人様のロストPCに性癖ブチ抜かれた話。

既にタイトルでオチている。
オチているが一応本文も書く。

TRPGというものがある。『』と言ったりもする。
詳しい説明はたぶんここでするよりネットの海に数多ある他の文章なり動画なり解説書を読んだ方が手っ取り早いと思うが、端的に言えば『筋書きはあるが台本がない演劇』みたいなものだ。
人はプレイヤーPLと書いたりする)とゲームマスターGMと書いたりする)に分かれる。GMだけが筋書きを持っていて、PLは自分の分身となるキャラクターPCと書いたりする)が局面ごとにどう行動するのかを演技、またはサイコロで決める。

つまるところPCというのはPLが操作する『ゲームの中のキャラクター』のことである。PLごとに千差万別、さまざまなPCたちが、今日もどこかでほのぼのしたり阿鼻叫喚したりしているのがTRPGというものだと私は理解している。

で(ここから本題

TRPGの中に有名なもので『クトゥルフ神話TRPG』というのがある。原作が『クトゥルフの呼び声(The Call of Cthulhu)』なので、略して『CoC』と言ったりもする。原作はH.P.ラヴクラフトの小説で——と、ここいらの解説もほかの記事とか動画とか解説書とかを参考にした方が良いと思うのでここでは割愛する。とにかくCoCというTRPGがある。
大雑把に言うと宇宙的恐怖人間たちが翻弄されててんやわんやするTRPGだ。宇宙的恐怖および邪神およびその他もろもろの前では人間など手のひらで転がされるどころか吹けば飛ぶ塵芥みたいな存在なのでシナリオ次第では軽率に死んじゃったりする

TRPGにおいて、死んでしまったり、異世界に置いてけぼりにされたり、人格が破綻したり、なんやかんやしたりしたキャラクターは、継続プレイが困難となる。これを『ロスト』という。たぶん今日も色んな場所で色んなPCがロストしていることと思う。稀に『ロスト救済シナリオ』というのも存在するが、そういう特殊なシナリオでも通過しない限りはロストしたらそこでそのPCの物語は『おしまい』となる。

私は、一年ちょっと前からフォロワーさんに誘われて、CoCをプレイし始めた。どういうわけか昨今は『巣篭もり』が推奨されているということで、大いに盛り上がり、一年ちょっとの間に随分とたくさんのシナリオをプレイしたし、何度か自分がGMCoCの場合はKPと言ったりする)をしたりもした。

だいたいいつも同じメンツでやるので、たまに「〇〇さんとこのPCがすごく好き!」となったりする。漫画読んでて「あ、このキャラいいな!」となる感覚とだいたい一緒だ。ここまでは良い。私とて平成を駆け抜けた一介のオタクであり、数多の推しキャラが存在するので、キャラクターを愛でるなど日常茶飯事である。

問題は、そのPCが既にロストしている人だったということだ。タイトル回収である。

卓メン(つまり普段一緒にTRPGを遊ぶ人)の中で最もCoC歴が長い方がいる。その方は数多の修羅場死地をくぐり抜けており、手持ちのキャラクターの中にはロストした人が存在する。

私の性癖をブチ抜いたのは、よりにもよってその『ロスト済みPC』のひとりだったのである。

そもそもなんでロスト済みPCを知ることになったのか?」と言えば、TRPGにはキャラクターのステータスやらプロフィールやらが立ち絵やらが書かれた『キャラクターシート』というものが多くの場合存在する(キャラシと略したりする)
つまるところ私はキャラシでブチ抜かれたのである。我ながらどうかしてると思うがブチ抜かれてしまったものは仕方がない恋はいつでもハリケーンだとどこぞの女帝は仰ったが、性癖ブチ抜きもいつだってハリケーンなのである。

とは言えロスト済みPCである。

ロスト済みということは、今後一切PCとしては出ないということである。そりゃそうだ。ロストしてんだもんよ。

「さっきちらっと言ってた『救済シナリオ』とかでワンチャンあるんじゃないの?」と思った方もいるだろう。だが、そうは問屋がおろしてくれない。
ロストにも種類がある。死んだり、社会的に死んだり、心の病院に放り込まれたり、四肢欠損したり、そもそも人間じゃなくなったり、異世界から帰って来れなくなったり、円環の理に導かれたり、この世界の物理法則の根底に組み込まれたり、その種類は多岐に渡る。書いてて辛くなってきた。
勘の良い方ならお気付きだろう。私の性癖をブチ抜いたは、極めて救済するのが困難なロストっぷりなのである。というかデウスエクスマキナでも持ってこない限り救済できないんじゃないかなと思う。そりゃそうだロストしてんだもんよ。そもそもPLPCの問題は当人の問題であり外野がピーピー言うことではないそれはそれとして性癖には風穴が開いたのだが。

ロスト済みPCとて、場合によってはNPCノンプレイヤーキャラクターの略)でシナリオに登場することもあるだろう(幽霊とか黒幕とか)しかしながら私の性癖をブチ抜いた彼は諸般の事情でそれすらも困難である。

動いて喋る彼を拝むことはできないのか……と諦めていたのだが、CoC歴最長の彼女は一度だけ天才的発想で彼をNPCCoCの場合はKPCと言ったりする)で出してくれたことがある。絶対ドン引かれると思ったので当日は言わなかったがシナリオ終了後に割とマジ泣きした。ここだけの話である。私に絵心があったら感想絵を量産していたに違いないと想像できる。語彙力は消し飛んだ。

絵心は無いが、それでも出力をしたくなったオタクとは欲深い生き物である。

幸い、私の手元にはVRoidStudioがあった。大雑把に言うと絵心無くてもなんとなくそれっぽい3Dモデルが気軽に作れてしまう神がかり的ソフトである(絵心がある方はより楽しめると思う)
なぜかフリーウェアな上にMacintoshにまで対応しているので大変重宝している(※筆者はMacユーザー

勢いのままにVRoidStudioを起動し、穴が開くほど見たキャラシの立ち絵と睨めっこしながら3Dモデルを作ることにした。我ながらどうかしていると思うが『鉄は熱いうちに打て』をモットーとしているので、そのまま突っ走ることにした。我ながらどうかしている。

勢いのまま作ったモデルをUnityを使ってPMXモデルに変換する。この辺で拡張子に詳しい方なら私が何をやらかそうとしているのか気付いたことだろう。

MMDである。

MMD(正式名称MikuMikuDance)は3Dモデルを気軽に踊らせることができるソフトである。なぜかフリーウェアWindows専用だが、互換性のあるソフトに『nanoem』というのが存在している。大変ありがたいWindowsユーザーの方は素直にMMDを使いましょう

ロスト済みPCである彼は『アイドル』という設定である。
アイドルなら踊ってもええやろ!!!
という暴論を展開し、私は作ったモデルをnanoemにブチ込んだお借りしたモーションを流し込んで、再生ボタンを押す

彼が元気に歌って踊っていた。私は泣いた(※親御さんとも言える卓歴の長い彼女にはもちろん許可をもらっています、念の為)

人様のロスト済みPCに性癖をブチ抜かれた結果、いろいろと奔走迷走)してしまったし、やっぱり我ながらどうかしていると思うが、画面の向こうで踊る彼を見ていたら、達成感で色々とどうでもよくなった

そういうわけで最後に一言。

VRoidStudioは良いぞ。

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