安保法制・日米安保・集団的自衛権〜何が問題を拗らせたか

安保法制が成立してから7年が経つがよく言われてたやれ本邦が戦争に参加させられる、
やれ本邦が戦争国家になるという事態は今日に至るまで発生していない。
では安保法制の議論は何故あれほど拗れてしまったのか?今回はそれを検証する。

◆そもそも日米安保は集団的自衛権を認めている

日米安保条約第5条では「日本国の施政の下にある領域における、
いずれか一方に対する武力攻撃」では日米両国は「自国の平和及び安全を
危うくするものであることを認め」て「共通の危険に対処するように
行動することを宣言」している。重要なのは第2項で「前記の武力攻撃及びその結果として執った全ての措置は、
国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に
報告しなければならない」とある。そして国連憲章第51条では「国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、
安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、
個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。
この自衛権の行使に当って加盟国が措置は、直ちに安全保障理事会に
報告しなければならない。」とある。
つまり日米安保は集団的自衛権を日本の施政権下(領土、領空、領海)での
武力攻撃に対しては集団的自衛権の行使をはっきりと認めているのである。
だから集団的自衛権を認めないのなら国連から脱退するか日米安保条約を
破棄するしかない。しかしそんな議論を当方は聞いた事がない。
そして日本の施政権下を攻撃できる国はロシア、中国、北朝鮮のみに限られる。
イランの弾道ミサイルが日本に届かないのは一目瞭然だし、
海外で「自衛隊が派兵され、殺したり殺されたり」というシチュエーションは
100%ありえないと見ていい。何より日本国憲法第9条第2項での交戦権否定で
他国の占領を禁止しており、あくまでも集団的自衛権の行使のみに止めている。
実際安保法制の審議では安倍首相(当時)は朝鮮半島有事で
自衛隊の韓国支援のための上陸と戦闘は違憲だから出来ないという答弁をしている。

◆米艦防護や米軍機防護は昭和期から認められていた

安保法制の審議で焦点の一つになったのは米艦や米軍機の防護だった。
これは違憲という違憲が多かったが1983年の衆議院予算委員会での
谷川防衛庁長官の答弁では「アメリカの艦艇が相手国から攻撃を受けたときに、
自衛隊が我が国を防衛するための共同対処行動の一環としてその攻撃を排除することは、
我が国に対する武力攻撃から我が国を防衛するための必要な限度内と認められる以上、
これは我が国の自衛の範囲内に入るであろう」と答弁している。つまり本邦の防衛に必要な米艦や米軍機の防護は
必要最低限の範囲内なら可能という答弁を行っていたのである。
この答弁に対して当時の野党第一党であった日本社会党を始めとする野党が
安保法制みたく拗らせたという話は当方の知る限りでは知らない。
安保法制の一つである自衛隊法第95条の2はこれを明文化しただけに過ぎない。
なお自衛隊法第95条の2では戦闘区域での警護は不可とされており、
笹川平和財団によれば米中が武力衝突した場合は戦闘区域に向かう米艦も
戦闘区域に指定されるから警護は不可と分析している。よって自衛隊法第95条の2は
平時での警護であり、恐らく破壊工作からの防護と思われる。
その破壊工作とは水上ドローンを用いた工作になるのが予想され、
SH-60Kによる破壊になるのかクラスター爆弾による破壊かについては
話が逸れるので割愛するがどのみち戦闘行為への参加の可能性はないと見ている。
そればかりか1983年の谷川防衛庁長官の答弁から後退すらしている。

◆ペルシャ湾の掃海は集団的自衛権ではなく国際人道支援

安倍首相と佐藤正久議員との答弁では佐藤議員はホルムズ海峡での
機雷封鎖に対しては存立危機事態として掃海部隊の派遣を
行うべきとの答弁はしながらも戦闘中では掃海は行えないとしている。
しかしこれは前提が間違っている。まずホルムズ海峡の機雷封鎖はありえない。
東京新聞によればイランとオマーンはそもそも経済的に密接な国で
オマーンは宗教的にもイスラム教イバード派でサウジアラビアみたく
スンナ派(サウジアラビアはスンナ派の中でも原理主義的なワッハーブ派)ではない。
だからサウジアラビアやアラブ首長国連邦みたくスンナ派に義理立てする必要はない。
もし機雷封鎖するとすればイランと対立するサウジアラビアと共闘関係にある
イスラエルだがホルムズ海峡を機雷封鎖したら同盟関係にあるアメリカの艦艇が
ペルシャ湾に入れない。しかもサウジアラビアもクウェートもアラブ首長国連邦も
イランもホルムズ海峡を迂回する原油パイプラインを建設しているから
ホルムズ海峡封鎖が存立危機事態になるとは考えにくい。
つまりペルシャ湾での掃海は国際人道支援ではないだろうか。
サウジーイスラエルーアメリカとイランとの戦争が終結し、サウジやイランの
沿岸の掃海を想定しているものと思われる。そもそも海自のあわじ型掃海艦は
プラスチック製であり、自衛用・掃海用火器はJM61R-MSのみ。
戦闘では使い物にもならない。安倍首相は1991年の自衛隊ペルシャ湾派遣を
念頭に置いたと思われるがこれは国際人道支援だ。
安倍首相は議員秘書になる前は神戸製鋼所に、佐藤正久議員は陸自時代は
ゴラン高原やイラクに派遣された。二人とも石油や中東に思い入れがあるのだろう。
しかし思い入れも度が過ぎると誤解を招き、話が拗れる元となる。
この点では失態であったと言わざるを得ない。

◆重要影響事態法は周辺事態法を言い換えただけ

重要影響事態法は周辺事態法を改正したものだがこれも単に
言葉を言い換えただけで内容はあまり変わらない。
しかも前出の谷川防衛庁長官の発言の言う必要最低限の範囲内でしかない。
さらに言うと重要影響事態に該当するのはどう見ても朝鮮半島有事や
台湾有事のみ。現にISやアル・カーイダ、アサド政権による内戦の続く
シリアへの部隊派遣要請は無かった。イラン情勢でも重要影響事態に
該当するとは思えないから要請もない。

◆集団的自衛権行使は弾道ミサイルや巡航ミサイルの迎撃にとどまる

以上の事から実際の集団的自衛権の行使は米軍基地の弾道ミサイルや
巡航ミサイルの迎撃にとどまると考えられる。空自のF-15MJ改修やF-35導入の理由の一つがそれにあたる。
AAMキャリアーは搭載されるミサイルが多ければ多いほどいい。
在日米軍基地は日本国政府から日米安保条約に基づいて基地の許与をされており、
治外法権ではなく基地の建造物や日本人の犯罪では日本の法律が適用されるなど
日本の主権と施政権が認められており、在日米軍基地へのミサイル攻撃は
日本有事にあたる。海自のDDG、空自のPAC-3MSEもBMDにあたると見られる。

◆政府の広報と野党のブレーンの責任

こうした事は政府の広報がきちんと説明していればこんなに拗れなかった。
武力事態対処法では拗れなかったのに何で安保法制ではこんなに拗れたのか謎である。
さらに野党のブレーンも問題である。こうした説明をした上で
「警護出動の多用化で十分」と言ってれば少しはまともな審議が出来たはず。
とある野党の「お父さんがいなくなった」なんてポスターに至っては
「弾道ミサイルや巡航ミサイルを迎撃したら殉職者が出るのか」と失笑される始末。

今回の安保法制の拗れ具合は今後の安全保障に関して禍根を残したと言える。

■ソース
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https://www.mod.go.jp/msdf/about/org/

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