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キンモクセイ

結婚式が近づいてきて、自然と話題に出すことが結婚式のことばかりになってゆく。嫌味に聞こえないかな、そもそもめでたいことが嫌味になる世界って生きにくいな、でも結婚式のことしかやってないのだから結婚式のことしか話すことがないよな、そんな些細なことを堂々巡りのように考えている。

"勝手に人の気持ち想像して勝手に傷つくの。"
ドラマ「いちばんすきな花」で潮ゆくえ(役:多部未華子)が言ったセリフにとても共感する。人の目線、言動、仕草、過去の行動を探って想像しては裏を読んだり何を考えているかをまた想像したりして、自分の行動を勝手に反省してみたりする。それゆえに1人で落ち込んだり疲れたりするのだから、日々おおげさに寿命を削っているのと同等だ。

それでもいいことが少しはある。接客業として、お客さんが困っていたりして欲しそうにしていることは仕草や視線を見ればだいたい分かる。一対一で話すときの相談役に向いている。人に好かれる行動、嫌われる行動は人の行動を日々分析しているもんだから自分にも実践できる。(これはいいことなのかわからないけれど)

これでもそんな自分の特性に慣れたほうだけど、昔は人と接することによく疲れていた。だからひとりでいる時間がなにより大切だった。誰からの刺激も受けない、何も想像しなくていい、ひとりだけの世界に閉じこもった。それが唯一のストレス発散法だった。


金木犀がすきだ。ひとつの木にたくさんの花があって、みんな共通の香りを放っている。その香りがすきなのはもちろん、ひとつの集合体でそれが成り立っているところがすきだ。私にはできなかったこと。ひとり同士が集まって、おなじことをして、それがストレスなく成り立つ世界。想像しなくてもいい、ただみんなといればいい、そんな存在が羨ましかった。だから金木犀がすきだ。

ひとりもいいんだよ、もちろん。でも金木犀みたいに集合体を作ることで人々を毎年のように魅了するなんて、素晴らしいよね。金木犀の香水、金木犀のお香。でもやっぱり本物の金木犀が香るとき、思わず足を止めてしまった。私もまた、この香りに魅了されているひとりなんだと。

もうひとつ、私が大好きなアイナ・ジ・エンドの歌に「金木犀」という歌がある。「長所のない私です」というフレーズから始まるその歌は、大切な人から自分を切り離して1人になっていく様が描かれている。切ない。長所がない「私」が1人を選んでいくということに待ち受ける未来を、何度も歌を聴いては想像してしまう。

この秋に咲く金木犀という花を、毎年のように思い出しては魅了され続けている。私に似ていて、でも似ていないこの花を。


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