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【レポート】魔の3Qの正体とは?

2024年5月3日、
レバンガ北海道vsアルバルク東京のGAME1が
北海きたえーるで行われました。

結果は、
レバンガ北海道 66 - 78 アルバルク東京 と
12点差の敗北となりました。

2023-24シーズンも
あと残すところ1試合のみ。
今日は実質、# 11 桜井良太にとって
現役最後のレギュラーシーズンの一日となります。

本人としても、クラブチームとしても、
そしてブースターとしても、
何とか勝利を手にしたいという気持ちは
共通しているのではないでしょうか。

今回は、GAME1を振り返って
アルバルク東京にGAME2で勝つには
何が重要になるかを考察したいと思います。


○ 試合開始前の状況

アルバルク東京は、
# 11 セバスチャン・サイズがロスター外となり、
強力なインサイドの戦力を欠いた状態で
GAME1を迎えました。

他方、レバンガ北海道も
これまでオールラウンドな活躍で
チームに貢献してきた # 2 ドワイト・ラモスも
4月13日の宇都宮ブレックス戦GAME1で
右眼窩底骨折でロスター外となっています。

どちらのチームも万全の状態というよりは
大事な主力選手を欠いてしまったという点では共通です。


○ 魔の3Qの正体とは?

試合後の小野寺HCのコメントにおいても
3Qに敗因があったという言及があります。

3Qは9-27のビッグクォーターを許してしまい、
その18点差が決定打となってしまったようです。

確かに統計的にレバンガ北海道は、
3Qの失点が他の1,2,4Qの失点よりも
2~3点多いことが客観的に示されています。


しかし、
「3Qが課題」
「魔の3Qさえ無ければ」
といった粗い観点だけでは、
GAME2も二の舞になってしまうだけです。

最終節アルバルク東京戦GAME1に限っていえば
①ファウルトラブル
②マッチアップゾーンの併用
これら2点が「魔」の原因だったように考えます。

それぞれ、詳しくみていきましょう。


○ ファウルトラブル

最終節現在で1試合あたりのファウル数ですが、
実はレバンガ北海道が最多(20.8回)となっています。

それに対して、
アルバルク東京は1試合あたりの被ファウル数が
1位とほぼ同値の2位(19.8回)なのです。

ファウルをしやすいクラブチームと
ファウルドローンが得意なクラブチームとの対戦なので
結果的にファウル数が蓄積してしまうのは
当然といえば当然なのかもしれません。

事実、GAMEでは、
アルバルク東京のファウル数18に対して、
レバンガ北海道は26でした。
特に2,3Qは1Qでそれぞれ8回を記録しています。

GAME1は現地+GAME後の配信で観戦しましたが、
確かにファウル判定に疑問を持たざるを得ないシーンが
主観的な視点においても複数回見受けられました。

同程度の強度の身体接触に対して、
片方のチームには笛が吹かれ、
もう片方のチームには吹かれないということもありました。

ただ、レギュラーシーズン59試合を経て
ファウル数が最多なのは事実ですし、
今に始まったことではないので、
うまくレフェリーにアジャスト(順応)していく以外に
対応策は無いように思えます。

現地で見ていて気になったのが
レバンガ北海道の外国籍選手が
レフェリーに対してフラストレーションを
慢性的に抱えているという点です。


3Qはとりわけ、レフェリーに駆け寄って
物言いをしているシーンも何度かあり、
集中力が途切れているようにも見えました。

メンタル面で自滅してしまったという点と
1試合で27本のフリースローを与えてしまい、
そのうち10本が3Qだったのです。

ファウルトラブルが
「魔」の一因だと考えました。


○ GAME1でうまくいっていた点

次に、「マッチアップゾーン」の話題に触れる前に
GAME1でうまくいっていた点を
いくつか拾い上げたいと思います。

アルバルク東京は
# 11 サイズを欠いているとはいえ、
前半のオフェンスが噛み合わず、
38-33の5点差ビハインドで
後半を迎えることになります。

これはレバンガ北海道にとっては
ゲームプランが奏功して
主導権を握ることができたことを示します。

また、結果的に負けてしまいましたが、
4Q残り2分43秒まで
アルバルク東京にメンバーを落とさせずに
12点差で試合を終えられたのは
チームとしての成熟が見て取れると感じました。

もう少し具体的に掘り下げると、
・# 9 安藤の3ポイントを0点に抑えた
 (試投数は3に留まっている)

・1Qは同点、2Qと4Qは点数で上回っている

・前半はリードで折り返すことができた

・リバウンド数で上回った 36本-34本

・3ポイントの確率がチーム平均より上。6/17(35.3%)
 (後半は失速して2/8 25.0%)
という点が挙げられます。

敗北したとはいえ、
また、3Qで反省点が多いとはいえ、
うまく機能していた点も多かったように思えます。

上記以外でいうと、
# 3 テーブス海に18得点を許していますが、
アルバルク東京にとって起点の一つである
ピックアンドロールによる得点は
これまでの2戦よりも少なく抑えられています。

どちらかというと、
# 3 テーブスの個人技による打開で
得点されたという印象が強いです。


○ アルバルク東京のレバンガ対策

レバンガ北海道の強みとしては、
ビッグマンのペイント内の得点と
3人とも3ポイントが打てるという点、
そして、# 4 寺園の得点力が挙げられます。

ビッグマンと# 4 寺園をどう守るかが
一つの論点になり、
後述するマッチアップゾーンが
その一つの答えとなります。

他方、レバンガ北海道の弱点としては、
ハンドラー・ウィングのサイズが挙げられます。
# 4 寺園、# 15 島谷、# 6 菊池、# 17 綿貫は
170cm台であり、
# 66 松下、# 81 関野も
180cm台前半です。

