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美術キャラクター・メモ:マグダラのマリア

「マリア」は、西洋ではポピュラーな名前だ。
聖書のエピソードを題材にする「宗教画」においても、登場頻度の高い、二人の「マリア」がいる。

一人は、キリストの母、聖母マリア。
そして、もう一人が、マグダラのマリア

彼女は、七つの悪霊にとりつかれていたが、キリストにそれらを追い出してもらったのをきっかけに、彼の信徒となった。後に磔刑に立ち会い、復活後のキリストに最初に会った人物でもある。
時代が下るにつれて、聖書に登場する「罪深い女」と同一視されたり、キリストの昇天後は、南フランスのマルセイユに着き、隠遁生活を送り、亡くなった、など様々なオプションが付け加えられていく。
『ダ・ヴィンチ・コード』の核をなしている、「キリストの妻だった」という説も有名だが、ここまで来ると、もはや「何でもあり」に思えてくる。

そんな彼女は、美術において、どう描かれてきたか。
まず、彼女の持ち物(アトリビュート)として挙げられるのが、香油の入った壺

復活したキリストと再会した時、彼女は、キリストの遺体に塗るための香油を携えていた
加えて、彼女としばしば同一視される「罪の女」のエピソードもある。
これは『ルカの福音書』に出てくる話で、一人の罪深い女性が、食事をしているキリストのもとにやってきて、その足に涙を落とし、髪で拭い、香油を塗ったというものだ。
彼女が「マグダラのマリア」と同一人物とは聖書でははっきり書かれていないが、どちらの場合においても、キリストとの関わりに置いて、「香油」という小道具が重要な役割を果たしていることを考えると、イメージが混ざり合っても不思議はないだろう。

上は、カラヴァッジョの初期作品<改悛するマグダラのマリア>だが、彼女のスカートをよく見ると、大きな香油壺が模様として描き込まれている

また、彼女を描いた絵で、香油壺と並んで頻繁に出てくる頭蓋骨は、「改悛」の象徴でもある。

他にも、上記の「罪の女」のエピソードのためもあってか、美しく豊かな髪も、マグダラのマリアの特徴の一つとなっている。

そして最後に服について。
聖母マリアが赤い服に青いマントが定番であるのに対し、マグダラのマリアの場合は、緑色の服に赤いマントとされる。
一方、上のティツィアーノの<改悛するマグダラのマリア>で着ている縞模様は、娼婦を現わすものであり、こちらを用いることもある。

マグダラのマリアは、人気のある聖人の一人で、聖書のエピソードを取り上げた作品や、「聖会話」形式の祭壇画でも、ちょくちょく登場する。
彼女を見分けるポイントは、
まず、
香油壺
長い豊かな髪

この二つは最低限覚えておくと、わかりやすいだろう。

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