恐竜元年:始まりの三日間の物語
25:《三本角》(トリケラトプス)
――アメ、ハ、コナイノヨ
なぁに?
そっと、空を見た。
いつもと変わらない、空。
小さな二本足、いつも気が付くとなぜかそばにいる、小さな生き物が、その小さな手を、私に伸ばしてくる。
――アメ、ハ、コナイノヨ
空から降ってくる水のこと?
あれが来ると寒いけど、その後、柔らかい草や芽がたくさん出てきて、うれしいよね。
それが来ないの?
それって、どうなるの?
もしかして、オイシイのが食べられなくなっちゃう?
固いのや枯れたのも平気だよ。大きいから、食べられる。けれど、美味しくないし、あれは、お腹がすくのが早くなるんだ。
でも、いま、ここには、あるよね。たくさん、だから、ヘイキ。
うん、食べるよ、食べられるものを、食べられる限り。そして、生きるよ、生きられる限りを、生きていくために。
それにしても、暖かいなぁ、今日は。
明日も、暖かいかなぁ。
だと、良いなぁ。
そうしたら、良い匂いのする美味しい草、探しに、ちょっとだけ、森の奥まで行ってみよう。
小さな二本足、一緒に来る?
うん、じゃ、一緒に、行こう。
あの森の奥まで。
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