、満足感のあるライブ』が多いと思っているし、Twitterを見ているとそう書かれているツイートもたまに目にする。今回のコントライブ…理由は分からないし、感覚的なものにすぎないが、今までよりも映画を近くに感じた様な気がする。数ある名作映画の登場人物のニュアンスの様なものを切り取り、御二方の風味で味付けをしたキャラクター達がそこには居た様な気がするからなのかもしれない(あくまでわたしが感じた事に過ぎないので異論は認める)…何故だか分からないが、内心「映画やなぁ」と思いながら、エンドクレジットを目にしていたし、何故だか分からないがその感覚だけが余韻としてずっと残っていた。
それから、編集版ではOPVや幕間VTR、エンディングがカットされていた。その分、凄くスマートというか、全体的にさっぱりしたコントライブの映像だったように思う。エンドクレジットが終わった瞬間、心の中に放たれた第一声は「あれ?もう終わっちゃった」だった…すぐさま2周目を観るに至る。
おそらくその映像辺りに既存の曲を使っていたのだろうと推察するが、映像や幕間が無いだけでこんなにも心の高揚感というのは変わってくるのかと、自分の中ではそこも含めて改めてライブなのだとも思う。割とフラットな心持ちで編集版の映像を家で観ていた自分が居る。

ただ、これはあくまでも全体的な空気感の感想であって、面白味がないライブだったわけでは決して無いという事だけは声を大にして言っておきたい。
彼等が創り上げるコントの面白さに関しては言わずもがなである。少しずつ感想を書いていこうと思う。


唐突だが、『子どもの一番のファンは親』だと常々考えている。勿論、例外がある事は理解した上で書いている。ただ、母数や割合を考えると前述した考えに至る。
私事なのだが、先日母親から幼い頃に学校の授業だったかで自作した絵本の画像がLINEで送られてきた。完全に記憶の彼方に葬り去っていたし、わたしにとってはただの黒歴史でしかないので、「恥ずかしいから燃やしてくれ」と懇願したが、「記念だから」のひと言と共に添えられた笑顔の絵文字で一蹴されてしまった。
シロツメクサの冠】(タイトルはTwitterで知りました)を観ていると、みぃ(↑)ちゃんに対するお父ちゃんもそんな感じなのかなと思う。
とても可愛らしい親子のコント。
反抗期でもなく只々ツンデレなだけなのだろうか、みぃちゃんは「うるさいな〜」と悪態はつくけれど、割と素直に情報を小出しにしてるので、お父ちゃんの事は多分大好きなのだろう。肉親である特権を余す事なく浴び、飛び跳ねて喜ぶお父ちゃんがまた可愛いし、みぃちゃんと一緒に写真に写りたいお父ちゃんが本当に愛らしい。

親子が設定のコント…『父と息子』という場面では、時に厳しく、地に足がついた様な優しさを持って接する父親が描かれることが多いイメージがあるが、『父と娘』となると、途端にお茶目で可愛らしいフニャッとした空気感を纏う父親像になる。平井さんの理想像だったりするのだろうか…いずれにせよ、我が子に対する愛情の深さは同じくらいだろう。
ところで、カレンダーに缶バッジに、限定オフショット写真集…みぃちゃんはそういう事を生業としているのか。


個人的に凄くタイムリーな話題が織り交ぜられていた会話劇、【ドアトゥドア】…物理的な距離から心の距離の話へシフトしていく。遠のきかけていた心の距離を、対話することで取り戻していく『ボクトゥ(To)キミ』の関係性。「彼女が欲しい」と言っていた友人を差し置いて、自分に彼女ができてしまったが故に相手を気遣う彼の気持ち、それに対して「なんで彼女ができたこと言ってくれないんだよ」って思っちゃう彼の気持ち、どちらも分かるな。
彼女ができたことを指摘され、フッと瞬時に面構えが変わるところ好きだったなぁ。ちゃんとそういう顔になってるんだもんな。

『トゥ(To)』という言葉を用いるだけで意味もニュアンスも変わってくる、平井さんの言葉あそびが楽しめるコントだと思う。こういうコントが1本あるとワクワクする。個人的に合トゥ(Go To)コンパとおパントゥドアが好きすぎました…マジで意味が分からな過ぎて好き。
大きな動きなんかは特になくても、日常でもありそうな何気ない会話のやりとりの中に、耳に残るワードで隙間を埋めるだけなのに、これだけ面白くできるって凄いなぁ。

