恐竜元年:終わりの物語

その星は生きている星
小さく、青く、強く、か弱く
愛しい約束に抱かれ、優しい記憶を抱いて、
暗闇に眠る、美しい星……

最初の世界と最後の都市

かつてこの世界にあったと伝えられている最後の都市の名前を、今では誰も覚えてはいなかった。栄華を誇った彼らを語るものは既に無く、彼らを知る生命達の繁栄もまた、歯車の小さな掛金。

欠け落ちて、失われてまた現われて、生まれ滅びて繰り返す、廻り続ける連鎖の中で、遠く薄れていく記憶は時間に埋もれ、永遠とも思えたそれにさえ本当の終わりが見えた時、この世の果てを求める新たな生命はその約束に抱かれて空に向かい、その向こうに、その世界を知る。

そう、そこは恐ろしい竜、後の世界で恐竜と名付けられた生命達と、木々と、小さく大きい多種多様な存在たちが生きる世界。

その、覚えている限りで最初になる世界は、
遡ること、ほぼ六千六百万年前。

ほんの小さな、ひと呼吸。



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