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上半期最後に目にするは紫の世界

パープル【purple】
色名のひとつ。JISの色彩規格では「あざやかな紫」としている。
古代では貴重な色で、皇帝など高位の人物を象徴する色と伝えられている。
(コトバンクより抜粋)

英語では「高貴な、ぶちキレる、かなり運がいい」などといったイディオムやスラングで使われることもある。


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男性ブランコのコントライブ『視界がパープル』…よくこんなタイトルが思いつくなと思った。語感だろうか(「先に右脳でタイトルを口にしてしまうから、あとで首を絞めることになる(意訳)」とエンディングで浦井さんに窘められていた平井さん)…イメージ先行だけど、正直ちょっとサイケデリックな感じを出してきたりするのかなと思ったりもしたが、全く予想がつかない。
それよりも、前回の『ユニヴァーサル味噌汁』が無観客になってしまい、久し振りに劇場で彼等のコントライブを直に堪能できるとあって、こちらとしては楽しみしかなかった。しかも前情報として

・最近では見ないエッジ(?)の効いた尖った(?)ネタがある(ライブを観た後だとこの時平井さんが言いたかった事がなんとなく分かる)
・映像が格好良い

といった情報が御本人達の口から飛び出したことで、期待も膨らむ(「面白いことになってますよ〜」と毎度言われる度に、期待値が上がってしまう単純構造)
昔から恋愛ものよりも、SFだったりアクションだったり、ハードボイルドだったり、ちょっと刺激があるものの方が個人的には好みだ。いつも楽しみではあるのだが、どんな世界を見ることができるのかという意味での楽しみも今回はあった。

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∞ホールのロビーに入ると、いつも奥の方にある御二方のポスターが前面に来ていて「おっ」と思いながら会場へと向かう(紫に照らされていた様で)
階段の照明に赤のフィルターがかかっていたということは、何処かに青もあったのだろう…気持ちが焦っていた為か見つけられなかった。あな悔しや。

画像1

会場は紫の照明、ステージ上には赤と青の照明が差されていて、舞台袖の装飾には暗幕が掛けられていた。『視界がパープル』の世界に没入する準備は万全。あとは始まるのを待つのみ。


暗転。


今回のコントには、コントライブのタイトルに因んで、それぞれに紫のモチーフが必ずひとつ登場していた。そこに関しては、当日更新された浦井さんのRadiotalk『男性ブランコ 浦井の枕もと』でも少し触れられている。今回は元々アーカイブが終わってから感想を投稿するつもりでいたので、各コントの内容にいつもより触れようかなと思って(ちゃんと触れられてるかどうかは分からんけど)…そのついでに、紫のモチーフはメモ程度に記しておこうと思う(<>←で囲んでおきました)
タイトルが分かるコントもあるので、それも記しておこうと思う(電子台本『男性ブランコのコント集 vol.2』参照)

【1本目】<佐藤が手にしていた便箋>
博ッ打ングアプリ(?)もとい、ボトルレターから始まる二人の出会い、今の時代なかなか無い。光の速さで情報が過ぎ去っていく最中に文通というアナログな手法、良いじゃない。手紙はその人の人柄と気持ちの欠片がパッケージされてるというのが良い。
そこから交流を図ってみたいという気持ちや好奇心を抱くって事も大事だなと思う。

ーこれは申し訳ないという表現で合っているのだろうかー最初の方はコントを観ながら普通にクスクスと笑っていたのだが、途中から自分の中でマリを演じている平井さんに既視感があった。「そうや、あの人やん」…気が付いてしまった。

マリが千原ジュニアさんにしか見えなくなっていた。「ジュニアさん憑依してる?」と思ったくらいジュニアさんだった(これはマジで設定の所為だと思っている)
この事に関しては、Abema TVでやっていた『エモネタ王決定戦』を思い出した事もあり(番組内でそんな事をスピードワゴンの小沢さんが仰っていた)、タグを付けてTwitterでも手短に呟いたのだが、同じ様な事を思っていた方がいらしたようで、帰りの電車の中でちょっと笑ってしまった。特に車の窓越しに「何してんすかぁ?」とマリの弟の真似をする姿が、かなりジュニアさんだったなと個人的に思う。

