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「やくざのお父さん」①

まず断っておくが、わたしの父は決してやくざではない。

ではなぜこのようなタイトルになったのか。
今回はその経緯を書いていきたいと思う。


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わたしの父は、おそらくADHDとかそういった傾向がある。

人の話を遮ってまで話し、感情の起伏が激しく、落ち着きがなく、歩くのが速く、動作が大きい。


これはおそらく祖父から遺伝してきたものだ。
祖父は本家嫡男として育てられたため、これに加えて横暴さや無神経さ、そういった傾向が強かったと聞いている。


父は三人兄弟の三男坊。
ADHDをはじめとする発達障害は男児に遺伝しやすいことが分かっている。

つまり、兄弟全員がかんしゃく玉なのだ。
まだ祖父が健在だった頃は、四人で怒鳴り合いの喧嘩をしょっちゅうしていたらしい。



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わたしが小学生だった頃、父はPTAの上部組織に在籍していたことがあった。
組織の仕事は学校行事の運営など。


父は目立つことは不得手ではない。
声と身体がが大きく、仕事柄指示が得意で、論理的にものを考えることができる。
本人にその気があれば、舞台映えするような見目と素質をもっている。

ただし、爆発したら誰にも止められないことだけが問題だった。



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わたしの母校には文化祭のような行事があった。
これも父の仕事の一環だった。

その年も、行事自体はつつがなく進行されていた。

「おいはやゆで!お前のお父さん職員室で怒鳴ってたぞ!」

同じクラスの友達からそう言われるまでは。


紛いなりにも思春期真っ只中のわたしは恥ずかしくてたまらなかった。

(職員室で!!!怒鳴った!!!)

もうわたしには行事を楽しむ余裕などなかった。



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父の厄介なところは、感情の制御はできないが、そこに至るまでの思考は至極真っ当だということだ。

理由を聞けば、他の役員を務める保護者が、務めを正しく全うしていなかったとのことだった。

しかし、それをよりによって職員室で怒鳴り付けて詰めよってしまったのだ。

筋が通っているだけに、衆人環視で間違いを指摘されてしまえば、誰にも止められない。


蛇足だが、父は理不尽に怒ることがある。(最悪じゃないか…)
ただし、こちらも正論で真っ向から異議を唱えるとぽかーんと固まって、昇った血が一気に引いていく。

この事からも分かるように、父にとって「筋が通っていること」は最重要事項で違いないのだ。
(やくざかよ)


父はこうして数多の人々から嫌われ、そしてそれを全く気にせず生きてきた。

したがって、友達は少ない。
片手で数えられるくらいしか知らない。


しかし、外部者でありながら仕事をもらっている組織の問題にずけずけと物申せるため、やたら信頼を集めているのも事実である。


父という存在が毒なのか薬かのか、未だに分からない。



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ここまででも、十分父の異端さをご理解いただけたかと思う。
しかし、この時の父は真の「やくざのお父さん」ではない。

次回は父が「やくざのお父さん」に登り詰めた経緯をお話ししたい。


つづく

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