見出し画像

『真壁さん』なる人物に想いを馳せた先に見たもの

ウサギ【兎、兔】
全身が柔らかい毛で覆われている小型獣。耳介が大型であるのが特徴。
毛細血管が透けて見えるこの大きな耳介を風に当てることで体温調節にも役立てるともいう。ストレスには非常に弱く、絶えず周囲を警戒している。
最大種はヤブノウサギで50〜76cm。

hope【名】
・希望
・可能性
Wikipediaより

前置をいつものように書いておりますが、今回は私事が長めなので、割愛していただいて大丈夫です、目次を付けておきます。


男性ブランコのコントライブ『エドガーラビット』

…先に書いておくが、わたしは今回リアルタイムで配信を視聴していない。

唐突に私事から始まるが、今月の頭に引っ越しをした。
その際、必要なものを考えなしに買いに買った結果、大分お金を使い過ぎてしまった上に、コントライブの配信チケットを買っていなかったことを完全に忘れていた。
結果、秘密基地と喩えられる様な部屋は完成したが、その代償として圧倒的な残高不足に陥ってしまった…阿保だ。時間がない中での引っ越しに於いて焦りは禁物…そして、ご利用は計画的に。
ここ数年で、今が一番貧乏かもしれないが、20代の頃に戻っただけの話だと思えば、全く気にはならない…40にもなってそれもどうかと思うのだが。程良くちゃんとした大人になりたい…それを目的のひとつとして見据えた引っ越しだが、これでは本末転倒だ…だが、そんな生活もあと数日である。

自分の中ではそんなことが起こっている中でのコントライブ開催、そして次回コントライブのエントリーがスタート。
今回は配信も延長されるであろうという希望的観測を抱き、給料日に配信チケットを買えばいいやくらいに考えており、且つ次回ライブの先行抽選にも絶対にエントリーしようと決めていた(こいつ舐めすぎ)
その為に、その分の残高だけは残していた。衣食住も大事だが、笑うことは心を潤してくれるので、今の自分にとってこれは必要経費である。
しかし、チケット料金を見て思わず頭を抱えた。

前売料金、上がってる…?

今回分の劇場チケット代と比較してみたが、次回公演からチケット代が上がっているような気がした。素晴らしい公演を行う方達のチケット代が上がる事は今後にも繋がるであろうと安直に考えるタイプの人間なので、歓迎ではあるし喜ばしい事ではあるのだが、次回は劇場で観たいという気持ちを強く抱き過ぎて、せめて野口さんがもうひとり居れば…と、本気で頭を抱えた。今までであれば、あっさりと諦めていたと思うのだが、何故だか諦められなかった。今思えば、チケットを獲得する為の土俵にすら立てないということに納得がいかなかったのだろう。

どうする…どうする…?

そして、わたしはふと、思い出してはいけないものを思い出してしまった。
実家に帰省した際、「なにかあった時のために」と、手渡された有事の際に使うべきアレの事を…早速、部屋を探したら、ひとりだと思い込んでいた野口さんはふたり眠っていた。

ちょっと待て。
考えろ自分、目先の欲だけが見るべき場所ではないのではないか…そこまでしてそれは自分にとって必要な事であるのかを…わたしは自分に問うた。ここで心の声が顔を出す。

『それ使って次回エントリーしたついでに、今回のアーカイブも買っちゃえばいいんじゃね?そしたら真相が分かるぜ?』

……前述したように、まだ配信チケットを買っておらずライブを観ていなかったが、Twitterには目を通していたので、普通にライブの感想は流し見しつつもチラチラと見かけていた…その中で、ずっと気になっていたワードがあった。

“ マカベさん ”

この“マカベさん”という人物について触れられているツイートを多く見かけた。
彼等に付いている作家の大澤さんでさえも、『真壁さん』と表記し、その人物に触れていたほどだ。

ダイジェストもあえて観ず、感想ツイートにもほぼ目を通していなかったので、当たり前の話だがこの時点ではなにも分からなかった。ただ、これだけみんながこぞってこの人の事を書いている…一体どんな人物なのだろうと、わたしはその謎だらけな“マカベさん”に想いを馳せた。
そうなると、この後どう動くかは自ずと決まってしまった…「これは大事な事なんです!!!」と心の中で叫び、わたしは心の声が導く扉の方へ、高級な餌の香りを感知し飛びつく猫の如くまっしぐら。
いい歳をして、わたしは親不孝者のどクズである(後日、ふたりの野口さんは元の場所に戻した)