ただ、コント自体も面白かった。35歳の佐藤と同年代くらいかと思って観ていたマリが、まさかの味覚含めたおっさん女子な女子大生くらいの年齢であるという情報も最高だったし、誠実そう且つ第一印象でマリの良さを見極められる佐藤もなんか好きだった。マリは気遣いのできるいい子よ、酒焼けで声がアレなだけなのよ。
内容以外の所を書くと、浦井さんが標準語で平井さんが関西弁を話すコントというのも珍しいなと思った(逆のイメージがある)、平井さんが女性役で黒以外のストッキングというのも新鮮。清楚さ出てた。

因みに、最後にマリが走り去った直後、佐藤が頽れそうになっていたが、あの瞬間だけは浦井さんが顔を出していた気がする。

【OPV・幕間VTR】
男性ブランコのコントライブを観に行く様になり半年は経った気がするが、OPVは今まで観た事のない艶かしさが漂っていた気がする。
パープルという色は、時にその人や世界観に色気というスパイスを添えてくれる色だと思う。選曲もアンニュイさが漂い、今ままでにない妖しい雰囲気がある…映像と相まって世界観が最高だった。浮遊する(漂う)顔のないダブルメガネのシュールさが際立ってたのが個人的ツボ。

幕間VTRのオシャレな映像に「KIGAETEMASU (着替えてます)」という表記をあのフォントで入れる辺りに作家さんのセンスを感じる。そこはかとなく哀愁漂う選曲も凄く良かった。
帰宅後にアーカイブ映像を視聴したが、幕間ではステージと共に映像が映し出されていた、照明を含めた会場の雰囲気を少しでも共に楽しんでもらう為だろうか。

【2本目】<砂時計の砂>
古典落語に『死神』という演目がある。ふいにそのサゲ(オチ)を思い出した(数パターンあるうちのひとつ)、内容は全くもって異なるのだが、近いものはありそうな気がした。
死神が差し出した砂時計の砂が落ちきったら自分の生が終わりを迎えてしまう…そうはさせまいと抵抗する男。足払いしたり、頭を使ったりと、男と死神の砂時計攻防戦がコミカルで観ていて楽しい。男が砂時計を倒すまでちゃんと待ってくれる死神やさしい。

「死にたくなければ、生きるといい」…死神の考え方はいたってシンプルだ。
生きるという選択を許容してくれる。

しかしながら、最後に出てきたトライデントを手にしていた彼は最初に出てきた死神と同じ人物だったのだろうか、はたまた別の存在か。アーカイブで観ると、カットインしてくる様が個人的に相当面白かった…それと、オチで放たれる断末魔がめちゃくちゃ好きすぎて、観返す度に声を出して笑っていた。また何処かで観たい。

【3本目】<佐藤のバックパック>
男性ブランコのコントライブで一度は必ず登場する「田中」と「佐藤」の二人。
弁護士を目指し上京する為、東京行きの電車へと歩みを進める佐藤を見送りに来た田中。旅立つ佐藤に100個目のメッセージを伝えたいが為に必死こいて残り99個のメッセージを伝えようとする田中。そんな彼に呆れつつも終電まで付き合う佐藤。10個足らずでメッセージが尽き、佐藤に投げたりピングーになってしまう田中。一緒に考えてあげたり、ピングーまでOKにしちゃう佐藤の懐の広さ。
やさしさとエモが混在する男性ブランコらしい(と言って良いのだろうかと思いつつ…そんなイメージが強い)コント。
このあと佐藤は東京へ、田中は現世から隠世へ終電に乗っていくのだろうと思っていたが、やっぱり最後の最後までストレートにしんみりさせてくれない所が好きだ(当たり前だろコント師なんだから)

毎度思うけど、浦井さんが声張って大きい動きするとなんであんな面白いんや…あと、改めて観ると佐藤が着ているシャツも紫色なのだろうかと思ったり。照明が干渉するのか色彩感覚が麻痺してくる、面白いなぁ。

【4本目】<葡萄>
コントのタイトルは「ぶどう」
冒頭から始まる高橋(平井さん)と野村(浦井さん)の会話からは、関係性が掴めずにいた。ところが物語が進むにつれ、エッジの効いたちょっぴりダーティな世界が急に顔を出してきて、めちゃくちゃ面白かったしめちゃくちゃ大好きなコントだった。
クレイジー且つサイコパスの様な空気を纏った借金取り(セクシーな葡萄の食べ方と「意気地なしぃ〜」の言い方が最高だった、意味は分からんかったけど)、最後に葡萄を突きつけられてガタガタ震える債務者の芝居が絶妙で面白すぎた。
不自然な会話の謎が解けてから、冒頭の会話を思い出し、アーカイブで観ると面白さが増幅して、家で観ながらずっと笑っていたくらい好き。こういった類の淀みは個人的にはかなり好みだ。
このコントもまた何処かで観たい。

