三篇:「朝」「掟」「知覚」

「朝」
一杯の紅茶に
いま過ぎた顕生の風
海百合の頸吊に閃光し
真理の満ち引きを海豚が跳ねる
遊牧する古代母音の凍て
雨が海洋に太古を叩く
さて
羊歯の垂直に
機械は遠のいた
廃屋の廃テーブルでは
熱が想像に遅れている

「掟」
奇形にして
真正なるもの
その下の
盗掘された都市
ふたなりの王(ファラオ)
から至高の犬が
逃げ出した
火は成蟲となって
掟が路地を湿らす
Je pense donc……、狂気
まで往けば
図書館の裏が溶けるだろう
だが離(さか)りに任されて
我らの黒耀の遠のきに
無貌の天使は
じつと

           視ていた

「知覚」
くちなわが犬を産んだ
真宵の境内裏
金属音が泡立草を過ぎる
それを辿れば風を絶やすことになるだろう
踏むべきは八番目の石畳
・・・・・・像の懐の玉
二度目の音に感覚は逃げ出した
くらやみは星辰を知らない
微かな囃子
が捻じ曲がる
願いが引き渡されたとき
認識は既に神のものだつた

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