給料日まで待てなかった…わたしはその“マカベさん”に1秒でも早く、どうしても会ってみたかった。それだけだった。
そして、配信チケットを買い、アーカイブの再生アイコンをタップする。


思わず過去にやっていた緊急会議のYouTube配信を思い出してしまった【アポイントメント】…そんなカーペンターズの曲みたいに。
途中、マリさんは佐藤の名前をいつ把握していたのだろうと思っているところで明らかになる関係性…『男性は忘れる生き物、女性は忘れない生き物』とはよく聞く話。
学生時代は学級委員、今やいち企業の社長…旦那様がむっちゃ逃げてしまった背景も、推測に過ぎないが色々とあるのだろう。表面上には全く見えないけれど、マリさんも色々な苦労をしてきたのかもしれない。

そんな女性は賢しく、強かで、それでいて格好良く、そして美しい。

マリさんの装い、素敵だったなぁ。衣装もウィッグも、知性的でセンスの高さが窺える女性像を想像させてくれる。
佐藤の半熟目玉焼きというワードを聞いた時の「ちょっと美味しそう」がクソ呑気すぎて「この人、憎めなくて好き」ってなった。立ち上がる時の赤ちゃん感、生まれたての子鹿な雰囲気もあって笑ってしまった。

ささやかな思い出話からの
「むっちゃ逃げた」
「むっちゃ逃げた!?」のリフレインが好きすぎるし、最後のシーンで一瞬だけ学生時代に戻ったかの様なふたりのフランクさがクスリとさせる。
ビブをつけた状態のまま去っていく佐藤の姿に、ジワジワ〜と湧き出てくるおかしみ。

人間なら立ちなさい!何の為に重力に逆らって二足歩行してんだよ!」という、マリさんの檄がすごく心に残っている。

✳︎

今回は映像が観られるんだ…!とOPVを観た時、前回の反動で思わず喜んでしまった(前回は前回であの感じは好きです)
『視界がパープル』以降、音楽も人間が抱える哀愁や色気、成熟味を添えてくれる感じが増えてきている気がして、堪らなく好きだ。この音源、聴く度に泣きたくなるほどに欲しすぎる。日常でも気付けば口ずさんでいる。美しい映像たちの中に差し込まれる、さまざまな言語で「うさぎ」の単語が流れる隣に添えられた逆さゆるダブルメガネの緩急が好き。
そして、コントの前後や幕間VTRに使われている楽曲はケルト音楽的なものだろうか。イギリス民謡と聞いて、最初に浮かんだのがこんな曲調だった。何度も観ていると、終わりに近づくにつれ段々と曲が盛大になっていくのすらも面白くなっていた。
幕間ではアナウサギらしきウサギが間を繋いでくれる。ちょっとした雑学も織り交ぜられていたりして…『また学』以来のこのテイスト、とても良い。
「うさぎ強くない?」ともぐもぐタイムがとても好きだった。癒し。

イギリス民謡についてあまりよく分かっていなくて、「どんなんなんかな?」と思って改めて少し調べたけれど、サイモン&ガーファンクルが歌っていた『スカボロー・フェア』(昔から好んで聴いていた)、知らずに聴いていたけどこの曲もイギリスの伝統的な曲なのだそうで。有名なところだと『グリーンスリーブス』などは耳馴染みがあると思う。

……話をエドガーラビットに戻そう。イギリス民謡の話をそんなに広げてどうする。

✳︎

ヒタニの妹・ユズコはとんでもなくバキバキの【怪物】、そんな怪物にヒタニはおそらく完全に調教されている…「僕(しもべ)の二足のわらじ」に喜びを感じちゃダメよ…(ワード強すぎ)
それでも自分の妹にお誕生日プレゼントをあげたいという気持ちはあるから、人としての心はまだ彼に残っている。設定はちょっと突飛だけれど、ユズコから逃れられそうにないヒタニの様子に、なんだか社会の縮図を見た様な気がして、ちょっとだけこわい話だったなと個人的には感じた。
あまり良くない職場に属すると、たまに見るヤツ…この視点で見始めてしまった途端、【怪物】というタイトルが物凄く腑に落ちた。

