二十句「Ornithorhynchus paradoxus」

「Ornithorhynchus paradoxus」

蜂を溶かすかみなりの薄い舌

やがてに、に、似るリボンが不思議な水

海市や量子を通るかものはし

原理的にかものはしが虹の中央にいる

かものはしのゆめに渡る電撃と明晰

古びればかものはしか平仮名かわからない

宇宙服かものはしの目に切株ふえる

口語であればかものはしに蜂が湿る

(かものはしはたしか左利きだった)
雪宛てに文字の書けないかものはし

曇天のほおずきかものはしを傾ける

銀天にかものはしへと球生れる

蜂のいる風は腐らない腐る気がない

ゆっくりとサ行にならぶかものはし

脱落のaに代わってかものはし

かものはし推敲されて山吹が似る

かものはしは優雅で五七が整わない

水晶へ泡と書きまちがった蜂

中性のアポリア自生のかものはし

(くる蜂がいつくるのかわからない)
できるだけ蜂の野にかものはしを埋めた

かものはしゆるむ文法と泳ぎだす

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