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中国とEV(の上っ面だけ)の話

テスラは上海で本当によく見た

都合2年ほど中国で駐在していた経験もあり、中国、特に私が住んでいた上海においては日々大量のEVを見ていた。対して、日本の田舎に帰任してからというものの、ピュアなBEV(バッテリーEV)はほぼ見ることがなくなり、たまに見かけると珍し〜という反応になってしまう。

北京であったこじんまりとした展示会のの写真

最近、中国の広州でモーターショーで中国ローカルメーカーの台頭が著しく、日系メーカーは閑古鳥!中国はEV先進国!アメリカにはテスラ!日本はEV後進国!という少々過激な発言をしているEV推進派をX(旧Twitter)で見ることはよくある。私は別にEVを持ち上げるつもりも腐すつもりも全くないのだが、自動車関係者でもない一般人から見ても、確かに日本はBEVについて盛んな印象はない。

私自身、日本に帰任してすぐに車を契約したのだが、たまたま買った車がマイルドハイブリッドだった。というくらいには、自分の車の選定基準には電気モーターの有無は関係なかった。

だって電気自動車(BEV)、高いし…

日本でも売っている比亚迪(BYD)のATTO3(現地だと元PLUS)は440万円〜、もっとコンパクトなDolphin(現地だと海豚)は360万円台…。これがいわゆる日本でも買える「お手頃な」EVとして選択肢を出されたところで、買う人間はそうそういない。

※日産のサクラは個人的に結構いいと思ってるが、軽は乗らないので…

日本でBEVがまだ流行っていないのは「高い」とか「インフラ(グリッド)がない」というのがよく言われるし、それを否定する勢力(わかってねぇな〜みたいな書き方をして理由を書かないのも彼らの特徴でもある)も散見されるが、専門家でも評論家気取りでも無いいち消費者からの目線で見れば上二つの理由で十分に事足りると思うが??となる。田舎に住んでて充電どこですればいいんだよってなる。

これはガソリン車。いくらかかったのだろう。

中国の話に戻ると、私が上海に駐在中にスタッフ2人がエンジン車からBEVに乗り換えをし、1人はBEVは嫌だとLEXUSを乗り継ぎ、1人は大众(フォルクスワーゲン)のSUVしか欲しく無いとそれに乗り換えた。

2名がBEVに乗り換えた大きな理由が、ガソリン車が高くつくという中国の大都市特有の問題で説明できる。中国はナンバープレートにより都市の入場規制があり、例えば沪(上海)ナンバーだとA,B,C…と序列が存在しており、これらの序列にはより上海市街部に日中入れる、夕方以降に入れるといった決め事が昔からある。そして、そのナンバープレートを取得するには抽選に申し込み、数倍の確率をクリアしたうえで、日本円にして200万円弱のお金を払うことでようやく上海内でガソリン車を乗る権利を獲得することができる。

…うすっぺらな鉄板2枚に200万円弱、アホらしいと思いません?それだったら200万高くなってもいいからナンバープレートにお金がかからないBEVにしてやろ!充電インフラあるし。となる。それでも高いなと思うのなら上海中心部には行かないと割り切り、隣の蘇州ナンバーを取れば良い。それだけの話である。加えて、コロナ禍では上海政府がBEVに80万円くらいの購入補助をつけていたし、何よりも中国人はメンツが大事だから、持っている車がその人のステータスだと思う人間も少なくなく、実際に彼らは年収の数倍の車を平気でローンして購入する。BYDの漢を購入した駐在時代のスタッフは、漢そのものにはかなり満足しているものの、そもそも欲しかったのは宝马(BMW)だったと言っているし、LEXUSを乗り継いだのはナンバープレートの抽選がたまたま当たったのもあるけど、やはり新興EVより信頼性の高いハイブリッドの高級車が良いという理由だった。そのためか、いわゆる金持ち上海人(不動産持ちの層)はBEVではなく今でも高級なガソリン車を買っている印象があった。

広州もまあまあEVがいる(写真はRAV4)

中国は、そもそも大都市圏でガソリン車を持ちづらいような政策が進めていることがEVの普及を加速させている。ガソリン車が高いからその分同価格帯で高級感のある内装に仕上げて、カッコいい電気自動車を開発するというのが中国人の(メンツを大事にする)国民性と非常にマッチしていると思っている。加えて、電気自動車の性質というべきか、ソフトウェアアップデートをすることでとりあえずリリースして、不具合は走りながら考えるというのもまた彼らの性質とよく合っていると感じた。

実際、スタッフの乗っていたEVのソフトウェアは幾度かアップデートされてきており、リリース当初はそもそもレーダークルーズコントロールさえまともに動かない状態から、今はハンドルなし追従まで問題なく動くレベルまでアップデートされていると聴いて、これが日本メーカーだと許されるのかな。と思ったりした。

いつぞやかのトヨタブース

ここまでつらつらと書いてきたが、結局のところEVが流行るのは政策次第で、それにメーカー側は合わせざるを得ないということ。その点で、中国市場にクルマを売りに行くのに世界のトヨタ自動車のBEVがbZ4Xしかないのは心許なさすぎるし、開発の目処が立たなそうなメーカーが中国の市場から撤退したり縮小するのはなんとなくわかる気がする。

別にBEVがないことに対して日本の製造業は終わりダァみたいな憂国論を持っているわけではなく(それは生産工場を見たことない人間が言うセリフだと思う)市場に合わせた製品がないとそもそも勝負にならないよな。という話。BEVが流行っているといえども、今だに少し内陸の地方に行けばマニュアル車のタクシーが溢れているし、広州ではなんだかんだ広汽豊田のお膝元ということでトヨタ車を見る機会が多かったし。

ただ、日本はコンサバな国民性があるし、みんな車に使えるお金がないみたいな空気が蔓延しているようにも見えるので、日本市場で売れるEV作るの、相当しんどそうに思える。

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