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熱波が社会・経済に及ぼすリスクとは?

今年は梅雨の最中に猛烈な暑さが続いた。そして梅雨の開けた7月中旬以降も相変わらず35℃を超える暑い日が続いている。

テレビの報道では、炎天下の街中に出たリポーターが「今日は38℃が予想されています!」と満面の笑みで暑さを伝える。バラエティ番組に登場する気象予報士は「明日は10年に一度の暑さですよ!」と笑顔で視聴者に忠告する。

海外の報道では、こうした異常な暑さ(熱波)を笑顔で語っているレポーターや気象予報士、ニュースキャスターを見かけることはまずない。なぜなら彼らは、熱波をハリケーンや山火事と同じく「災害報道」として扱っているからである。

もし災害を伝える報道でニュースキャスターやリポーターが笑顔で解説したら、みなさんはどう思うだろう。けしからん! 不謹慎だ!と感じ、さっそくSNSが炎上するに違いない。にもかかわらず日本人は、この暑さを相手に伝える時は、いかにも幸福そうな笑顔になるから不思議だ。

日本の気象報道では「熱波」という災害のニュアンスを持つ用語は使わない。「猛暑・酷暑」という夏の風物詩のようなニュアンスを持つ言葉の方がお気に入りのようだ。

残念ながら、どんなに熱中症警戒アラートを発出しようとも、「猛暑・酷暑」という言葉には、危機感を共有させる力も、対策を講じるべき責任の所在を問う力も含まれていない。あくまで、あなたがた個人の健康管理の問題として対処しなさい、がんばって気合で乗り越えなさいという意図しかないのである。

「猛暑・酷暑」という言葉が飛び交えば、ビールが売れ、アイスキャンディが売れ、冷感グッズが売れる。一方、「熱波」という言葉は、こうした経済効果に結びつくニュアンスはない。消費は落ち込み、仕事の生産性は低下し、人々はひたすら猛烈な暑さを耐え忍ぶしかない。そうしたネガティブな経済的影響を避けるために「猛暑・酷暑」という言葉でお茶を濁しているのかもしれない。

しかし、人々が笑顔で語っていられるのも、お茶を濁していられるのも、そう長くはない。ここで、「猛暑・酷暑」と「熱波(Heatwave, Extreme Heat)」のリスクの違いを、図にまとめたのでご覧ください。海外から仕入れた多種多様な情報をもとにしているので、大筋で的を得ているはずだ。

「猛暑・酷暑」と「熱波」のリスクの違い

今や私たちは、気候変動がもたらす「熱波」という半永久的な異常高温の世界に踏み込んでしまったのである。言い換えれば、この苛酷な暑さはけっして今年限りの一時的なものではなく、来年の夏も再来年もずっと続き、そしてさらに厳しくなっていくということ。

「熱波」は対策を講じようにも限界があると考えている人、個人はもとより国や自治体にもできることは限られていると考えている人。このような思考停止状態に陥っている人は、本当になすすべがないのか、先ほどのリスクの表を見直していただきたい。手をこまねいていれば、いずれ人類は焼け死ぬしかないのだから。私たちは来るべき現実をしっかりと直視し、共有し、これから何をすべきなのか、真剣に検討する段階に入ってきたと言えるのではないだろうか。

以上

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