オルゴールの場面で、感情が溢れるまでの刹那、表情がない様に見えた平井さんの佇まいがなんか良かったな。あの場面を見て、一瞬ユズコの呪縛から解き放たれる日を思わず願ってしまう。ただ、「親のカーd…」と口を滑らせてしまってた辺り、ヒタニ本人も大分しょうがない感じの様なので、ユズコが抑制しているくらいが丁度良いのかもしれない。

お金で家族に迷惑をかけたら本当に大変だから。

こういう風刺がきいている(?)と言って良いのか分からないけど、そんなコントは全然あって良いし、こわかったけど個人的には結構好きだった。

✳︎

オチを観ながら、思わず「アホやなぁ笑」と口に出てしまった【ハミガキ粉】…前回のコントライブ『しょんぼりサーベルタイガー学園前』の中であった【値引きシール】くらい好きなアホさ加減。
『考えの柵の中』は誰にも平等にある。

ハミガキ粉を取られたら相手に歯を磨かれることになると捉えたり、考え方のことを『考えの柵の中』と表現したりする彼の発想、面白いなぁ。「事情のない人なんて居ない」って唐突に出てきたけど、本当にそう、言える言えない関係なく、事情は誰にでもある。
ていうか、なんでサコッシュの中にハサミだけを持ってたんやろうだし、あれで1ヶ月保つやなんて、どれだけ倹約家なのよ…過去の経験と関係があるのかな。
最後、浦井さんが窓を開けるマイムをした瞬間、微妙に照明の明るさが変わった気がして、細かいなぁと思いつつ、それと同時に「マジでアホやなこのコント…好きだわぁ」と笑っている間に流れるAmazing Graceと共に徐々に舞台は暗転していった。今回のコントライブの中で、シュールだけど好きだなと感じたコント。
歯を磨いた彼の中で眠っていた過去の記憶が蘇った余韻に浸る間もなく、アホな展開になったのが好きすぎた、良いコントだったなぁ。

✳︎

パンチが効いた装いのニート・ナカムラと、真面目に仕事に徹するインタビュアーの対比が印象的な【国際マラソン大会】…まさかの形でのマラソン大会優勝…落語家さんが兄弟子を飛び越えて二つ目から真打にぶっ飛び昇進するかの如き展開。
ニートだったナカムラがこのマラソン大会に出場し、優勝するまでの間にどんな心境の変化があったのか。もしくは、元々ちゃんとした生活をして親御さんを安心させたいという気持ちがあったのか。
最初このコントを観た時、インタビュアーの質問「人生とは…」のところで「?」が頭に浮かんだ。シンプルに、「なんでそんな聞き方をするのだろう」と思った。ラストシーンから察するに、もしかすると彼はナカムラに問いかけることで、その時に出る答えを自分に言い聞かせていた部分があるのかもしれない。辞表を握りしめた彼の覚悟がどれくらいのものかは計り知れないが、未来に向けて志しているものがあるのならば、彼の第二の人生がナカムラの風貌の如く、彩り豊かになればいいなと願う。

✳︎

隣人スミダに対し、どこかで見た記憶があるような空気感で自己紹介をする男、真壁が登場する【引越しの挨拶】…真壁…マカベ?
やっと会えた、マカベさん…いや、真壁さん。いや彼が…そうか…会いたかった…待ち焦がれたよ。
真壁さんは想像していた人とは大分違っていた。まず、女性だと思っていたのでその時点ですでに違っていた。
真っ直ぐに変わった人だ…そして急に話が飛ぶ、全てが唐突。だけど多分、真壁さんの中でそれはひとつに繋がっているのだろう。真壁さん、冒頭のミスだけで愛すべきキャラクターだというのが分かる。「歩きませんか」から、自販機アイスの「ごちそうさまです」までの場面展開がマンガ的で好きだったなぁ。