【5本目】<スリッパ>
嘘つきなお父さんの話。個人的に会場で観ててめちゃくちゃグッときたコント。

「父さんは嘘つきだった」

息子が思春期の頃についていた「父さんは今、傘をさしている」という嘘を、大人になった息子の親孝行に対し、嬉しいのに素直になれず、照れ隠しで口にするお父さん…そんな姿に目頭が熱くなった。
お父さんのヘンな嘘、聞く度にジワジワくる。嘘つきだけど、やさしいお父さんだというのは分かる。カバは最強と聞くが、たしかに嘘でもそのサイズのカバには勝って欲しかった…。
成長していくにつれ、口調が落ち着いていく平井さんと、声のトーンと話す速さを若干変えてた浦井さんの芝居に親子の年輪が見えた気がした。

しかし、絶妙なラインでこのあと何かひと悶着ありそでなさそな嘘を最後に持ってくる辺り、後日談ありそうな感じが良い…嘘であって欲しいけど。

【6本目】<牛乳のパッケージ>
コントのタイトルは「外」
スパルタタートルズというバンドのファン二人。バンド名、スパルタローカルズから取った…?とか思ったり。
『好きだったバンドの再結成ライブに行きたかったのに、チケットが取れず観に行けなくて、会場の外で動向を見守るファンの二人』なんてエモが詰まりに詰まった設定で、音楽ファンの方に是非一度観て欲しいコントだと思った。
お酒が入った状態で繰り広げられる、共通の仲間という間柄のやりとりは普通にありそうで、微笑ましくほっこりもする。且つ、スパルタタートルズというバンドを若い頃から観て熱狂してたんだろうなぁとか、ふたりの青春だったんだろうなとか想像すると、めちゃくちゃグッと来る…ヤバいな、書きながら自分も好きだったバンドの解散を思い出してちょっと泣きそうだぞ…ふたりの「なんていうの?」もなんか分かるし、それと大西の「…酔ってるねぇ」っていう何気ない台詞を思い出す度に何故かグッと来ていた。
岡田が牛乳を飲むタイミングしくじってるのも、
パックの状態で飲み慣れてない感じも、不器用な人なんだろうな〜って雰囲気出てて好き。

因みにあのTシャツのデザインはオリジナルなのだろうか。その辺りも気になるところ。

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他の芸人さんの単独に見るようなゲストが出る事がなく、男性ブランコふたりだけでやるからこそ、雑念なく、その世界観にわたし達は引きこまれるんだろうなと思う今日この頃…時々、芸人っぽさがないんだよなぁと感じるのもその所為なのかもしれない。
今回のコントライブも全編通して面白かった。映画館でひとり、良質な短編映画を観終わった時の様な気持ちになっている自分が居る。
サムネは当日、エンディングで撮影OKの時間で撮ったもの。とても素敵なおみやげと思い出をもらい、家路へと向かった。そして帰宅途中、「あ〜終わっちゃったなぁ」と思ってしまった。
まだ梅雨も明けていないのに、わたしの気持ちは帰り道の蒸し暑さも相まって、夏の終わりのさみしさのような、そんなセンチメンタルな気持ちを漂ってしまった…芸人さん達の夏はこれからなのにね。

単独ライブもひと段落。
熱い時期を乗り越えて、また会える時まで。

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【至極個人的な余談】
男ブラさんのコントライブ観た帰り道って、自分の頭の中で好きなバンドの音楽が流れる事がよくあるんだけど(ねてさめの時はおとぎ話というバンドの『Cosmos』という曲だった)、今回はGREAT3というバンドの、とてもメロウな『砂時計』という曲だった。サビの歌詞はこんな感じ。

生きることは 砂時計 逆さには出来ない
こぼれる砂 最後の吐息
終わりへ向かう 足を止められない

少しリンクしてるのかもしれないなと思ったけど、2本目のコントの断末魔を思い出し思わず笑ってしまった。

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