何度も見返す度に面白くなっていったコント。


男性ブランコの数あるコントの中で、観ている人が持つ感情のツボをしっかりと突き、涙腺が緩んだ所にボディブローをお見舞いされる、『これぞ男性ブランコ』と言っても良いくらいの王道的展開だと思うと同時に、自分の中でグッと来たコントがこの【景色】、グッと来るけれど、勿論ちゃんと裏切ってもくれる。
浦井さんの持ち味を上手く活かしているコントだなとも思った。まさか友との別れがさみしくて、悪態ついて煽りまくっていた平井さんの方がまともな人だとは思わないじゃない。
煽られて段々と口が悪くなっていく浦井さんがツボだし、「車持ってる奴の権力なめんなよ」っていうセリフ、言葉は荒いけど音として出た時の語感の良さが好き。
どんな形であれ、友との別離の物語だと理解した瞬間、やはりグッと来てしまう。自分も地元の友人の事をふと考えたり、普段の生活の中でちょっと落ち込んだ時とかに、このコントをふと思い出すことがあるかもしれないなと思う。この世は『ちっぽ景』な世界なのだと思えば、同じ世界にいる限りさみしくはないし、どうとでも生きていける。

ただ、何を志してるのか見えないビッグはシンプルにヤバい。


冒頭からアホすぎた【入社式】、あの格好であのポーズはずるいでしょうよ。
アメリカンバイクルックと手にした鞄のミスマッチ加減。ハリウッド映画かドラマに感化されすぎてしまったとしか思えない新入社員…世間一般的に言われる常識の概念に囚われてなくて最高にロックしてるぜ…ていうか、よく内定取れたな。
埒の意味をちゃんと理解している所を見てると、ちゃんと勉学に励んできたのだろうに「どうしてそうなった」と思ってしまうが、ハーレーに乗ってそうな出立ちでバスに乗って来る辺りがなんだか憎めない。「あのマインド持ちながらバスで移動するのか…」と、後日このコントの事を思い出しながらその姿を想像してちょっとフフッと笑ってしまった。
アメリカンな装いを脱ぐ決意をしたところにちょいちょいブレーキかかってはいるが、その呪縛を解くのはアンタの匙加減でしかないんやで…グローブがギチギチであるが故に手こずってて思わず笑っちゃったのと、思わぬところでプチジャケットプレイを目にして、今になってそれがじわじわ来ている。
めんどくせぇなと言いつつ、スーツを買いに付き合ってくれる友人…旧誼に免じて、というやつだろうか。あの感じから察するに、きっと放っておけないのだろうな、彼の事。


今回のコントライブの中でも最初から最後までずっと好きだった【値引きシール
友達を揶揄って後々後悔してしまうなんて、割とありふれた事ではあると思うが、自棄になって寿司のパックに値引きシールを貼りまくるスーパーの店員の暴走加減がなかなかに尖っていて、個人的にはめちゃくちゃ笑ったし、5分のコントとは思えないくらいに面白く、あっという間だった。スローになってからの描写や母へ向けた手紙の様な独白、友人が駆け寄るところで手と足が一緒になる所もツボだった…あの場面で流れるAmazing Graceは秀逸。「どんだけ貼ってんの…」は素のリアクションだったのだろうか。
最後、和解するかと思いきや、揶揄われたことはまだ許してないのかなと思ったり…彼なりにプライドを持って仕事と向き合っていたのかもしれない。だけど実際のところ、宝くじで3億円当たったらどんな心持ちになってしまうだろう…彼みたく頭おかしくなって人間不信になってしまうかもしれないなぁ。お金は時に人を狂わせるものだという考えが抜けないから、手元に程々残るくらいが丁度良いと思ってはいるけれども。

自分の価値くらい、自分で決めろや
友達は決してお金に変える事はできません

自分の価値というか、自分のことは常日頃から過小評価しがちだから、自分に自信も持てなくて、誰かの言葉をアテにしてみたかったりする事もあるし、友達という存在は決して当たり前に居るものだとも思っていないので、この言葉たちは日々を送る中でも胸に刻んでおこうと思う、捻くれ者なのでなかなかに難しいけれど。
あと、あれだけアホほど値引きシールを貼られてしまったら、あのお寿司の末路はさすがに気になる。