主人格の過去に何があったのかは分からないけれど、真壁さんが生まれざるを得ないほどにネガティブな出来事が彼に降りかかったのだろう。
彼曰く、スミダと出会った時には余命3日(あえて余命と表現する)だった真壁さん…もしかして、誰かの記憶の中に自分の存在を残したかったのかな。だから、あんなに変なことや突飛な事を提案したり、モノや単語のひとつひとつに対して「マカベ」を入れて強調していたのかもしれないし、スミダが彼にとってはじめての友達になってくれたことに嬉し涙を流したり…そう考えると、この話は途轍もなく切なく、そしてやりきれない気持ちになる。
ラストに真壁さんが再登場した瞬間、『てんどん記』のあのシーンを彷彿とさせる会場の一体感が拍手だけで伝わって、とても素晴らしかった。「口ピンポンて何ですか!?」で舞台は暗転したけれど、そこからまた彼らの中には記憶が増えていくんだろうな。

しかし真壁さんと主人格が入れ替わった瞬間の、温度差ある平井さんのあの芝居にはゾッとしたな。

✳︎

文庫本や長編物語の様なコントタイトル【エドガーラビット 上・下】…エンディングでの浦井さん曰く、「一番恥ずかしいタイプ」という、音楽のアルバムで言うところのタイトルチューン的にキービジュアルに寄せた感じ、わたしは勝手に粋だと思ってるし結構好き。
このコント、心にホワッとした温かいものが灯る様な感覚があって凄く好きだったな。『希望』の話だったからなのか、この物語自体が、本の中の世界だからなのか、その辺りは掴めないけれど。青年が描いた物語の筋から察するに、エドガーが手にしていたうさ耳は、自身のものだったのかなとも思ったり。
【上】の方で、平井さん演じる青年が紙と向き合っている冒頭、浦井さん演じるエドガーが舞台を往復する際に、無言の時間とセリフを発した以降の靴音の音量を変えていた様な気がする。
そんな気がするだけで実際どうなのかは分からないけれど、沢山の人からの視線を受けパフォーマンスをする…セリフを含めた一挙手一投足、頭をフル回転させ全身に全神経を集中させる…この人達は当たり前にできない事を当たり前にやっている。表現者である姿の、そんな瞬間を改めて垣間見たような気がして、わたしはその場面を観ながらゾクッとしていた。

どんなに美しい音楽が聞こえたって、たった一粒の悪意で黒く濁ってしまう
人に読んでもらうことで、作品は初めて完成します。たとえそれが0点でも、人に読んでもらうだけで、50点は貰えますよ

大SNS時代の今だからこそ、前者の言葉がすごく刺さり、後者もまた、誰かの背中をやさしく押してくれる言葉なのかもしれないなと感じる。
作品を出すことに迷いがある様子の青年に対して巻き舌で「コrrrrrrrrrrrルゥア゛ッ!!!」って叱るエドガー、動きも相まってめちゃくちゃ笑った。芯を持ってそうな佇まいのエドガー、素敵だし、凄く好きだな。

それと、【下】のラストでスキップしながら過ぎっていくエドガーの姿に思わずグッと来てしまった。ああいう瞬間は、これからも何処かで、自分や誰かの中に何度となく生まれていくのだろう。


アーカイブも翌日には延長が決定していて実に喜ばしい。真壁さん…とても素敵な人だったな。彼に出会えてよかった。
棘もありつつとても温かで、そして軽やかに、やさしく背中を押してもらったような気がするとても素敵で、とても好きなコントライブだった。仕事的には変わらないけれど、新居での生活も肩の力を抜いて自分も頑張ってみようと思える、そんなライブだった。

そして、次回コントライブのビジュアルも最高すぎる件。

公式ツイートを見た瞬間、いの一番でこれが浮かんだ。

もしくは、昭和テイストをコンセプトにした居酒屋の薄利多売半兵衛か…揚げぱん食べたい。イラストばかりのメンコの中に写真で紛れ込む御二方がジワジワ来て凄く好き。

因みに前置きの後日談ですが、当然の如く次回も落選という報いを受けました。
やはり日頃の行いは帰ってくるんだねぇ、どれだけ生きてても人生勉強だね。

今日からは日々を実直に生きようと思います。この先何回言うだろうこの言葉…。
劇場に足を運ばれる皆様が、エドガーラビット終わりに浦井さんが言及したことを忘れずに楽しんでもらえるならば、わたしはそれでいい(偉そうにすみません、でも実際そうですので)

次回は昭和の空気感あるコントもあったりするのだろうか…そこも含めて楽しみです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?