高さという点でミスマッチが生じやすいので
結果的にファウルで止めざるをえないというのが
前述したファウルトラブルにも繋がります。

アルバルク東京はハーフコートオフェンスで
ローポストからガードがポストアップするという方法で
・1 on 1
・ペイント内へのビッグマンのダイブ
・キックアウトからの3ポイント(# 23 メインデルら)
という効率的な攻撃で得点を重ねました。


オフェンス面では、
・ガードがポストアップして
 高さのミスマッチを突く

ディフェンス面では、
・変則的なディフェンス(マッチアップゾーン)で
 レバンガ北海道のリズムを崩す

という戦略を取ったのがGAME1の全貌です。


◯ マッチアップゾーン

マッチアップゾーンは比較的あたらしい戦術であり、
ゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンスの
いいところ取りをしたようなシステムです。

ボールマンに対してはマンツーマンで、
残りの4人はゾーン(に近い陣形)で、
相手を錯乱させる効果があります。

「たられば」の話ですが、
レバンガ北海道が前半でリードしていなければ
このマッチアップゾーンを拝むことは
できなかったのかもしれません。

それほどにアルバルク東京を苦しめて
2の手、3の手を出させざるを得ない状況にまで
追い込むことが出来ていたとも換言できます。

アルバルク東京は3Qの8:43、
レバンガ北海道のフリースロー後から
マッチアップゾーンを仕掛けてきます。

見た目は1-2-2のゾーンプレスのように見えました。
トップに# 23 メインデルを配置し、
2線目は# 3 テーブス、# 9 安藤
3線目は# 22 ロシター、# 77 グダイティス、
という陣形でした。

1-2-2ゾーンないし3-2ゾーンにしては
少し守り方が異なるように見えました。

レバンガ北海道のハーフコートオフェンスでは
ベースライン上にウィングとビッグマンを並べて
ボールマンがハーフラインに近い位置を取って、
ハーフコート中央部に
大きくスペースを取ることを好みます。
(Low 1-4と呼ばれます)

特に# 4 寺園がコート上にいるときには
高い頻度で見られます。

このとき、ビッグマンが
ボールマン(主に # 4 寺園)に対して
スクリーンをかけて
ピックアンドロール(or ダイブ)や
ピックアンドポップで攻めるのが定番です。

その攻め方に対してアルバルク東京は
マッチアップゾーンディフェンスでは
ビッグマンが引き付けられる形で
(ボールマンとビッグマンがマンツーマン、
 他の3名はゾーンを保持する)
高い位置まで上がってきて、
スイッチディフェンスで対応していました。

この形が
通常のゾーンディフェンスらしくなかったので
攻める側にとってみると
戸惑いや混乱が生じたのではないでしょうか。

しかも、
マッチアップゾーンで始めるかのように見えて
マンツーマンディフェンスに切り替えたり、
マンツーマンディフェンスで始めたのが
いつのまにかマッチアップゾーンになっていたり
ディフェンスの変化を正確に把握しようとするうちに
どんどん時間が消費されてしまい、
理想からは程遠い形のシュートセレクションを
強いられてしまいがちになります。


筆者が見ていた範囲で
アルバルク東京のマッチアップゾーンは
次のような特徴がありました。

・基本形は1-2-2ゾーン

・オールコート1-2-2プレスも併用

・ハーフコートのみのパターンもある

・ボールマンに対してマンツーマン

・残り4人はゾーン(ボックス形)

・ローポストにボールが入ったら
 外国籍/帰化がマッチアップorダブルチーム

・インサイドにボールが入ったらゾーンが収縮

・キックアウトに対しては
 いちばん近くにいるディフェンダーがピックアップ 
 他はローテーション

・トップのときはプレッシャーが弱い

・3ポイントラインの外(45°〜0°)では
 距離を詰めてプレッシャーを強める

このマッチアップゾーンは
実践するには相当のバスケIQを要し、
かつチーム内での統率が必須となります。

マンツーマン(対スリーポイント)と
ゾーン(対インサイド)との利点を兼ね備え
かつ、オフェンスに混乱をもたらすという点で
かなり厄介な手段となります。

GAME2は、このマッチアップゾーンの併用も
想定しながら修正しなければならず、
なかなか要求度の高い試合になるのは
間違いありません。

見分け方のコツですが、
素人っぽい方法をひとつ言うとするなら、
ベンチのコーチやプレイヤーが
大きく両手を振る仕草をしている時間帯が
マッチアップゾーンになります。
(そういう点では堂々としているのが面白かったです)

コート上のプレイヤーも
ハンズアップで両腕を挙げて
手信号のように大きく振っているので
簡便な区別の方法として
参考にしていただけると幸いです。


◯ 試合展望

もちろん小野寺HCもベンチスタッフ・プレイヤーも
このマッチアップゾーンやガードのポストアップに対して
十分な知識があるはずなので、
GAME2でしっかりと修正してくれると信じています。

レフェリーの判定が変であったとしても
納得がいかなかったとしても
プレイヤーと同じように切り替えて
次のプレイを応援できたら理想的ですね。
(自戒の意味も込めて)

桜井良太のラストゲーム、
全緑で応援しましょう!

ガンバレ、レバンガ!

文 アズマ・リュウセイ
写真 民谷健太郎

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