浦井さんのチャップリンを彷彿とさせる立居振る舞いによる登場の仕方が印象的だった【長い渋滞
パッと見、物腰柔らかそうな装いの紳士だけど、やってる事はだいぶクレイジー。クセのある紳士、良いキャラクターだなぁ、最高だった。そんなクレイジージェントルマンを怒りに任せて罵倒することなく、どうにか説得し改心させる男。
現実だと渋滞を招いた張本人と相見えるだなんて、諍いに発展しかねない場面ではあるが、この物語は穏便に解決される。誰かが困ってる顔を見るよりも、誰かが喜ぶ顔が見たい…そんな気持ちが詰め込まれていた様な気がしている。
豚汁っていうのも、温かみがあってなんかいいなと思う。

料理のコツは、誰かに食べさせる事を想定して作ること
あの世界で紳士が料理を誰かに食べさせて、その誰かが幸せな気持ちになっている姿を見て、アイデンティティを獲得していってるといいなとも思う。この出会いがきっかけで、お店とか始めてたりしてね。
あと、平井さんが演じる普通の人はナチュラルで本当に好きだな。最後、電話口で「晩ごはん俺が豚汁作るわ、任せて」と言った矢先に、「豚汁ってどうやって作んの?」と大切に想っているであろう女性に聞く彼の言葉はとても素直で、真っ直ぐで、なんだかぬくもりを感じた。そんな彼のマインドが、あのクレイジージェントルマンの心を動かしたことって、実は何気に凄い事なのではないかと思う。

このコントを観ていたら、実家のご飯が恋しくなってきた。帰省したら母親が作ったごはんをたくさん食べて、「もう食べきれないよ〜」って言いながら笑いたいな。
その時はタコのお刺身と、ポトフをマストでお願いしてみようかな。

あと、料理はいいぞ。


キービジュアルから構想を得たのかなと思わせてくれる、このコントライブを締め括るエピローグ的コント【化けサーベルタイガー】…しょんぼりしてたの、アンタ方やったんかぇ。会話がめちゃくちゃトラだったけど、なに話してたんだろうか。
「おぅバス来ねぇじゃねぇかよ」
「知らねぇよ俺に言うんじゃねぇよ」
みたいな感じなのかな。
最後、「バレないように」と共に残し、バスへと乗り込んでいく姿を見て、かの有名な変化たぬき達の映画を思い出す。彼等も最後は、人間として共存する道を選ぶ…どういった経緯があったかはさておき、変化するサーベルタイガーと人間が共存する世界線が、もしかすると何処かに存在しているのかもしれない。
そんな世界があってもいいのかもしれないけれど、実は…と化けの皮が剥がれ牙を剥かれる、なんて事が起こったりしたらちょっと怖いな…もしかすると彼等が乗ったバスも、わたし達が知るようなものではなく、ちょっと特殊なものなのかもしれない(想像の域は出ない)

だけどそもそもの話、サーベルタイガーと呼ばれている剣歯虎は、もうこの世には存在していない。そうなると、彼等はどこからあの世界にやって来たのだろう。謎だけが残る。


男ブラさんのコントライブの中でも、これだけ登場人物の名前が出てこないライブも、最近では珍しいなと思う。ひとつひとつ咀嚼して、何度でも見返したくなるコントライブだったなと思う。OPV・幕間の無い、コントのみを集中して堪能できるという意味では、編集版もそんなに悪いものではないなと思う。

次回のコントライブは干支に準じてウサギをモチーフにしたタイトル。
イギリスの某ウサギ君がひょっこりと顔を出してきそうなビジュアルで、これまた素敵。

冒頭にも少し触れているが、次回も劇場では観られないことが確定している。
ウミウシから数えて3連敗である(素で計算を間違えてTwitterで4連敗なんて書いてしまったので、現実になりそうな気もする)

ヘジホジのチケットがご用意された時、
「わたしは早々に、今年の運を全て使い果たしてしまったのではないだろうか」
なんて半分冗談混じりで書いてはいたが、それが現実味を帯びてきていると思うと震えずにはいられない。
せめて今年中に、あと1度くらいは∞ホールでコントライブを観られたらいいんだけどなぁ。次々回のコントライブへと、思いを馳せながら…(気が早い)
ビジュアルに寄せたコントライブになるのか、はたまた身近にある日常に触れるのか。どんな内容になるかワクワクしながら、わたしはわたしの生活を送ろうと思う。

エドガーラビット楽しみです。

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