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3Dプリンタは魔法なんかじゃない。 #1

こんにちは、はじめまして、AZUです。
建築学科のB3で、パソコンとか機械を触るのが好きで、面白そうなことをいろいろやってます。詳しくはTwitterをどうぞ。

ND3Mのメンバーが毎週自分の思考を整理して吐き出していく企画、「スパゲトーニの茹で時間」、私の1つ目のnoteです。


最近、3Dプリンタを使いたい、という建築学生が増えてきたような気がします。つい数年前までは何十万もしましたが、今は5万円以下の製品も多く出回っており、大学生にも簡単に手が届くようになっています。大学の研究室でも、学生が使うことができるように開放しているところも増えているようです。

今回は、 (特に機械いじりとかが好きなわけではない) 建築学生が3Dプリンタを買う、ということについて考えたいと思います。

今回は、3Dプリンタの種類とか、仕組みとかについては触れません。そもそも3Dプリンタにいろんな方式があることを知らない人も多いんじゃないでしょうか。気が向いたら書くかもしれません。


「3Dプリンタを買いたいんですけど、なにがおすすめですか?」


3Dプリンタに限らずよくある質問です。おそらく、こういう質問をする方は、
 ・自分でモデリングしたものを自動で作ってくれるんでしょ?
 ・模型つくるのが楽にならないかなあ…
というイメージなのかと思います。もちろん、それは正解です。

ただ、それには条件がいろいろあるよ、っていうだけです。
3Dプリンタとの生活をもう少し具体的に、建築学生の立場で想像してみます。

ちなみに、私が使っているのはこちらの2台。一応紹介しておきます。FDMと光造形(DLP)の2種類を使っています。

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2019年の秋に買いました。実は3Dプリンタ歴浅いです。現在性能UPを目指して改造中。改造の様子も今度紹介する予定です。

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光造形は、完全に見た目の好みで選びました。精度もそこそこで気に入ってます。ランニングコストが高いのがデメリット。最近日本の代理店ができたみたいです。


「自分でモデリングしたものをプリントしてくれる」

確かにつくってくれます。けれど、3Dプリンタを使うことを意識してモデルを作る必要があります。パース用のモデルを作る感覚で作ると、高確率で行き詰まります。

まず、つくれる大きさには限界があります。
どこで切るか、どうやって接合するか。それを考えながら作らないといけません。

そもそも作ることのできない形もあります。例えば、細かい模様とか、小さい穴とか。いろんな設定とかコツで作る方法もありますが、どうしても無理なものもあります。プリンタの方式によっても得意不得意あるので、ちゃんと調べないと、買ったけどほしい形が作れないなんてことになるかも

そして、寸法通りにつくるのは、機械の性質をちゃんと理解して試行錯誤しないと難しいです
いつでもモデリングデータの通りに正確に作れるわけじゃありません。

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目標の大きさを狙って、パラメータを調整しながら何回も出力することもあります。


一見印刷できそうでも、なぜかうまくできないこともあります。建築学科で使うような、Rhinocerosやsketchup, vectorworksなんかでつくると、それっぽく見えても実は面がねじれていたり、わずかな隙間があったり、オブジェクトが重なっていたりするときがあります。そうなるとデータの変換に失敗して、形が崩れてしまう可能性がでてきます。ソフトの性質を考えて、丁寧にモデリングしないといけません。

けれど、ちゃんと考えて使えば、こんなものも簡単に作れます。

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立体トラス。部材の長さは10mm程度です。出力してきれいに整える前なので、多少汚いですが。手でこれを作るなんてとてもじゃないけど私はやってられません。


「模型作りが楽になる」

確かに楽になります。さきほどの立体トラスとか。手で一つ一つ作らずに、その間寝ていられるので、めちゃくちゃ楽です。
スタディ模型も、いくつかモデリングして、寝る前にスタートさせておけば起きた頃には模型が出来上がっています。

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こんなふうに、良さげなモデリングができたらとりあえず寝ている間にプリントしてみる。クオリティの重視しないスタディならこれで十分。


ただ、先程書いたように、いろんなことを考えてモデリングして、プリントして、それで模型が完成、とスムーズに進むわけじゃありません

まず、思った以上に時間がかかります。
設定次第で削減はできますが、いつのまにかプリント時間が20時間超え…なんてことも。手で作る部分と3Dプリントする部分を考えて、時間を逆算してプリントし始めないといけません。

機械は人間の命令を忠実に聞いてくれます。
当たり前のことですが、間違った指示を出したら、そのとおりに間違った動きをします。自分で判断して動きを修正したり、途中で止めてくれたり、気を利かせてはくれません。

模型の提出間近で失敗することだってあります。起きてみたらぐちゃぐちゃで得体のしれない物体が鎮座していることも…。最近はほぼ失敗しませんが、油断からの凡ミスで無駄にしてしまうことも。

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これはひどい。ここまでひどい失敗はこの1回だけ。

失敗したら十数時間が無駄になって作りなおしになることも。しかも、次は成功するなんて保証はないので、締め切りギリギリで冷や汗をかく羽目になります

人間と違って、途中からクオリティを犠牲にして急ぐ、なんてこともできません。設定で途中から速くすることもできますが、基本的にはただ動く姿を見守るしかありません。(だって、動くスピードを速くする=失敗の可能性が上がる、だからね)

提出直前にプリント開始して、失敗して、講評会に模型が無い、っていう人を見たことがあります。もう悲惨です。

プリンタの調子が悪くて完成しませんでした、なんて言い訳にならないですからね。


けれど、使っているうちに可愛くなってきます。
失敗したら、「無理言ってごめんよ〜」って声をかけたくなるし、
「プリントできた!」って自慢げに完成のビープ音を鳴らす3Dプリンタ君を見てみると、それはもうぐちゃぐちゃな物体を生成してたときなんてめちゃくちゃ可愛いです。笑うしかない。


最近は模型を作るための治具をプリントすることが多いです。
丸棒を炙って曲げるときや、固まるまで固定しておきたいときなんかに便利です。ある程度余裕をもった設計ができるのでプリントに失敗しづらいし、治具があれば手でやるより圧倒的に速いしきれいです。

模型そのものをつくらなくても、3Dプリンタで模型作りを楽にする工夫はできます。


「オリジナルの添景とかつくりたいな」

できます。楽しいです。自分を3Dスキャンして、それを添景としてプリントしてみたり。

が、もちろん手間がすごくかかります。モデルを作ったり、ダウンロードしたりして、プリントするだけでけっこうな時間がかかります。
FDM方式のプリンタで作るのは現実的ではないです。 けれど光造形は樹脂や薬品の扱いに気を使う必要があるし、においも結構します。

そして、買わなくて済むから安くなる、というのは間違いです。大量生産品にはさすがに勝てません。こだわりの一点物をつくる、とかなら圧倒的に安く済みますが、量産品にはかないません。
例えば人の添景。模型材料店だと、5体で1500円とか、結構高いものもあります。これなら自分で作った方が安い。しかしちょっと工夫する、例えば AliExpress なんかだと300体で800円なんかで売ってます。

添景を作りたい、という声を結構聞くのですが、添景を設計して、それをプリントして、という手間を考えると、素直に買ったほうがいいのかな、とも思います。今では3Dプリンタを貸してくれる施設も多いので、それを使うのも手です。

私の住んでいる名古屋だとこんなところとか。


「なんかめんどくさそうだから買うのやめようかな」

確かに、試行錯誤は必須です。そして、機械の性質を理解する必要もあります。
それがいやなら買うのはおすすめしません。

けど、新しいものに触れるのはすごく価値があるはずです。3Dプリンタで可能性が一気に広がります。

3Dプリンタを持ってなかったらこんなもの作らなかっただろうな、っていうものもたくさんあります。今後はそういうものも紹介していけたらと思います。


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「これは模型を作るのが大変だから他の形状にしよう」とか、
「3Dプリンタ持ってないから作れない」なんていうのはやめよう。

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最初は、「3Dプリンタ楽しいよ!みんな買おうぜ!」っていうのを書くつもりだったんですが、それだと無責任な気がして、こんな文章になってしまいました。特に、建築学生目線での話はあまり聞かないので、実際どうなのさ、っていう話をしてみました。
合間合間に楽しさも伝えられたかなとも思います。

次回以降は、3Dプリンタは楽しいよ!とか、建築学生が3Dプリンタを使うメリットとか、そういう話もしようかなと思います。


ありがとうございました。

#3Dプリンタ #建築学生  
#ND3M #スパゲトーニの茹で時間  

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